「日本の産業革命の原点」ペリー提督率いる極東艦隊の来航に慌てた日本は、超特急で産業革命を成し遂げた。日本と西洋を結ぶ窓口だった長崎には、その歴史的な遺産が数多く残されている。世界文化遺産に登録された遺産を訪ねた。
2015年7月、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」が世界文化遺産に登録された。幕末から明治期にかけての、約50年という短期間で産業国家としての地位を確立し、後に日本を経済大国へと押し上げる原動力となった産業遺産の建造物の価値が認められたのだ。
長崎に重要な資産が数多く残っているのは、当時、日本と西洋を結ぶ窓口になっていた地域だったため。市内にある構成資産のうち、特に『三菱長崎造船所』には、第三船渠、旧木型場(現在は史料館として使われている)、ジャイアント・カンチレバークレーン、占勝閣と、四つもの施設が指定されている。
【北海道編】"青年よ、大志を抱け"はこちら

明治38年に完成したここ第三船渠は、今もなお現役で稼働中だ。船舶の大型化に伴い3度の拡張工事がされ、建造当時から残っているのは、床の敷石と、英国シーメンス社製の排水ポンプだそうだ。
「船で塞いでいるんだ、やっとわかった!」 池井戸さんが驚いたのは、訪れた際に第三船渠の中で修理されていたものが船渠の扉で、船と同じ原理のものだと説明を受けた時。船渠内で船の建造や修理を行う際はポンプで中の海水を排出するが、できたものを外に出す際には、海水を入れると扉が船のように浮き、外せるしくみになっているのだ。

「ものづくりの原点を見ました。実際にここで働いている方に施設を案内していただいたのですが、汗水流して目に見えるものを作る仕事はほんとうにいいなと思いました。東京で目に見えないものを相手にして闘う仕事に比べると、面白さや達成感がまったく違うでしょうね」と池井戸さん。
第2次大戦では同じ長崎に原爆が落とされ、敗戦国となった日本。そこからの復興も、そしてこの明治期の近代産業化も、西洋諸国による植民地化や経済支援によらず、自らの手で成し遂げた。産業遺産からは、そんな当時の日本人の情熱や活気を感じ取ることができる。

そして、もうひとつの世界文化遺産が『旧グラバー住宅』だ。イギリスの技術を日本にもたらした、スコットランド出身のトーマス・B・グラバーの住宅。『大浦天主堂』を建てた棟梁が手がけたとされる現存する日本最古の木造洋風建築。国指定重要文化財にもなっている。
開港後間もない長崎で「グラバー商会」を設立したグラバーは、産業革命遺産の構成資産になっている小菅修船場や高島炭坑の建設に協力し、後に三菱の経営にもアドバイスを与え、当時の日本の主要産業の近代化に貢献した。
池井戸さんは、グラバー商会の経営規模が気になったようだ。
「武器を売るなどして倒幕派の志士を陰で応援したグラバーですが、その経営規模を、今回の長崎の旅で出会った方々に尋ねてみたのですが結局わかりませんでした。ますます興味が湧いたので、東京に戻ってグラバーに縁のある知人に聞いてみようと思います」

Text by Eri Magara
池井戸潤のエッセイはこちら

夜景もいいけど夕景もね
香港、モナコ、そしてここ稲佐山が、「世界新三大夜景」のひとつに選ばれたそう。ほんとかな?……失礼ながら少々疑心暗鬼で登頂。ところが、見れば納得の素晴らしさ!!

稲佐山の夜景の何が感動的と言えば、長崎港と市街地が作り出すキラめく夜景だけではなく、360度の絶景が堪能できるオプションの力強さ。遠くは雲仙岳から、高島、伊王島の島影が夕刻の赤く染まる空をバックに浮かぶ景色が、ゆっくりと夜の帳に沈んでいく様はいとをかし。

稲佐山といえば、市街地のちょうど中心部に位置する長崎のランドマーク的存在。長崎市内を散策している時に方向感覚を失ったら、顔を上げて稲佐山を探してみるといいかもしれない。スマホのグーグルマップを立ち上げるよりも、ね。

グラバー園

グラバー園には、『旧グラバー住宅』をはじめ、『旧リンガー住宅』『旧オルト住宅』など、元々この場所に建っていた居留地外国人住宅の敷地内に、長崎市内に点在していた6つの明治期の洋風建築が移築復元されている。池井戸さんが立ち寄ってカステラをいただいた『旧自由亭』は、日本人料理人による初めての西洋料理レストラン「自由亭」を移築した建物。長崎港や稲佐山など、偉人たちが魅せられた絶景が広がるビュースポットでもある。

住所:〒850-0931 長崎県長崎市南山手町8-1
電話:095-822-8223


グラバー園 公式サイト


旧木型場

1898年に鋳物製品の鋳型を製造するための木型製作工場として建てられた、長崎造船所に現存する最も古い建物。現在は三菱重工業長崎造船所の史料館として公開されており(完全予約制)、長崎造船所の歴史が紹介されている。日本最古の工作機械や日本初の国産陸用蒸気タービンなどが展示され、西洋の技術と日本の職人技が融合し、めざましい速さで産業革命が進んだことがわかる。

住所:〒850-8610 長崎県長崎市飽の浦町1-1
電話:095-828-4134


旧木型場 公式サイト

Audi TT
今回で3代目となる新型Audi TTは、先代モデルの美意識を継ぎながら、より本格的なスポーツカーへと進化している。Audi史上初搭載の最先端テクノロジー、Audiバーチャルコックピットを搭載。
Audi TT の詳細はこちら

Art Direction : Hiroyuki Aoki (Mag) Photograph : Masaya Adachi Styling : Takahisa Igarashi Edit : Mitsuhide Sako , Eri Magara Produce : Teruhiro Yamamoto ( AERA STYLE MAGAZINE )