「きょうゴルフができるという幸せ」ゴルフができるということは、天からの贈り物に近い。まずまずの体調で、迫ってくる仕事や家庭の心配もひとまずはなく、球を打ち、カップに沈めることだけを考えていられる。そんな日に、気の合う仲間と一緒に秋晴れの一日を楽しめたら、それは間違いなく幸せな一日だ。
「ぼかぁ、幸せだなあ」
と、池井戸さんは言わないが、顔には書いてある。
新刊『下町ロケット2 ガウディ計画』の原稿を完全に仕上げて、次の作品の構想を頭のなかで練るという作家にとって至福の期間だ。
「こうしたら楽しいんじゃないか、ああしたらもっと面白くなるんじゃないかと考えていると、わくわくします。そんなことを考えているときは、いまも作家になって良かったと思いますね」
脱稿前の、雨雲さえ呼び寄せる集中した気配は消え、長崎市街からコースに向かう車の中でもスイング改造についての話がはずむ。年に何度かの完全な「オフ」だ。
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この日訪れたのは、大村湾に面したパサージュ琴海アイランドゴルフクラブだった。海越えのホールで世界的に有名なペブルビーチ・ゴルフリンクスに比べられるのもうなずけるほど、入り組んだ美しい湾の景観を生かし、戦略的なコースレイアウトを作り上げている。
パサージュ琴海の名物ホールは3番、海越えのパー3だ。軽い打ち下ろしで左に曲げるとどこまでも海が広がる。
「やっぱりきれいだなあ」
池井戸さんは二度目の訪問だった。
大村湾の水面は鏡のように青い空を映す。

池井戸さんが打ち出した球はフックがやや強くなりグリーン左側を下ったところにあるラフに沈んだ。
グリーンエッジまでは約20ヤード、エッジからピンへは下りで10ヤードほど。パーを狙うには厳しい位置だ。
池井戸さんの通常のアプローチはピッチエンドラン。低く打ち出した球にスピンをかけて寄せていく。しかし、グリーン面は下っていて、その技は使えない。
ざさっと草をきる音に続き、ふわり、とボールが浮いた。見事なロブショットだった。
ボールはピン手前5ヤードに着地し、1ピンの距離に止まった。ショートパットが得意な池井戸さんは、これを楽々と沈めてパーとした。
「粘る洋芝のアプローチでてこずったときに、ちょっとロブ気味に打っていたのが役立ちました。うまく寄りましたね」

池のすぐ先にグリーンがある8番のパー3では、ティーショットをピンにからめ、楽々バーディーだった。小説が「オフ」の時の池井戸さんのゴルフは手がつけられない。
「どのコースにもう一度行きたいですかと聞かれると、やっぱりこのコースの名前を挙げちゃいますね。海沿いのコースは風が強い所が多いけど、内海は風が穏やか。荒々しく砕ける波が好きという人もいるけど、ぼくは穏やかな海がいいな」
楽々と80台でまとめたあとは、空に張り出すように作られたレストランでビールを一杯。三方がガラスで、海がすぐそばに見える。
「ここはゴルフ好きの大人にとって、隠れ家のようなコースですね。次の『オフ』ができたら、また来ようかな」

Text by Osamu Kato

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リゾートゴルフに必要な条件は?
泊まりがけで出かけるリゾートゴルフには何が必要だろうか?ラウンド後にアプローチとパッティングの特訓ができる練習場が必要というアスリート派もいれば、ぬるめの温泉と地酒が豊富な居酒屋だけで十分という古典的オジサン派もいる。
パサージュ琴海は「長崎リゾートアイランド」という名称がついているように、ゴルフクラブだけでなく、結婚式もできるチャペル付きのホテルやプール・スパ、テニスコート、パターゴルフもある。なかでも大村湾に面した立地を生かしたプライベートビーチは美しく、砂浜も素晴らしい。
池井戸さんも「ここで長い休みを取ってもいいなあ」と話す。「どこでも小説が書けるタイプの作家がうらやましいと思うのは、こういう時ですね。ぼくは仕事場以外で執筆しないけれど、ゴルフをして、海を見ながら仕事ができたら最高ですね」

パサージュ琴海アイランドゴルフクラブ

プロゴルファー藤井義将の設計で1992年にオープン。大村湾に面した地形を生かし、美しくも戦略的なコースになっている。2015年には日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯が開かれた。ホテルやテニスコート、プライベートビーチなども併設している。

住所:〒851-3211 長崎県長崎市琴海戸根原町171
電話:095-884-3990

パサージュ琴海アイランドゴルフクラブ 公式サイト

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