ハドソン川の奇跡

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12月13日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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クリント・イーストウッド トム・ハンクス
映画『ハドソン川の奇跡』で明らかになる 知られざる真実
みんなが知っている「ハドソン川の奇跡」
2009年1月15日、US1549便は、ニューヨークのラガーディア空港を離陸して上昇中にカナダガンの群れに衝突。
両エンジンが破壊されマンハッタン島西側のハドソン川に緊急着水。
乗客乗員全員が助かったことから「ハドソン川の奇跡」と呼ばれた。
SNSが人々の生活に浸透し始めた時期でもあり、あっという間に事故の様子は全世界に拡散された。
また、各メデイアも大々的に報道し、冷静かつ的確な判断を下した機長は国民的英雄として称賛された。
208秒の決断。その時何が起こったのか?
鳥海高太朗
航空・旅行アナリスト
鳥海高太朗
とりうみ・こうたろう/1978年千葉県生まれ。成城大学卒業後、食品会社勤務などを経て現職。航空会社・アライアンスのマーケティング戦略を主研究に、インターネットでの航空券および宿泊の予約サイトに関する調査も行っている。帝京大学理工学部航空宇宙工学科非常勤講師。
航空関係者が語る「ハドソン川の奇跡」わずか208秒で究極の判断をする。機長にとっては最も難しく怖い瞬間。

どんなに万全の整備をしていても、どんな安全対策を整えていても、飛行機事故のバードストライクは鳥が空を飛んでいる限り、まれに起きてしまいます。問題はその規模です。このハドソン川の事故の場合、エンジンに飛び込んだ鳥の群れは一羽最大8.2㌔とも言われ、非常に大きく防御できなかった。しかも、両方のエンジンがそれによって止まってしまった。普通はエンジンが二つ止まっても飛行機は一気に落ちないように作られているし、一つでも動いていれば、燃料も搭載されているので、規定の速度で行ける最寄りの空港へ向かえばいいんです。

では、なぜこの時それができなかったかと言えば、バードストライクが離陸直後に起きてしまったから。つまり、高度が低くて着陸までの時間を稼ぐことができなかった。だから、サレンバーガー機長はとっさの判断でハドソン川に着水という選択をしたのだと思います。リスクと確率を考え、乗客乗務員の命を最優先したわけです。

それにしても約3分間でよくぞ適切な判断ができたものです。おそらく機長の脳裏に9.11テロがよぎったのではないかと。もし、ラガーディア空港に引き返し、その途中で墜落したらニューヨークの住宅街に機体が突っ込んでしまう。9.11の二の舞だけはどうしても避けたかったのではないでしょうか。

また、私が驚いたのは、あれだけしか高度がない中で機体を折らず、火を噴かずによく胴体着水できたなということです。あの状況で、市街地を回避し、川の水面に着水するだけでも難しいのに、着水時の衝撃による機体分解を避け、しかも火を出さなかった。それができたのは明らかにサレンバーガー機長の技量のたまものです。あくまで私の推測ですが、機長はパイロットマニュアルとともに、自身の長年の経験による判断から着水の角度を決めたのではないかと。規定の角度で着水していたら、あんなにうまくはいかず、大惨事になっていた可能性もあったと思います。

さらにもう一つの驚きが、ハドソン川にかかる橋や走行中の船を一切巻き込まずに着水できたこと。速度の落ちている飛行機とは言え、着水後も数百㍍走るわけです。そこに船がいなかったというのも奇跡です。

いろんな悪条件が重なって起きた事故ですが、機長の究極の決断があったからこそ全員無事に助かった。乗客にとっての救いは、機長がサレンバーガーだったということでしょうね。

イーストウッドが描く知られざる「ハドソン川の奇跡」
事故から丸7年経った今年9月24日(土)、この事故を映画化した『ハドソン川の奇跡』が日本公開となる。
監督は世界中で大ヒットを記録した『アメリカン・スナイパー』を手がけたクリント・イーストウッドで、卓越した判断力と操縦技術で155人の命を救ったサレンバーガー機長を演じるのは2度のアカデミー賞主演男優賞を手にしたトム・ハンクス。
一夜にして英雄となった機長に襲いかかる思いも寄らぬ出来事とは!?
私たちの身近でも十分に起こりうる現代社会の矛盾と問題点を描いた話題作。
本作を観たあなたは、知られざる真実をどう受けとめるだろうか。
イーストウッド
町山智浩
映画評論家
町山智浩
まちやま・ともひろ/1962年東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業。雑誌編集者を経て渡米。WOWOWオンライン「町山智浩の映画塾」、TBSラジオ「たまむすび」にレギュラー出演。大衆芸能の評論でも知られる。『映画の見方がわかる本』ほか、著書多数。
映画評論家が語るイーストウッド監督の視点で描いた映画『ハドソン川の奇跡』の魅力
いかにもイーストウッドらしい周囲に理解されない孤高の男の物語

2009年当時のアメリカは、リーマンショック直後で景気も停滞し、雇用状況も厳しく、いいニュースが全然なかった。石油高騰で航空各社も苦しい状況でした。そんな中、久々に明るい話題となったのが「ハドソン川の奇跡」。まさにアメリカにとって一筋の希望となった出来事でした。

あの「奇跡」をクリント・イーストウッドが映画の題材に選んだのは、おそらく事故の様子を見て、9.11テロを改めて意識したのと、彼の作家性と結びついたからでしょう。

イーストウッドは常に「世間一般に言われている真実とは違う」点に目を向け、描き続けています。例えば、昨年、大ヒットした彼の監督映画『アメリカン・スナイパー』もそうです。原作が発売された当初、主人公はイラク戦争で活躍した伝説の狙撃手としてアメリカでは英雄扱いでした。ところが、映画は主人公がPTSD(心的外傷後ストレス障害)を病んで、人として壊れていく様子を刻々と描いています。今回の『ハドソン川の奇跡』でも、155人の命を救い、一躍英雄となったサレンバーガー機長が実はその裏側で、前代未聞の決断であるがゆえに厳しく糾弾され、追い詰められていたという事実に着目し、彼の葛藤や苦しみをあぶり出しています。

また、イーストウッドは一貫して「他人に理解されない孤高のヒーローの心情」をテーマにしています。サレンバーガー機長は、なぜハドソン川に着水させたかを問われてもうまく言葉で説明できない。だからさらに追い詰められていく。バードストライクが起こり、両エンジンが停止する。ハドソン川への着水を決断したのは、その後わずか30秒ほど。その決断がどれほど彼にとって苦渋で、過酷なことだったか理解されないままに。実はイーストウッド自身も理由をいちいち説明しない人なんです。彼はすごく撮影が早い監督 として有名です。現場でいきなり本番を撮って、やり直しをしない。たぶん2時間ほどの映画なら3 時間分くらいしかフィルムで撮っていないはず。にもかかわらず、なぜあれだけ複雑な構成に仕上げることができるのか。それはもう長い経験で培ったカンとしか言いようがなく、彼は特に説明しないんです。

そう考えると、特に今回は、一瞬で決断したという部分でも深く共感し、サレンバーガー機長と自分を重ねた部分もあったのではないでしょうか。だから本当はイーストウッド自身が、サレンバーガー機長を演じたかったんだと思います。でも年齢的に難しい。そこでトム・ハンクスに託したのではないかと。そして、そんなイーストウッドの気持ちを察して、トム・ハンクスはイーストウッドを意識して演じているように感じました。寡黙で、眉間にしわを寄せて悩む表情が時折、イーストウッドに見えましたから。

いずれにしても、サレンバーガー機長の40年もの経験がたった30秒の判断に凝縮され、それが1時間半の映画になった。その時間の振り幅がすごい。しかも、映画として見応え十分。イーストウッドらしい味わいのある作品です。

全世界が目撃した”奇跡”、その知られざる真実とは?
航空史上誰も予想しえない絶望的な状況の中、“155名全員生存”という奇跡の生還を果たしたサリー機長。その偉業は「ハドソン川の奇跡」と呼ばれ、国民的英雄として称賛される――はずだった。しかし、機長の“究極の決断”に思わぬ疑惑が掛けられる。不時着以外の選択はなかったのか?  命を危険に晒す無謀な判断ではなかったのか? 奇跡の裏側で、彼の判断をめぐって国家運輸安全委員会の厳しい追及が行われてたいたのだった・・・。
Special Interview 映画『ハドソン川の奇跡』公開記念・スペシャルインタビュー
イーストウッド
英雄が一瞬で犯罪者になる現実
社会の矛盾を映画で浮き彫りに
乗客全員を生還させた究極の英雄、サレンバーガー機長が、航空専門家でもない人たちに非難され、一瞬にして犯罪者に仕立てあげられてしまった。マスコミでも公にされなかった裏側の真実を知って現代社会の矛盾を感じ、映画にしようと決めました。実際に起きたことをできる限り忠実に再現すると同時に、彼が過ちを犯したかもしれないという疑惑にも迫るように演出。また、機長自身の苦しみ、葛藤も表現したくて何度もサリー本人に話を聞きました。私が何を伝えたいか。その答えは映画を観て頂ければ分かります。
トム・ハンクス チェスリー・サレンバーガー機長役
多くの命を救ったのになぜ過失責任を問われるのか
サレンバーガー機長が155人の命を救ったのは事実。にもかかわらず、過失責任を問われる。多くの人々の命が危険にさらされ、数百万㌦の飛行機が失われ、法外な保険金の請求もされてしまう。もし、一人でも命を落としていたら機長のせいだと思われる。それが現実です。そんな難しい立場に置かれた彼の心情を知りたくて、私も彼と長い時間を共に過ごしました。映画では事実や彼の心情をねじ曲げたりということを一切していません。真実に真摯に向き合い、映画化したイーストウッドはすごいと改めて思います。
アーロン・エッカートジェフ・スカイルズ副操縦士役
ルールや常識を超えた決断あれは見事なチームプレーだった
私が演じたジェフは今もパイロットとして大西洋横断のフライトを担当しています。あの事故の日、ジェフとサレンバーガー機長はほとんど初対面だったにもかかわらず、二人のチームプレーは実に見事でした。何か起こった時、どうすべきかをそれぞれ正確に習得していたし、事故時は瞬時にお互いの役割分担を決めた。ルールや常識を超えて、何をここで優先すべきかも共有できたからこそ、あの奇跡が生まれたんだなと。でも、ジェフ本人は「役割を果たせたのはうれしいけれど、物語の主役は一人。機長がすべてを救ったんだ」と語ってくれました。
各界著名人から絶賛コメント続々
「この出来事を僕も大きく報道したけれど、奇跡の後の真実を知らなかった恥ずかしさと伝えられなかった悔しさ。この映画は、目の前に危機が迫った時、それを乗り越えるものは何かを教えてくれる―。」
フリーアナウンサー
古舘伊知郎
「熟練者とコンピューター、どちらの判断が正しいのか。客観的な立場からの正しさとは、いったいどこに担保されているのか。自身の判断や記憶も信頼できなくなる男には、街の物音や話し声にさえ、意識を乱される。劇場のサラウンドで見ることを強く勧めたい。」
「スクラップ・アンド・ビルド」第153回芥川賞受賞
羽田圭介
「世界中で様々な重い現実を抱えている現代社会で、一人一人ができることとは何だろう、、、。自分がやるべきことをやりきることの大切さ、そしてそれが集まると”奇跡”を起こすほどの力になることを教えて頂きました。今、この時代に是非ご覧頂きたい作品です。」
「NEWS23」キャスター
雨宮塔子
「胸が熱くなりました。私自身が体験したこととあいまって、事故後の人間ドラマに感動しました。事実に即したリアルな表現にも驚きを覚えました。改めて、いま生きている喜びを噛みしめました。そしてサリー機長にお礼を伝えたい。映画を観て、そんなことを思いました。」
USエアウェイズ1549便搭乗者
滝川裕己
「9.11が起こった年にNYに赴任し、その後この事故を経験しました。映画を見て、改めて思い出しました。事故で起こったことをそのままに、とてもリアルに描かれていました。肩が痛くなるほど、ドキッとしてしまいました。映画を観て、改めてサリー機長のプロ意識に感動しました。」
USエアウェイズ1549便搭乗者
出口適
「『正しい』ことを『正しい』と証明することは難しい。それでも信念を持ち続け、誠実に向き合うことで、成し遂げられるということ。そして、一人でなく、皆で戦ったから、奇跡が起きたということ。
いま、自らを信じ、戦っている人に勇気を与える作品。私自身、深く、共感させられました。」
歌舞伎俳優
市川海老蔵
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