「美食の宝庫を味めぐり」能登半島沖で暖流と寒流が交わる金沢は海の幸に恵まれた土地。伝統的な加賀野菜も人々に愛され守られてきた。金沢の人々の食に対する思いの強さが、豊かな食文化を育んでいる。
加賀れんこん、加賀太きゅうり、金時草……伝統の加賀野菜と、暖流と寒流の交わる日本海の好漁場に恵まれた石川の海で摂れる新鮮な魚介類。食の豊かさは旅の目的地選びに欠かせない条件だが、金沢には豊かな食文化が根づいている。

金沢に着いて真っ先に向かったのが180軒以上の店が軒を並べる『近江町市場』。雨の多い金沢にあって、市場全体がアーケードで覆われているのがありがたい。通路がたっぷりと広くとられているので、混雑する時間帯でも買い物がしやすい。

日本全国様々なスタイルの市場があるが、『近江町市場』が面白いのは、地元の主婦、プロの料理人、そして観光客が、当たり前のように同じ店で買い物をしている光景だ。もちろんお目当てのものは違う。毎日のように通う地元の方は今晩のおかずを、料理人は値が張っても特別なものを、観光客は土産を買い求める。プロのみ観光客のみになりがちな他の市場とは、店の人も訪れている客も、目の輝きがまったく違うのだ。

そして『近江町市場』では、旬のものがめまぐるしく変わる。たとえば、スルメイカ、甲イカ、赤イカ……、春から夏にかけて出回るイカの種類も刻々と変わる。
「こんな市場が東京にあったら最高だね!」 池井戸さんも品定めに余念がない。。

その日の夜に訪ねた鮨『みつ川』も、ネタは『近江町市場』で仕入れてくるものが多いとのこと。プロの目で厳選された魚に、丁寧な仕事が施されている。小振りのシャリに小振りのネタを、心を込めて握る手つきが美しい。聞けば『みつ川』の主人は、あの『銀座 久兵衛』で5年間修業を積み、10年前に金沢で店を構えたのだそうだ。
旬のガスエビやシロエビに唸り、塩で味わうふんわりとした穴子はまさに絶品。脂の乗ったノドグロを炙った手巻きで締めた。

今回の旅の最後のランチは、4回を重ねた「ニッポンを走る」シリーズでも初めてとなるフレンチ、『ジャルダン ポール・ボキューズ』へ。フランスはリヨンの三ツ星レストラン『ポール・ボキューズ』と、『ひらまつ』がコラボレーションしたこの店は、海と山の幸に恵まれたリヨンと自然環境が似ている金沢に5年前にオープンした。

正面の広坂通り側から見ると歴史ある旧石川県庁舎をそのまま残した外観だが、金沢城の城壁を見渡せる金沢公園側はモダンな全面ガラス張りの造り。横に半分、新旧が融合した斬新なデザインの『しいのき迎賓館』の2階に店を構える。
文化や文化財こそが地域に好循環を生みだすエンジンとなることを、改めて感じた旅となった。

Text by Eri Magara

池井戸潤のエッセイはこちら

賢い主婦は、魚から。
『近江町市場』を案内していただいた近江町市場商店街振興組合の小林すみ子さんは、珍しい野菜や旬の魚をどう料理すれば美味しく食べられるのかをよくご存知で、食通の池井戸さんを唸らせていた。

「エビもカキも野菜も魚もどれもこれも食べてみたくなって、決められなくなりますね」、そう漏らした池井戸さんに一言。
「まず魚を決めればいいんです」。
メインになる魚料理が決まったら、それに合う野菜料理を考えて材料を買えばいいとのこと。

一般的なスーパーマーケットでは、野菜→肉→魚と回るようにできているところが多いけれど、賢く市場を利用するならまず魚。勉強になります!

近江町市場

1721年に開かれた金沢の台所。たとえば、イタリア料理に合う野菜をセレクトした店など、それぞれの店が工夫を凝らして個性的な店を目指しているのも楽しい。
場内では食べ歩きもでき、気軽につまめる寿司店も多い。

近江町市場商店街振興組合
住所:〒920-0905 石川県金沢市上近江町50
電話:076-231-1462

近江町市場 公式サイト


鮨 みつ川

ひがし茶屋街の風情のある街並みに溶け込んだ路地奥の店。引き戸を引いて店内へ。8席の白木のカウンターの店内は、凛とした緊張感が漂う。
昨年、金沢駅と近江町市場内に「歴々」という名前の姉妹店を2店オープンさせている。

住所:〒920-0831 石川県金沢市東山1-16-2
電話:076-253-5005

Audi Q3
クーペライクな美しいボディラインが際立つプレミアムコンパクトSUV、Audi Q3。「取り回しがいいサイズなので、街の中でも快適に走れるSUVですね」と池井戸さん。
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Art Direction : Hiroyuki Aoki (Mag) Photograph : Masaya Adachi Styling : Takahisa Igarashi Edit : Mitsuhide Sako , Eri Magara Produce : Teruhiro Yamamoto ( AERA STYLE MAGAZINE )