「京の“水”を巡る旅」三方を山に囲まれた京都の夏は蒸し返すように暑い。が、その山がたくわえた水の流れを上手く使って涼をとる楽しみもあるのだ。
京の奥座敷と呼ばれる貴船は、木々が生い茂る中に清流が下る場所。岩肌を駆ける急峻な水流と水煙が作る清冽な冷気にあたり一帯が包まれる。市内より気温が低く、川床に下りると肌寒さを感じるほど。

貴船川の上流に位置する『貴船 右源太』は、『貴船神社』ともゆかりの深い由緒ある旅館だ。その『貴船神社』は水神が祀られている。この「作家、池井戸潤。ニッポンを走る」の第一回目に宮崎を訪ねたが、そこでも登場している神話が『貴船神社』にも残されている。

神武天皇の母・タマヨリヒメノミコトが、淀川から鴨川へ、さらに貴船川を遡って水神を祀ったとされているのだ。境内には雲を呼び雨を降らせる龍が描かれ、石垣から湧き出す御神水では水に浸して吉兆を占う「水占みくじ」が人気だ。

「貴船は魔界を覗きこんでいるような不思議な場所ですね。表の顔と裏の顔をいつか探ってみたいです」と池井戸さん。ちなみに、貴船から鞍馬山までは、天狗から秘技を伝授された牛若丸も躊躇したと伝わる鬱蒼とした「木の根道」で結ばれている。

夏ともなれば約100軒の料亭が川床を開く鴨川が、観光客にも親しまれる京都を代表する川だとすれば、普段目にすることは少ないけれど同様に京都を潤しているのが「琵琶湖疏水」だ。「琵琶湖疏水」とは、明治維新と東京奠都で衰退した産業を復興するために作られた、琵琶湖の水を京都に引く運河である。当時のリーダーたちが力を注いだ水力発電施設はいまも現役稼働中だ。

まずは『琵琶湖疏水記念館』に向かい、当時の工事の様子や水路の模型などの展示を見学する。

疏水記念館からは、台車に船を載せて上下させていた「蹴上インクライン」を通り、疏水を使って見事な庭園を作る別荘群を経て、赤煉瓦のアーチが見事な水道橋、『南禅寺水路閣』へ。

「ただ機能があればいいということではなく、美しい建造物を造ることで永く愛され、観光客も集める場所になっていますね。境内に水路を通したのもおもしろい。琵琶湖の水を京都に引くという大胆な発想を、アイデアだけに留めずに事業として実際にやり遂げたことが見事です」

Text by Eri Magara

池井戸潤のエッセイはこちら

和懐石で大人肉
京都に行ったら肉懐石『にくの匠 三芳』にぜひ行って欲しいというオススメに従い、夜の祗園へいそいそと繰り出した。
肉料理といえば“洋”でいただくものだと思い込んでいたので、肉の旨さを丁寧な仕事と和の力で引き出すこの店の料理の新しさに心が踊る。
コースは基本的に一種類で、メインの肉をチョイスするスタイル。この日は、蒸し鮑とおにくの旨煮椀、サガリの牛脂揚げ、サーロインのしゃぶしゃぶ……など計11品の構成。心遣いの行き届いた料理と、肉の旨さを絶妙な火入れでシンプルに楽しむ料理がバランスよく、腹はずんずんとふくれるが、舌はまったく飽きない。肉も新鮮な肉、骨付きのまま熟成させた肉などタイプも部位も様々。おまかせで頼んだ日本酒は、吟味された味の性格の違う酒をアレンジして持ってきてくれてこれまた飽きさせない(つまり酒も進む)。ウイスキーがかかった抹茶のシャーベットのデザートをいただいた頃、ふと不安に襲われる。料金はいかほどか? 贅沢な内容に、さすがの池井戸さんも心配になった様子。結果は……また京都に来たときにはぜひ足を運びたいとニコニコと店を後にできた額であった。
にくの匠 三芳 公式サイト

貴船 右源太

貴船川の上流で川床料理をいただける料理旅館。貴船山の伏流水で泳がせ、清められた鮎は絶品。ジョージ・ナカシマの家具や西陣織の糸で作られたランプシェードなどを配し、2004年にリノベーションしたモダンな宿を予約して京の奥座敷ならではの涼を満喫したい。

住所:〒601-1112 京都府京都市左京区鞍馬貴船町76
電話:075-741-2146

貴船 右源太 公式サイト


ハイアットリージェンシー 京都

三十三間堂や京都国立博物館に隣接する緑豊かな東山七条の一角に建つ、京都を代表するラグジュアリーホテル。2006年にインテリア・デザイン界の巨匠、杉本貴志氏と共に、以前のホテルを全面リニューアル。景観を守りつつ、都市型ホテルの機能性と京都ならではのおもてなしの心が融合。一度は訪れたい人気のホテルになっている。池井戸さんが宿泊した部屋からは日本庭園が望める。「いままで宿泊したことのある京都のホテルの中でも、ホスピタリティーといい部屋のしつらえといい、最高ランクのホテルでした。部屋の大きなヒバ材の浴槽には驚かされました」

住所:〒605-0941
   京都府京都市東山区三十三間堂廻り644番地2
電話:075-541-1234

ハイアットリージェンシー 京都 公式サイト

Audi A1
ラインナップの中で最もコンパクトなAudi A1に、直噴3気筒ターボエンジンの1.0リッターカーが登場。Audiを特徴づけるシングルフレームグリルと、シャープなボディデザインが目を引く。
Audi A1 の詳細はこちら

Art Direction : Hiroyuki Aoki (Mag) Photograph : Kiyoshi Tanaka Styling : Takahisa Igarashi Edit : Mitsuhide Sako , Eri Magara Produce : Teruhiro Yamamoto ( AERA STYLE MAGAZINE )