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河合塾 X 朝日新聞 ひらく 日本の大学

大手前大学 Otemae University

ANALYSIS 「就業力が身につくカリキュラム設計」を分析

「ひらく日本の大学」調査結果より

Point1 専門性と問題解決能力
社会で必要な力をおのずと習得できるカリキュラム設計

PBL(問題解決型学習)+SDL(自己主導型学習)授業を重ねて自然と身につく就業力

今、大学でさかんに進められているのが、学生の「就業力」を育成するための取り組みだ。就業力とは一般的に「卒業後に向けて自己の資質を向上させ、社会的職業的な自立を図るための能力」と定義されている。低年次生のうちから、自分のキャリアや仕事に対する価値観を意識してもらい、卒業後に社会で活躍できる「就業力を備えた人材」を育てようと、さまざまなアプローチが大学ごとに試みられている。

大手前大学は、就業力を伸ばすためには、学部教育で養う「専門性」はもちろん、「社会人基礎力(問題解決能力)」まで併せ持つことが不可欠であるとし、その思いを全学的にカリキュラムに反映させている。

例えば、社会に出て直面する答えのない困難な問題を解決するために必要な10種類の能力※1を独自に設定。大手前大学で開講される全科目は、この10の能力が習得できるよう設計されており、自分の興味関心、将来の目標に沿った授業を履修する中で、学生はおのずと問題解決能力を身につけていく。

すべての授業で、講義形式に加え、PBL(問題解決型学習)+SDL(自己主導型学習)の授業をバランスよく配置している。学生は、あらかじめ設定された課題について事前に調査・分析をした上で授業に臨み、リポートやプレゼンなどで表現し、他の学生とディスカッションを行うこともある。教員はオブザーバーの役割に徹し、進行はすべて学生が主導する授業もあるという。「ひらく日本の大学」の調査によると、「課題解決型授業」を「学部単位で実施」するのは63%と一定の割合があるが、課題解決型授業を「大学教育の根幹」にすえて推進する大手前大学の取り組みは、極めて個性的といえるだろう。

学生の就業力を伸ばすための仕組みが綿密に設計されている。教員や教育ボランティアも一丸となった手厚いサポートも特徴だ

教室の外にも学びの場を求めるPBL+SDL授業も活発だ。例えば坂本理郎准教授(現代社会学部)のゼミでは、包括連携協定を結んでいる西宮商工会議所とコラボレーション。学生たちは、同会議所に所属する企業の経営課題をヒアリングし、半年をかけてその解決策を練り上げ、経営者に直接提言する。いわば「企業コンサルタント」の役割を学生のうちから果たす授業のねらいについて、坂本准教授は「課題解決のためのアプローチを試みる中で、人とは違った発想力を身につけてほしい。さらに言えば、筋道を立ててその発想を論証できる論理的思考力までも身につけられれば理想」と話す。学生たちの枠にとらわれない発想には、驚かされることも多いという。「長いキャリアを考えた時、自分はどんな能力で人と差別化ができるのか。学生のうちから意識してもらえるような指導・助言をしています」
このほか、京丹後市では学部を横断した複数のゼミが、丹後ちりめんの織元を訪ねての伝統産業理解や、地域の理解や資源を発掘するフィールドワークを行う「サマートレーニングキャンプ」を実施するなど、地域に学ぶ事例は枚挙にいとまがない。 こうしたPBL+SDL授業を地域で、日々の授業で、繰り返し反復・継続して行うのも特徴だ。これにより学生は意欲と自信を積み重ね、“指示待ち型”ではなく、自ら課題を発見・解決できる就業力を身につけていく。

※1 社会的責任/チームワーク/分析力/創造力/論理的思考力/計画力/行動力/プレゼンテーション力/リーダーシップ/コミュニケーション力 その英語の頭文字をとって「C-PLATS®」と名付けられている

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