「人を思いやる宿と料理の心地良さ」尾道の料理も道後の宿も、何を大事に守りお客様に心を尽くすか、信条が揺らぐことなく歴史を重ねている素晴らしい場所ばかりだった。きっとこれからも時代に寄り添いながら、変わることなく訪れた人をもてなしていくに違いない。
尾道で昼食をとるために立ち寄ったのが「魚信旅館」だ。尾道水道に面した1階の部屋は、海面が手の届くような距離にある。ひたひたと打ち寄せる波の音を聞きながら会席料理をいただく。オコゼの薄造りや、メバル煮付け、サワラ西京焼きといった心尽くしの魚料理を楽しむ。オコゼの赤だしで魚の旨味を堪能した後は、ウニご飯で〆る。

「水との距離が近く、船の往来を眺めながらひと息つけるとてもいい旅館でした。この旅館の隣に住んで、釣り竿を置いておきたい(笑)。ウニご飯のウニは瀬戸内のものではないと思うのだけれど、地のものにこだわりすぎずに美味しいものを食べてもらいたいという気持ちもとてもよかった。何十年も前にここに居たことがあるように感じさせる建物が残っているというのもいいね」と池井戸さん。
尾道の素朴な生活が感じられる街並みの中に寄り添うように建つ数寄屋造りの「魚信旅館」の建物。約100年前の建物を、"壊しては二度とつくりえないもの"と、守り続けてきたのだそうだ。

松山の宿は道後温泉本館からもほど近い「ふなや」。渓流が流れる庭園は、かつて漱石や子規も散策を楽しんでいる。渓流の上に離れが設えてあり、川床料理のような風情で食事を楽しむこともできる。
池井戸さんが「ふなや」に宿泊するのは二度目だそうだ。
「庭園の佇まいはもちろん、気配りの行き届いた接客も非の打ち所がない。小規模な宿ならいい所もあるけれど、客室数の多い「ふなや」でこのクォリティは素晴らしい。今回は洋室に泊まったのだけれど、座って原稿の書ける机があって、思いのほか仕事がはかどりました(笑)」

夜は「ふなや」の部屋の窓からも見える「椿倶楽部」へ。茶室のにじり口のような小さなドアを開けると、美人母娘が迎えてくれた。意識したわけではないけれど、結果的に女性だけで切り盛りするお店になったのだそうだ。
「ママも娘さんも人当たりがいいし、料理も美味い。隠れ家的な店の作りもいいね。松山に来たら、またぜひ寄りたい店ができたよ」

Text by Eri Magara

池井戸潤のエッセイはこちら

魚信旅館
尾道水道に面して建つ魚信旅館。戦災に遭わなかった尾道にあって、数寄屋造りの建物は100年近い歴史を持つ。イキがよくないと造ることのできないオコゼの薄造りは、ぜひ味わっておきたい一品。もちろん宿泊も可能だ。

住所:〒722-0045 尾道市久保2-27-6
電話:0120-37-4028

魚信旅館 公式サイト
魚信旅館

ふなや
1626年創業。施設内の庭園「詠風庭」を散策された昭和天皇が「この地では珍しい植物であるから大切にする様に」と仰せられた葵苔は、以後大切に保護されている。数寄屋大工による和室の他、モダンなインテリアのラグジュアリーな洋室も。

住所:〒790-0842 愛媛県松山市道後湯之町1-33
電話:0120-190-278

ふなや 公式サイト
ふなや

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