「青年よ、大志を抱け」臆することなく時代の最先端のものを受け入れ、逞しく前進する北海道の人々の精神性は、クラーク博士の言葉が育んだものなのだろうか。
旅の2日目、世界最先端の農業ロボット研究の第一人者、北海道大学の野口伸教授を訪ねた。 農業ロボット研究の最前線で、スライドを見ながら説明を受ける。先生のお話に耳を傾け、時折質問を挟みながら熱心にメモをとる池井戸さん。
ロボットカーといえば、Audiの自動運転車の実用化が目前に迫っているが、野口先生の農業ロボットも一般販売に向け急ピッチで準備が進められている。
自動車の自動運転は主にカメラやレーダーで周囲を認識するが、起伏や凹凸の多い農地を走る農業ロボットはGPSによる正確な位置情報が必要不可欠となる。2018年に日本版GPS(準天頂衛星システム)が完備されれば、24時間の自動運転が可能になるそうだ。
「将来的には、野菜の収穫まで自動化したいと考えています」と野口先生。種を播いた場所を正確に記憶した小型のロボットが、ピンポイントで肥料を施し、除草し、成熟したものから収穫する。
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「無人運転が実現して安定した収入が得られるようになれば、農業人口がグンと増えるのではないでしょうか。昼間は小説を書いたりゴルフをしたりして、寝ている間にロボットに畑を耕してもらうこともできるわけですしね」。池井戸さんが農家になる日が来る?
この日は生憎の雨で、準備していただいていたロボットのデモンストレーションはかなわなかったが、多様な農業ロボットが待機する倉庫を案内いただいた。多くの人に恵みをもたらす役目を担ったロボットたちが、なんとも頼もしく見えた。

北の大地で数々の名馬を生み出してきた競馬界のトップ組織『ノーザンファーム』もまた、世界を視野に入れた強い馬を育てるために、日々研究を重ねている。
「血統、調教、施設、馬を管理する人材……、何かひとつ欠けていても心身ともに強い馬は育ちません」と『ノーザンファーム空港牧場』の場長を務める菅谷清史さんは言う。
北海道には『ノーザンファーム』の生産馬を調教する施設が2箇所ある。そのうちのひとつがここ『ノーザンファーム空港牧場』だ。さらにデビューを果たした競走馬たちの英気を養う牧場を滋賀県と福島県に構える。
「北海道と本州の両方に拠点を置くことで、『ノーザンファーム』は馬の最高のコンディション作りに成功しています」

今回特別に、馬を鍛えあげる『ノーザンファーム空港牧場』の特別調教施設を見せていただいた。9年前に完成した、総延長約900メートルの全天候型坂路コースだ。雪が降り積もる冬でも、坂道を駆け上がるコースで若い馬たちの走力をアップさせることができる。現在の中央競馬では新馬戦(デビュー戦)が6月から始まるため、この全天候型坂路コースがさらに『ノーザンファーム』の強味となっている。
「場長も馬券を買えるなら、さぞかし競馬も強いんでしょう?」 池井戸さんのやんちゃな質問に、「それが全然当たらないんです(笑)。うちの馬を贔屓目に見てしまうせいでしょうか」と正直に答える菅谷さん。
場長の予想も当たらない。だから競馬は人々を夢中にさせるのかもしれない。

Text by Eri Magara
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このサイロ、只者ではないのだ!
札幌市豊平区の北海道農業専門学校『八紘学園』にあるサイロは、シチューのCMや、黒澤明監督の映画「白痴」のロケ地として使われている。明治後期に建てられ、昭和18年頃に改築されたと伝えられている。札幌で切り出された軟石を積み上げた躯体に、赤いトタン屋根。そのルックスの良さもさることながら、実はこのサイロこそ北海道のフロンティア精神のシンボルでもあるのだ。
このサイロを作った吉田善太郎は、明治4年に10歳で北海道に渡った入植者。木炭を製造していたが、灌漑用水路を作り水田耕作を普及させ、その後、吉田牧場を開設して牧畜業を営む。その際に作ったのがこのサイロだ。息子をアメリカに酪農留学させ、日本で初めてホルスタイン牛を輸入する。
そして、善太郎の孫の善哉こそ、『ノーザンファーム』(社台ファーム早来)を作った『社台ファーム』の創始者なのだ。

ノーザンホースパーク

競走馬を育成する『ノーザンファーム空港牧場』に隣接する観光牧場。数多くの引退した名馬が余生を過ごしている。毎年7月に行なわれる日本最大級の競走馬のセリ市場、セレクトセールの会場でもある。園内のガーデンレストラン「THE KITCHEN K's Garden」で美味しいランチをいただいた。

住所:〒059-1361 北海道苫小牧市美沢114-7
電話:0144-58-2116


ノーザンホースパーク 公式サイト

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Art Direction : Hiroyuki Aoki (Mag) Photograph : Kiyoshi Tanaka Styling : Takahisa Igarashi Edit : Mitsuhide Sako , Eri Magara Produce : Teruhiro Yamamoto ( AERA STYLE MAGAZINE )