望月 最近は産地直送の野菜や果物が人気ですね。近所の道の駅では、週末になると産直コーナーがいつもにぎわっています。
林 地元の農産物で、生産者の顔も見えるという安心感が人気の理由でしょう。J Aおちいまばり(愛媛県)の「さいさいきて屋」というJ Aファーマーズマーケットの場合、年間の来店者数が100万人を超えるそうです。今治市の人口が約16万人ですから、これには驚きますね。毎日午後2時ごろには、1,800平米の売り場を埋め尽くす商品の多くが売り切れて棚には空きが目立つそうですから、そのにぎわいぶりがうかがえます。
望月 そんなにたくさん地元産をそろえられるということは、今治にはきっと農家が多いんでしょうね。
林 それが逆だそうです。さいさいきて屋がスタートした2000年ごろ、今治でも農業人口の減少や担い手の高齢化による生産力の低下が問題になっていました。そのことに危機感を抱いたJAでは、市場に出せない規格外品でもいい、ごくわずかな量でもいいので出せるものを出してほしいと農家に声をかけてまわったそうです。小規模でも意欲のある農家の力を生かして、商品の充実や売り場の活力づくりにつなげているんですね。
望月 驚きました。同じように担い手不足に悩む地域にとってはヒントになることも多そうです。
林 納品する品目や量、価格は原則として会員(農家)が自分で決めるので、もっと良いものを、他では出せないものをという競争意識が自然に生まれます。会員それぞれの意欲と技術の向上につながり、規模を拡大して兼業から専業農家になった例もあるそうです。
望月 それは消費者にとってもうれしいですね。うちの近所にこういうお店があったら毎週でも行きたいです。
林 さいさいきて屋は単なる小売店ではなく、あくまで農業振興のための施設という位置付けだそうです。J Aファーマーズマーケットに併設のカフェや食堂では地元の農産物をふんだんに使ったメニューを提供していますし、営農指導の窓口や新規就農者を育てる体験農園もあります。残念ながらまだ就農者は増えていないそうですが、きっとこれまでと同様アイデアと実行力で乗り越えてくれるのではないかと思います。大いに期待したいですね。
1品あたりは少量だが品数が多いことが特徴
温かみのある手書きポップで農産物の魅力を伝える
カフェで食べた果物を改めて購入して帰る人も