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100点満点のテストならば10点は捨てる
失敗を恐れずに冒険に挑め

心臓外科医 天野 篤さん

2012年に天皇陛下の心臓手術を執刀した天野篤医師の手術数は既に8000例以上。成功率は98%以上で、予定された手術なら99.5%と驚異的だ。この成功率の裏にはチャレンジ精神と努力の積み重ねがある。

「小6の頃、テレビドラマ『白い巨塔』を見て、手術で患者を治す外科医はカッコいいな、と目を奪われました。中2のときに母が胃潰かい瘍ようの手術を受けて回復したことから、さらに外科医への憧れが強くなりました」

天皇陛下の執刀医として知られ、難手術を成功させることから、「神の手」と呼ばれる天野篤医師は、外科医に憧れた理由をこう振り返ります。

両親の医療体験などで、高2から医学部を目指す

外科医の専門分野のなかで、「心臓外科医になりたい」と思ったのは、高2のときに父親が心臓弁膜症と診断されたことが大きい。このとき、医師になることを強く意識し、医学部受験を決めたといいます。

「大学2年のとき、父の僧帽弁置換術が成功しました。そのことに加え、中学生のときに南アフリカで世界初の心臓移植が行われ、『心臓外科は歴史を変える医療だ』と感じたことも、心臓外科医になった理由です」

天野医師によると、医学生が医師を志した理由の約9割が家族や親戚、自分の医療体験で、残りの1割ほどが医療ドラマや医療漫画などの影響だといいます。

「受験勉強中の自分を励ますために、『人の役に立つ』『人から尊敬される』『もうかる』『親に楽をさせる』などの理由もあるでしょうが、やっぱりきっかけは医療体験だと思います。医療体験は小さな芽です。その芽を医学部に入って蕾にし、医師になっていかに開花させていくかです」

たくさんの患者を救った手。「浪人時代、パチンコを人一倍やった。当時は手動だったから、
パチンコで微妙な力加減を学び、それが結果として手術に生きている」(笑)

医学部合格はスタートライン入学後のハードルは昔より高い

天野医師が医学部に入学した頃と比べると、現在は勉強量も増えて、入学後のハードルが高くなっているそうです。

「私たちの時代と比べると、学生の社会性がなくなり、幼稚になったように感じます。昔はほぼ全員が部活やサークルに入る『ムラ社会』で、入学すれば助け合って何とかなった。ところが、今は部活やサークルに入らない『帰宅部』の学生も少なくありません。本学でも、1学年140人中15%ぐらいが帰宅部です。以前では考えられませんね」

学生が、社会のさまざまな誘惑に負けてあまり勉強しなくなると、有名進学校出身の学生でも留年するといいます。

「医学部合格は、医学を勉強する権利を得たというだけで、スタートラインです。予習、復習、リサーチを続けられないと、進級は厳しい。テスト前の一夜漬けも1度ならまだいいのですが、普段から勉強しないで一夜漬けを続けていると脱落していきます」

医学部合格はゴールではありません。医学生になってからも学び続け、医師になってからも新しい情報を収集し、勉強を続けなくてはいけません。
3浪を経験した天野医師は、入学後は誰よりも勉強しました。心臓外科医になって間もない頃、父親の心臓弁膜症の手術を先輩医師に託し、結果、亡くした過去があります。この悲しい出来事で、心臓外科医を究めようという思いが強くなりました。

「手術の前にはあらゆるケースを想定し、そのときの対応を確認しているため、手術中に何か起きても落ち着いて対処できます。また、手術の直後から翌朝までに手術内容を分析し、すべての手術を記録しているので次の手術の改善につながります。手術に新しい工夫を加えることによって、患者さんの身体の負担が少なくなることも、やりがいのひとつですね」

天皇陛下の手術のときには、当時先進的な手技として、脳梗こう塞そくにならないような工夫をしました。天野医師が、心臓を動かしたまま手術する「オフポンプ冠動脈バイパス手術」に挑戦した1996年には、日本ではこの手術はほとんど行われていませんでした。

「従来の手術と比べると難易度は高いのですが、心臓をはじめ全身への負担が少なく、術後の回復が早い。今後はこの手術が主流になると確信し、海外の手術を見学。ビデオを入手し、独学で縫合の技術を身につけました」

62歳になった今も、年間350件ほど執刀し、手術件数は8千例を超えましたが、手術記録は欠かしません。成功率は98%以上、予定された手術なら99.5%と高確率なのは、努力と工夫を続けているからなのです。
現在、順天堂医院だけではなく、仙台、大阪、ベトナムなどの病院でも手術し、心臓外科医の育成にも力を入れています。

「環境が違う場所で手術をするのは、経験値をあげることになり、私自身、すごく勉強になります」

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取材・文/庄村敦子 写真/小山幸祐(朝日新聞出版)

あまの・あつし/埼玉県生まれ。順天堂大学心臓血管外科教授、順天堂医院院長。1983年日本大学医学部卒業。新東京病院などを経て現職。オフポンプ冠動脈バイパス手術の第一人者。2012年に天皇陛下の心臓手術を執刀。

※掲載内容は取材・作成当時のものです。
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