林 早いもので、もうすぐ4月。新入学・入園の季節ですね。
望月 うちの近所のご夫婦は、この春から奥さんが復職するために子どもの保育園を探したら、なかなか見つからなくて困ったそうです。子どもを育てるには、周囲の環境も重要なんですね。
林 だからこそ、子どもは地域で育てるという意識が大切だと思います。実は兵庫県には、約50年前からJAが運営する保育園があるんです。
望月 JAが保育園?JAって本当にいろいろな事業を運営しているんですね。しかも50年前からなんて驚きです。
林 JA加古川南の「くみあい保育園」が設立されたのは1968年。兼業農家が増え始めた時代に、これからの新しい農家の生き方を応援しようと始まった取り組みです。最近は保護者に占める農家の割合は少なくなったものの、少子化の現在も園児数はほぼ一定しているそうです。
望月 JAならではの特色はあるんですか?
林 給食のお米は地元産のヒノヒカリ、野菜類も地元産が中心です。またサツマイモ掘りやお花摘み体験など、親子で土にふれる機会も多くあります。こうした取り組みを通して、地元の農業に親しみを感じる「応援団」を増やしていきたいという思いもあるそうです。
望月 いいですね、地元のブランド米がいつも食べられるなんて、園児がうらやましいです。
林 茨城県のJA北つくばには、子育て中の地域の人たちとつながり、育児不安の解消をはかることを目的とした「はだしっ子」という子育て支援センターがあります。ここは原則火曜と木曜日に開放され、訪れた親子が保育士と一緒に工作や折り紙、絵本などを楽しむことができます。対象は未就学児とその保護者だけですが、小学生まで広げてほしい、実施回数を増やしてほしいという要望が絶えず寄せられる、地域の役に立っている取り組みなのだそうです。
望月 そのセンターでも、JAならではのイベントなどあるんですか。
林 そうですね、くみあい保育園と同様、イモ掘りやブルーベリー摘みといった食農教育には特に力を入れています。また、もうひとつの特色は、保護者のサポートにも熱心なこと。JA厚生連との連携で、医療の専門家を招いた育児相談会を開くこともあるそうです。
望月 子どもたちの未来は地域の未来ですから、みんなで支えていくことが大切ですね。
林 行政とは違う自由さがある一方で、さまざまな専門家の力を借りて個人レベルではできない取り組みもできる。人と人との「助け合い」である協同組合の可能性をあらためて感じます。