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難病治療の道を開く
地道な研究の日々

北里大学医学部長 宮下俊之さん

昆虫との触れ合いを通して生命に興味を抱き大学に入学、医学部卒業後に小児科の臨床医を経て、現在は分子遺伝学の研究者として活躍している宮下俊之先生。
臨床と研究ともに深く携わってきた宮下先生に、自身の経験や医学の道を志す人に必要なことを聞いた。

医師にとって医学研究は大切

今は遺伝子の研究をしていますが、医学部卒業後は、大学病院で小児科医として勤務していました。小児科を選んだのは、子どもが好きだったのと、診療科が細かく分かれておらず、子どもの全身を診られることに魅力を感じたからです。それと当時の小児科の教授に、「子どもは未来である」と言われて、〝小児科は国の未来を診る科〟と思ったことが、僕にとって非常に大きかったですね。

それから数年して私が受け持った患者に、免疫不全で感染症に対する抵抗力が弱くなる遺伝病により、首のリンパ腺が腫れて高熱に苦しんでいる子がいました。その子の母親が立派な方で、自分の子どもを救ってほしいとは言わず、「この病気の原因と治療法を見つけてください」とおっしゃっていたんです。それで原因を究明するために色々と調べていくと、遺伝子を解析しないといけないことが分かりました。小児科の先輩が遺伝子解析のラボを立ち上げていたので、症例を持っていったら、「解析はできるけど、自分でやってみたら?」と言われて、手取り足取り教わりながら遺伝子解析を始めました。それが研究者の道に進むきっかけです。

8年余り小児科の臨床に従事しましたが、その経験は今も生きています。小児の悪性腫瘍をたくさん診ましたし、遺伝病も経験しました。だから臨床医からの共同研究や解析の依頼にも対応しやすいです。臨床的なことも分かりますし、それを踏まえた上で返事や報告もできます。病気や患者についてよく知っていることは、研究する上で非常に役立ちます。逆に大学院で医学博士を取得してから臨床に戻る人も多くいます。医師にとって医学研究はとても大事です。専門医を目指す人も、医学博士を取得することを考えてほしいですね。

生命に対する興味と優しさを

現在は大学で、がんと遺伝、がんを抑える遺伝子の研究をしています。がんは基本的に遺伝しませんが、家族性腫瘍という遺伝するものもあります。直接携わっているのは、皮膚がんや脳腫瘍などになりやすい遺伝病「ゴーリン症候群」です。国内では、この病気の遺伝子解析をしているところがほとんどないので、全国から依頼が来ています。検体を検査して遺伝子の変異を特定できたときは、直接患者の役に立ててうれしいですね。また珍しい遺伝子変異が見つかると、新たなメカニズムを知ることができたり、疾患を超えて応用できる結果が出たりするので分子遺伝学の研究者としてやりがいを感じます。

ノーベル賞を受賞された山中伸弥先生をはじめ、すばらしい成果を挙げている研究者は多いですが、研究自体はあまり華やかではありません。やっていることは非常に地道な作業になります。来る日も来る日も同じことを根気よくやっていく。しかし、それを何週間も繰り返していくと目覚ましい結果が出てくることがあるのです。若い研究者の中には単調なことをあまりやりたがらない人もいます。それではなかなか新しい発見もできません。研究者は一見誰にでもできそうなことでも必要と感じたら諦めずにやり続けられる忍耐力が求められます。

医学部を目指す人には、生命に対して興味や畏敬の念を持っていてほしいですね。人や生物に興味がないと、医学部で勉強するのはつらいと思います。あとは当然、優しさも必要です。医師になると弱い立場の人や悩んでいる人と接することが多くなり、そうした人たちの気持ちを共有できる力、あるいは話を聞く力などが必要とされます。そのためには年配の人と接したり、学校などで色々な考えを持った人と付き合ったりすることが大切です。それが医師として重要なコミュニケーション力にもつながります。将来いい医師、研究者になるためにも、勉強だけではなく、「生命への興味」「優しい気持ち」「コミュニケーション」について意識していてほしいですね。(談)

みやした・としゆき/1980年、東京大学医学部卒業。同年同大学医学部附属病院小児科研修医。88年、国立小児病院小児医療研究センターリサーチレジデント。米国留学などを経て、2007年11月から北里大学医学部分子遺伝学教授。16年7月から現職。

※掲載内容は取材・作成当時のものです。

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