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世界を舞台に
活躍できる医師とは

国際医療福祉大学 教授
医学教育統括センター長 赤津晴子さん

日本で哲学と理工学を学んだ後にアメリカへ渡り、ブラウン大学医学部を卒業して米国医師免許を取得した赤津晴子さん。
アメリカの大学で診療と医学教育に20年以上 携わってきた赤津さんに医師のグローバル化や、受験生へのアドバイスを聞いた。

臨床医学もグローバル化を

アメリカに留学して最初に学んだのは医学ではなく、公衆衛生学でした。当時は国際保健に興味があり、将来は国連機関で途上国の医療向上に携わりたいと考えていました。しかし、同じハーバード大学の大学院で学んでいたブラウン大学医学部の教授と出会い、医学博士号を取ることを勧められたのです。医師になれば国際保健やWHO(世界保健機関)の仕事もできるしオプションが広がる、何より私の性格が医師に向いている、と。医師を志すようになったのはそれからです。偶然の出会いがきっかけでしたが、あの時に医学の道を選んで本当に良かったと思っています。これから受験に臨むみなさんも進路で迷ったときは、できるだけオプションが広がる選択をお勧めします。

私が学んだブラウン大学もそうですが、どの大学の医学部にも留学生はほとんどいませんでした。それは国内から医学部を目指す人が多く、こと医学部に関しては他の大学院と違い、外国の学生にほとんど門戸を開いていないからです。こうした状況は今もあまり変わっていません。研究医学とは異なり、臨床医学の分野はアメリカに限らず、日本も含め世界的にグローバル化が遅れています。例えば車メーカーなら、自国だけで売れればいい時代ではなく、消費者も外国の製品を自由に選べます。ただ、ケガや病気をした場合は自国の医師に診てもらうのが一般的ですし、医師も他国の医師と患者さんを競うこともありません。他の分野が世界水準の土俵で競うことで大きく成長したように、臨床医学の世界もグローバル化によってもっと成熟できるチャンスがあると思います。

そのためにはまず、医学部でより多くの留学生を受け入れる必要があります。異なるバックグラウンドを持った人たちに外国で臨床医学を学んでもらうのです。4月に開学する国際医療福祉大学の医学部では、一学年定員140人のうち20人を留学生として受け入れ、彼らを将来母国のリーダーとして活躍できる人材に育成します。一方、7人に1人が留学生という環境での学びは日本人学生にとっても、医師をめざす過程において貴重な経験になると思います。

もう一つは、海外から臨床医を現場に招いて、臨床のティーチングをしてもらうことです。すでに行っているところもありますが、臨床医の交流が活発になりグローバル化が進んでいけば臨床医療の質がさらに高まり、結果的に患者さんに対するケアの向上につながるのです。

国内で通用する肩書や経歴は、国際社会では一切関係ありません。大切なのは、与えられたコミュニティーにポジティブな価値を付加できること。そのための力が求められます。そして、コミュニティーの共通言語を自由に操れることも必要です。ただし、言語はあくまでもコミュニケーションの手段。コミュニケーション力で大切なのは自分が言いたいことを伝えるだけではなく、相手の発言やボディーランゲージから思いをくみ取る力です。グローバル化が進む今後は、医師に限らず誰もが地球人として、そうした素養を持つことが要求されるようになるのではないでしょうか 。

すべての学びは患者さんのため

「親が医師だから」「理数系ができるので学校の先生に勧められた」など、医師を志すきっかけはどんなことでもいいと思います。ただ、臨床医を目指すみなさんに考えていただきたいのは、「本当に自分は臨床医に向いているか」、そして「30年、40年を医師という職業に捧げる用意ができているか」ということです。臨床医は人を助ける職業です。数学や物理ができるからといって、臨床医に向いているかといえば必ずしもイコールではありません。この確認がないまま医学部に入学してしまうと、医学を学びはじめてから「つまらない」「自分には向いていない」と感じてしまうかもしれません。そうならないためにも、本当に自分が医師に向いているかどうかを実践や体験を通してチェックすることが大切だと思います。例えば週末や夏休みを使って、老人ホームや病院のボランティアなどでお手伝いをさせてもらう。その実体験から「思っていたイメージとは違った」「もうたくさんだ」と感じた方は、進路を再検討する必要があります。逆に、「医師になって人を助けたい」「人を助けることに喜びを感じる」と実感できた方は、どんなに辛い道であったとしても、ぜひ臨床医を目指して頑張ってください。

もう一つ覚えておいていただきたいのは、常に患者さんの立場に立って行動することです。医師は「人生の目標は健康」と思ってしまうこともあります。しかし、患者さんにとっては、健康は人生のゴールではなく、自分の目標を達成するための大切な要素だと思うのです。患者さん方は健康を害されて我々のところにこられるので、それを治療して本来あるべき形に戻すことをお手伝いする。それによって、患者さんがご自身の人生の中で成し遂げたいと思っておられることを達成できる。何かのご縁でこのプロセスに医師として参加し、それを患者さんに喜んでいただけることが、私のやりがいです。

医学部に入るための、そして医学部での学びは、自分が将来お会いする患者さんのための学びです。臨床医を志している皆さんには、常にその視点を忘れないで勉強に励んでいただきたいと思います。(談)

あかつ・はるこ/上智大学大学院修了後、フルブライト奨学生として渡米。ハーバード大学院を経てブラウン大学メディカルスクールで医学を学び、米国医師免許取得。スタンフォード大学で内科レジデント、内分泌内科フェロー修了。ピッツバーグ大学とスタンフォード大学で患者診療と医学教育に携わる。元スタンフォード大学医学部准教授、内分泌内科外来長、甲状腺癌メディカルディレクター。America’s Top DoctorsおよびBest Doctors受賞。2017年4月成田市に開設する国際医療福祉大学医学部の医学教育統括センター長に就任予定。

※掲載内容は取材・作成当時のものです。

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