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場を読み、場を作る力を養おう

聖路加国際病院 呼吸器センター(呼吸器外科)
ロボット手術センター 副医長 小島史嗣さん

患者への負担が小さく、退院も早い—。そんな夢のような手術が、ロボットを使うことで可能になってきた。聖路加国際病院でロボット手術にも携わっている呼吸器外科医、小島史嗣先生に、今後の医師に求められることや、受験生へのアドバイスなどを聞いた。

脱線の経験が未来に生きてくる

「やりたいことをしなさい」という両親だったので、医者になれといわれたことはなかったと思います。おかげで子どもの頃から、興味のあるもの、自分に合うものを選んできました。ただ脱線することも多かったため、しっかりしたレールを1本敷こうと、高校3年生のときに医学部へ行くことを決めたのです。

大学選びでは、〝自分に合うこと〟がとても大切だと思います。受験生のときに何校かオープンキャンパスに行きましたが、「ここじゃない」と感じる大学もありました。学長の話を聞いても自分には響かなかったり、自分の住んでいる町とは地域性が大きく違ったり。さらにキャンパスには運営している人たちの意識が反映されていて、建物の配置にもメッセージがある。そういうものを実際に見て体感することが大事です。その大学に6年、あるいは将来もいるイメージが湧くか。それが医師を目指すモチベーションにもつながると思います。

最終的に地元の京都大学に行きましたが、それなりに脱線を繰り返していました。講義の内容よりも国際会議の事務局を運営したことや、茶道部の活動が印象に残っています。医師になるには実習ももちろん大切ですが、講義以外の経験が将来役立つことも多い。特にお茶会の経験はすごく生きています。

茶道では、よく一期一会と言われるように一つの「場」を作ることが大切です。茶席を設ける場合、どんな人が来るか、どう座るかなどを想定しながら準備して、相手をもてなすためにベストな対応をしないといけません。手術も日によって患者さんやチームのメンバーが違います。その中で一番いい結果を出すために何をするかが重要になる。実は茶席を設けることと似ているのです。茶道をしていたことで、「今日は新人のメンバーがいるので、指示を3テンポ速く出そう」というような、判断が自然とできるようになりました。

病院の内と外から変わる医療

ロボット手術に象徴されるように、外科治療全体で患者さんの負担を減らす「低侵襲化」が進んでいます。ロボット手術によって神経障害が減り、傷が小さくなり、退院も早くなった。操作性もよく、手術の映像が共有でき、シミュレーションも発達してきているので、これからの若い外科医は幸せだと思います。患者にも優しく、医療技術は非常にいい方向へ進化しています。今後はAI(人工知能)による支援が取り入れられるなど、ますます進化するでしょう。

ただどんなに技術が進歩しても、医師として大事な仕事は変わりません。それは患者さんと話し合い、どうすべきかを探ることです。患者さんによって価値観は異なります。話を聞き、治療方針について着地点の合意形成を図らないといけない。そのときに大切なのは、相手に共感して話ができるかです。

また近年は医療系のベンチャー企業を立ち上げる若い医師も増えています。AIで診療したり、オンラインで問診ができる仕組みをつくったり。医療を軸足にしている人もいれば、企業に入って診察をしない人もいる。医師免許を取得することで軸足が定まり、そして選択肢が広がります。官僚や政治家、小説家、囲碁の棋士になった人もいますし、本当に多彩。医療は病院の中からだけではなく、外からもどんどん変わってきているのです。これから医学部をめざす人は、ストレートに医療の現場を担うことばかりでなく、幅広く将来を考えたほうがいいと思います。

医療の分野は非常に大きな変化の時代を迎えています。今後、医師には「多様性」や「共感力」が求められるようになると思います。場をつくる、場を読む力です。そうした力をつけるには、いろいろ脱線することも必要です。もちろん、はずれてもすぐに戻れるようにしっかりしたレールは敷いておく。その上で少し脱線してでも思い切ってやってみる。痛い目を見ることもあるかもしれませんが、医師として必要な多様性や共感力を身につけられると思います。(談)

こじま・ふみつぐ/ヴィアトール学園洛星高校卒。大阪・姫路での外科修練、京都大学大学院を経て現職。低侵襲手術の実践と教育を担いつつ、医療情報技術の恩恵を患者さんと共有する「場」を作ることが今の目標。

※掲載内容は取材・作成当時のものです。

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