林 今日は、農畜産物の価値向上や、生産量・販路の拡大のために、全国各地のJA(農業協同組合)が行っている取り組みを紹介します。望月さん、「6次産業化」のことは知っていますか。
望月 はい。農作物を育て(第一次産業)、加工し(第二次産業)、販売する(第三次産業)を一体的に行い、新たな付加価値を生み出すことです。
林 すばらしい。消費者のニーズに合わせながら、より良い商品を作って買ってもらおう、それで生産者の所得を向上させ、加工や販売の点で新たな雇用を確保していこうということですね。簡単にまとめると右の図の通りです。和歌山県のJA紀南(田辺市)では、特産品の南高梅や、柑橘類をドライフルーツにして販売しています。
望月 ドライフルーツ。私もよく買って食べています。
林 まさに、若者や女性をターゲットにした商品です。ドライフルーツは食物繊維も豊富で、今、需要が拡大しています。JA紀南では5年前から準備を進めていました。これまでは、味に問題がなくても、傷ついたり大きさが規格外だったりした柑橘類などは、ジュースなどの加工用として安価に買い取られていましたが、JAではできるだけ生産者に有利な価格で仕入れて、付加価値のつく商品にして、売り出しています。
望月 各地で、このような「特産品」が増えていくと考えると、なんだか楽しみです。
林 個々の農家が、消費者のニーズをつかみ、それに合わせて農畜産物を加工し、販路を拡大していくのはとても大変ですが、そこはみんなの力を合わせて取り組んでいくこと。地域の産業を生み出すことにもなるこのような動き、応援していきたいですね。
蒸気で炊飯するため、お米の表面が傷つくことなく食味がよくツヤのあるご飯が炊きあがる。
大型の蒸気炊飯設備では、1時間最大約600キロの炊飯が可能。
高い衛生・安全基準で品質管理にも注意を払っている。
林 次に、パールライス宮城の炊飯事業を紹介しましょう。
望月 え、JAがお米を炊いてくれるんですか?
林 精米したお米そのものでなく、のり巻きやおむすびなど付加価値の高い「ごはん商品」として消費者に届ける取り組みのことです。販売量の拡大や地産地消にもつながるので、農家にとってもメリットが少なくありません。
望月 たしかに便利ですよね。私もスーパーでお弁当やおむすびをよく買います。
林 共働き家庭の増加などを背景に、外食や手軽な「中食」の需要は高まっています。パールライス宮城では、自慢のおいしいお米をよりおいしく手軽に食べてほしいと、2014年に新たな炊飯センターの稼働を開始しました。お米のプロが精米から炊飯まで一貫して行うので、味はもとより品質管理の面でも安心感があると好評のようです。
望月 工場で一気にお米を炊けば効率的ですよね。それにお米って、少し炊くよりたくさん炊いたほうがおいしくなりそうなイメージがあります。
林 忙しい現代では、自分でお米を炊くのは面倒だと感じる人が少なくないようです。それがお米離れの一因だとしたら残念ですよね。お弁当などで手軽に食べる機会が増えれば、地元のお米のおいしさを再確認することにもなるでしょう。地域のイメージアップや活力アップにもつながりそうです。
蒸気で炊飯するため、お米の表面が傷つくことなく食味がよくツヤのあるご飯が炊きあがる。大型の蒸気炊飯設備では、1時間最大約600キロの炊飯が可能。高い衛生・安全基準で品質管理にも注意を払っている。