「フクシマの再生の歴史を訪ねる」幕末の激しい戦闘で傷つき、明治に入ると磐梯山は大噴火を起こす。それでも不屈の精神で会津の人々は困難を乗り越えてきた。
茶色の山肌に白く残雪が残る5月初旬の『磐梯吾妻スカイライン』。標高1600メートルの地点にある浄土平は、吾妻連峰の火山活動による砂礫が積もり、日本とは思えないほどの荒々しい景観を見せる。
この道路は、昭和34年に開通している。国民車構想の後押しにより、やっと国産車が作られ始めた頃だ。まだ東名高速道路はできていない。そんな時代にフクシマの人々は観光道路を作り上げていたのだ。
『磐梯吾妻スカイライン』には、途中、鼻を突く硫黄の臭いが車内にまで流れ込んでくる場所もある。「相当苦労して、道を作ったんだろうね」。カーブの連続をハンドリングに集中する池井戸さんが、ポツリと言葉を漏らした。
現在、『磐梯吾妻スカイライン』を含む観光有料道路3本は、東日本大震災からの復興施策の一環として無料開放されている。先輩たちの努力が福島に人を呼び、ドライブを楽しませてくれているのだ。

旅の2日目、長く会津の地を見つめてきた『鶴ヶ城』に向かった。
天守閣の展示施設の中に、一枚の写真がある。砲弾を撃ち込まれ、傷ついた天守閣の写真だ。旧幕府軍と新政府軍が激しく戦い、日本最後の内戦となった戊辰戦争の最後の砦となった姿だ。籠城1ヵ月、ついに城を明け渡すこととなる。
その戊辰戦争で自刃に倒れた白虎隊の学舎が、『會津藩校 日新館』だ。会津藩士の師弟が10歳になると入学し、ここで文武の両方を学んだ。日本初のプールと言われる「水練水馬池」や、天文台まで備えられていた。戊辰戦争の際に焼失している。
『鶴ヶ城』は1965年に再建され、『會津藩校 日新館』も1987年に完全復元し、開館した。激しい戦闘に散った幕末の士の志の拠り所が“再生”されたのだ。

現在も噴気活動の続く磐梯山の周辺には、多くの温泉が湧き出している。一軒宿の温泉から、東山温泉のような風情のある景色を残す温泉街もある。
囲炉裏を囲んで夕食をとった『芦名』は、その東山温泉にある宿。炭火で天然のイワナを炙り、馬刺しに舌鼓を打つ。地元産の玄蕎麦は、最も美味しいタイミングで茹で上げられ、供される。
湯宿の客足はまだ東日本大震災以前には戻っていないと聞いていたが、宿泊した『星野リゾート 裏磐梯ホテル』は、平日にもかかわらず大勢のお客さんで賑わっていた。
「宿泊しているお客さんの顔がとてもよかった。フクシマを応援したい、そんな気持ちで旅している人が多いせいかもしれないね」と池井戸さん。

長く雪に閉ざされる雪国の厳しさが、我慢強く、人と人との結びつきを大事にする会津の風土を作ってきたと言われる。
フクシマはかつて経験したことのない苦境に直面しているが、“再生”への情熱と不断の努力で、必ずやかつての輝きを取り戻すはずだ。紅葉に染まる会津も素晴らしいと聞く。その頃に再び訪れてみたい。

Text by Eri Magara
池井戸潤のエッセイはこちら

フクシマの「♡」を探せ!
長い歴史を持つ『鶴ヶ城』は、城壁の見本市のような城でもある。
一番古い天守閣の石垣は、「野面(のづら)積み」という石の積み方。緩やかな傾斜で自然石を組み合わせて積み上げられており、失礼ながら、簡単に登れそう?
対して、廊下橋付近の石垣は高さ約20メートル。”忍者落とし"の異名を持つ扇勾配の城壁だ。
そんな城壁の中に「♡」型の石がある。場所のヒント:武者走り。あまりの重さに、遊女が石の上で踊って石を運搬する人足を励ました、との言い伝えから「遊女石」と呼ばれる、ちょっぴりセクシーな石もある。場所のヒント:太鼓門。
「♡」は、『鶴ヶ城』から遠く離れた、五色沼トレッキングルート上にある『毘沙門沼』の鯉からも発見されている。ボート乗り場付近で多くの目撃情報が寄せられている。

鶴ヶ城

築城631年と、長い歴史を持つ鶴ヶ城。幕末の激しい攻防戦にも耐えたが、明治7年に石垣を残して取り壊された。現在の天守閣は1965年に再建され、今年で50周年を迎える。4月1日にリニューアルされた展示施設は、城の歴史がわかりやすく展示されている。池井戸さんも「よくできていた」と太鼓判を押す。

住所:〒965-0873 福島県会津若松市追手町1-1
電話:0242-27-4005

鶴ヶ城 公式サイト


会津東山温泉 いろりの宿 芦名

湯川が流れる温泉街に『芦名』がある。明治時代に建てられた北会津の豪農の客間を移築し、染め物屋の蔵の扉を個室の入り口に使うなど、落ち着いた風情のある建物で、囲炉裏を囲む。天然のイワナを焼き、葡萄の新芽やタラの芽の天ぷらなど、会津の美味しさをたっぷりと味わえる。

住所:〒965-0814 福島県会津若松市東山町湯本下原232-1
電話:0242-26-2841

会津東山温泉 いろりの宿 芦名 公式サイト

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