『夏の、「了」。究極のクルマ。』Audiオーナーである作家・池井戸潤が、自らAudiのハンドルを握り、ニッポンの風景を訪ねる旅。パワフルなスポーツカーAudi R8を駆り、夏の富士の裾野の旅を楽しんだ。
小説の最後には、「了」、と入れる。
終わり、という意味だ。
原稿用紙には書くけれど、本になったときには印刷されない文字である。
ひとつの小説を紡いでいき、「ああ、もう語ることがない」と気づいた瞬間、作家の仕事は至福の解放感とともに終わる。
その感覚を、ぼくは八月初めのある日、味わった。
三週間ほど仕事場にこもりきりで、小説を一本書き上げたのだ。予定を入れず、あるいはキャンセルして、ひたすら原稿を書き続けている間に、梅雨が明けて、気がつくと夏が来ていた。

河口湖への旅に出かけたのは、そんな時期である。
新宿駅からJRの特急に乗り、大月で降りる。
待っていたのはR8スパイダー。
アウディのラインナップでも、最高に贅沢な一台である。まさに夏休みにふさわしい相棒だ。
早速、その相棒に乗り込んで、河口湖へ向かった。
のろのろ運転の一般道では、せいぜい二速までしか入らない。ところが、ひとたび走り出せば、面白いように風景が千切れ飛ぶ。バイクに乗っているような力強い加速は、まさに快感。アクセルを緩めた途端、鳴り響く派手なバックファイヤーも最高だ。

それにしても、相棒よ、お前はいったい何者なんだ。完全な二人乗りで荷物の置き場もないし、トランクに入るのはボストンバッグがせいぜい一個。ゴルフのキャディバッグ一本、載せられやしない。
果たしてクルマとはなんぞや――そんな、根源的な問いを投げかけているようだ。
だけど、その答えは、乗ってみればわかる。
このクルマは、何かを運ぶためでも、どこかに移動するためでもなく、ただひたすら走り、止まり、曲がるためだけに存在するのだと。そう、手段ではなく、目的として。

この世の物を、生きていく上で必要なものと不必要なものに二分すれば、今回の相棒は間違いなく後者に属するに違いない。いや、待てよ――。
ということは、ぼくの小説と同じではないか。
ははあ。だから、ウマが合うんだな。
前方の交差点の信号が青に変わり、派手なバックファイヤーの音とともに左折すると、次の瞬間、まぶしいほどの湖面が眼前に現れた。

レースは技術の実験室である……Audiがモータースポーツで培った技術を市販車へ投入したミッドシップのスポーツカーがAudi R8。圧倒的なパワーと俊敏な加速、そしてquattro(フルタイム4WDシステム)による安定感のあるコーナリング。0-100km/hの加速はわずか3.6秒。ドライビングへの情熱を掻き立てられる一台だ。
そのオープントップモデルがAudi R8 Spyder。10気筒エンジンが奏でるサウンドや迫力のエグゾーストノートをダイレクトに堪能できる。特筆すべきは、大きく広い視界の良さと、エンジンがキャビンのすぐ後方にあるとは思えない静粛性。都会でスマートに乗りこなすこともできるインテリジェントなスポーツカー。
※燃料消費率は国土交通省審査値。定められた試験条件のもとでの値です。実際の走行時には、使用環境(気象、渋滞等)や運転方法(急発進、エアコン使用等)に応じて燃料消費率は異なります。
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池井戸潤
池井戸潤 1963年、岐阜県生まれ。慶応義塾大学卒。98年「果つる底なき」で江戸川乱歩賞を受賞し、デビュー。『鉄の骨』で吉川英治文学新人賞、『下町ロケット』で直木賞を受賞した。13年に放映されたテレビドラマ「半沢直樹」(TBS系)は、『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』が原作。ドラマは歴史的な高視聴率を記録し、「倍返し」は流行語にもなった。半沢シリーズ第3弾の『ロスジェネの逆襲』の単行本は100万部を超える大ヒットとなり、シリーズ第4作の『銀翼のイカロス』も発売3日で50万部を超える爆発的な売れ行きを示した。10月よりテレビドラマ「下町ロケット」(TBS系、主演・阿部寛)がスタート予定で、このドラマの後半部分は、連載小説「下町ロケット2」として、朝日新聞朝刊の広告特集にて掲載予定。愛車はAudi RS 6 Avant。
Art Direction : Hiroyuki Aoki (Mag) Photograph : Kiyoshi Tanaka Styling : Takahisa Igarashi Edit : Mitsuhide Sako , Eri Magara Produce : Teruhiro Yamamoto ( AERA STYLE MAGAZINE )