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空飛ぶドクターの
仕事を「楽しむ」術

日本医科大学 救急医学 教授
千葉北総病院 救命救急センター長 松本 尚さん

事故や急病人の発生現場にドクターヘリで駆けつける「空飛ぶドクター」の日本における第一人者であり、救急・外傷外科の分野で治療成績と救命率の向上に努める松本尚先生に聞く、医師をめざす者に必要な学びとは。

君は「医師になれる」人間か

私が卒業した医学部の教授が、かつて学生にこう言っていました。君たちが医師をめざすのなら「よく学び、よく遊び」は許されない、医学生には「よく学び、よく学び」しかないと覚悟せよ、と。勉強もするが遊びもする、サークルの活動も楽しむ、というのが充実した大学生活であるように思っている人が多いかもしれませんが、医学を志したからにはそんな考えはきっぱり捨てるべきだということです。

医学部の学生に何より必要なものは、当然ながら「医師になりたい」という強い気持ちです。しかし近ごろは、特に医学に関心が高いわけでもなく、ただ成績に合わせて行けそうな大学や学部を漠然と選んだというような学生も少なくありません。そんな人たちの多くは、入学後に医学を学ぶことの厳しさを痛感し、挫折や後悔をすることになります。もちろん医師をめざす者の最低限の素養として、幅広い知識や数学的思考力、海外の文献を読みこなす語学力などは当然必要です。しかし、数学が得意なら理学部でも良かったはず、語学が得意なら文学部という道もあったはずです。なのに、どうして医学部なのか。受験生はそれを、何度でも自分自身に問い直すことが大切です。

医師というのは、個人の裁量に任される部分が非常に大きな職業です。たとえば回復の望みが少ない高齢の患者さんに、延命治療を続けるべきかどうか。家族から相談されたとき、自分なら何と答えるか考えてみてください。その際の医師の言葉によっては、患者さんの生死を左右することになるかもしれないのです。誰も答えたくはない、絶対的に正しい答えなどあるはずもないそんな問いに、自分の判断で答えを出さねばならないのが私たちです。受験生には、医学部に入れるかどうかではなく、自分は医師になれる人間なのか、しっかり考え抜いてほしいと思います。

千葉北総病院のドクターヘリ。ホットラインが鳴ってから3分で離陸する

医師は仕事を楽しむべき

学生時代の厳しい学びを経て、目標だった仕事に就いた今は、毎日が充実していて楽しいです。医師の仕事を楽しいなどというのは不謹慎だと言われそうですが、私はそうは思いません。この仕事が心から好きだから、やりがいを感じるからこそもっといい結果を出そうと努力する。その前向きな姿勢は必ず患者さんの利益につながると信じているので、若いスタッフにはいつも言うんです。もっと楽しめと。

もちろん、実際の救急の現場は厳しい環境です。病院とは違いスペースは狭く、スタッフもそろっていない、設備も乏しい。そんな状況下で、患者さんは今どんな状態にあるのか、最優先すべきことは何で、どこまでやったら搬送するのかといったことを瞬時に判断しなければなりません。立場上、医師が焦ると周りにも動揺が広がるので顔には出しませんが、背中は冷や汗でびっしょりぬれていることもしばしばです。

ひと昔前までは、患者さんをとにかく急いで病院へ運び、到着後に医療を開始するのが普通でしたが、現在は医師が患者さんのいる現場に積極的にアクセスし、できる限り早く治療を開始するための制度が全国に整ってきました。ちょうど私が救急医療の世界に入ったのがその転換期で、ドクターヘリの運用については私も消防や警察、自治体の関係者とずいぶん相談しながらシステムづくりに努めてきました。目の前の患者さんを救うだけでなく、医療システムを通して世の中を少しずつでも良い方向に変えていく手伝いができる。それも、仕事の面白さです。

国民医療費がますます増大するなかで、本当に医療が必要な人に無駄なく医療を提供するためには、今の制度自体を変えていかなければならない部分も多くあります。若い人には難しい時代かもしれませんが、医師として将来「楽しく」仕事を続けていくために、今はひたすらよく学び、よく学んでほしいと思います。(談)

まつもと・ひさし/1995年から救急医療に従事。2000年から日本医科大学千葉北総病院に勤務。日本救急医学会評議員・指導医、日本外傷学会評議員、DMATインストラクターなど役職多数。ドラマ「コード・ブルー ~ドクターヘリ緊急救命」の医療監修も務めた。

※掲載内容は取材・作成当時のものです。

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