2020年度 新たな大学入試に挑むすべての親子に
大学入試改革により、2020年度からは大学入試センター試験に代わって「大学入学共通テスト」が実施され、試験内容も大きく変わる予定です。国公立大学や私立大学の個別試験にも、変化の兆しがみられます。

新たに始まる大学入試で合格するカギは、正しい情報を得ることです。さまざまな憶測に振り回されることなく、確かな情報をもとに合格への第一歩を踏み出してください。
INTERVIEW

下松淳子さん

学校法人河合塾
教育イノベーション本部
教育企画開発部部長

Vol.02

│大学入学共通テストのポイント│
試行調査から見える、
大学入学共通テストの傾向と対策

一見しただけではどの教科かわからない問題も

 まずは下の二つのグラフを見てください。これは、2020年度から実施される大学入学共通テストに先立ち、2017年11月の第1回試行調査で出された問題です。どの教科の問題かわかりますか?

※平成29年11月大学入試センター
「大学入学共通テスト 平成29年度試行調査問題」から

 Aの観光客の消費額に関するグラフは、地名が書かれていることもあり、現代社会や地理の問題のように思えます。Bのグラフは血中濃度の変化を表しているので、化学や生物の問題のようですね。
 実際はどうだったのでしょうか。実はどちらのグラフも数学で出題されたものです。このように、図表やグラフなどをパッと見ただけではどの教科かわからないような問題が見受けられました。
 これは、大学入学共通テストで問われる「思考力・判断力・表現力」を測るために出題されたものです。第1回試行調査では複数の教科で共通して、このように「情報を読み取る力」が問われました。
 特に目立ったのは、複数の資料を同時に読み解く問題です。現代社会では、六つの資料を読んで答える問題が出されました(下記「複数の資料を読み解く問題例」をクリックすると詳細が確認できます)。ここでは、成年の年齢を20歳から18歳に引き下げることに「反対」の立場をとるという条件設定があり、すべての資料を読み、事実を整理し、反対の立場をとった場合の解答を導き出さなければなりません。思考のプロセスが何度も繰り返される問題になっています。

複数の資料を読み解く問題例

現代社会〈第4問〉
問4 生徒たちが作成し,先生が確認・添削して完成させた次の「問題」に答えよ。

 現在,日本では,民法の成年年齢の引下げが注目されている。そこで,この問題について考える上で参考になりそうな資料を集めた。その結果,引下げに賛成の理由は,若い人に将来の社会を担ってもらうための期待や,多くの諸外国の成年年齢が18歳以下であるということなどが分かった。また,反対の立場についても調べ,その考え方を分かりやすく示すために,次のページ以降の【資料1】〜【資料6】のうち二つを使って,下の図を作った。
 図中のXには,【資料1】〜【資料3】のうちのいずれかから読み取った内容が,また,Yには,【資料4】〜【資料6】のうちのいずれかから読み取った内容が入る。
 各空欄に入る内容が読み取れる資料の組合せとして最も適当なものを,下の①〜⑥のうちから一つ選べ。
※平成29年11月大学入試センター
「大学入学共通テスト 平成29年度試行調査問題」から

 国語では、生徒たちが日常で経験しうる活動が題材になりました。問題文に取り上げられたのは、生徒会の部活動規約と生徒たちの会話文です。規約を読み解くだけではなく、それを元にした会話の流れを確認したうえで答えを導き出すもので、言語を運用する力がベースとなり、複数の資料や文章を関連づけて記述させる力が問われました。学校生活を題材にした問題は、今後も扱われるのではないかと思います。
 このように、知識そのものを問う問題よりも、「知識をどう活用できるか」を問う問題が増えています。実生活に即した問題が多いのも特徴的で、身につけた知識を日常で活用する力がさまざまな角度から問われることになるといえるでしょう。
 また、第1回の試行調査では、問題文が長いという特徴もみられました。特に数学Ⅰ・数学Aは、センター試験に比べて問題のページ数が2倍になり、図表や文章から読み解く情報量が増えました。理系の学生でも文章を読解する力は養ってほしい、文系の学生にもグラフや図表を読み解く力を身につけてほしい。そんなメッセージが読み取れます。

出題傾向が変わっても
あわてる必要はない

 試行調査の問題を見てみると、難易度が上がったと感じる人も多いと思います。実際、センター試験の平均点が6割くらいといわれているのに対して、試行調査では正答率が5割に満たない問題が数多く見受けられました。
 今回の試行調査で難易度が上がったと感じられる理由の一つに、新しい出題形式に慣れていなかったことが挙げられます。マークシート問題では、選択肢の中に正解がないものや、正解が複数ある問題も出されました。「正しいものをすべて選べ」「該当するものがない場合は⓪を選べ」「選択肢は二回以上使ってもかまわない」など、これまでとは違う形で思考力が問われる問題において軒並み正答率が低くなっています。

科 目問 題解答の選択パターン正答率
数学Ⅰ・
数学A
第5問(5)すべて選べ0.8%
現代社会第4問 問1すべて選べ4.8%
物 理B問4すべて選べ、ただし該当するものがない場合は⓪を選べ12.6%
英 語第4問 問21選択肢は二回以上使ってもかまわない3.1%

解答の選択パターンが増えた問題例

英語(筆記[リーディング])〈第2問〉
問4 Based on the reviews, which of the following are facts, not personal opinions?
You may choose more than one option.

① Annie’s Kitchen offers dishes from many countries.
② Johnny’s Hutt is less crowded than Shiro’s Ramen.
③ Johnny’s Hutt serves some fish dishes.
④ The chef at Johnny’s Hutt is good at his job.
⑤ The chef ’s meal-of-the-day is the best at Annie’s Kitchen.
⑥ The menu at Annie’s Kitchen is wonderful.
※平成29年11月大学入試センター
「大学入学共通テスト 平成29年度試行調査問題」から
数学Ⅰ・数学A〈第5問〉
(5)n=56のときの方盤について, 正しいものを, 次の⓪〜⑤のうちからすべて選べ

⓪ 上から5行目には0がある。
① 上から6行目には0がある。
② 上から9行目には1がある。
③ 上から10行目には1がある。
④ 上から15行目には7がある。
⑤ 上から21行目には7がある。
※平成29年11月大学入試センター
「大学入学共通テスト 平成29年度試行調査問題」から

 正答率が低くなったとはいえ、ベースとなる知識をしっかり身につけ、その知識を活用して自分なりの考えをまとめることができれば心配いりません。具体的な対策のポイントをみていきましょう。

日頃から考える癖をつける
 たとえば、教科書で扱われている題材について、ここでは何が説明されているのか、そこから何がいえるのか、自分はそれに反対か賛成か、それはなぜか、といった問題意識を持って考える癖をつけることが大切です。普段からトレーニングを積んでおけば、本番であわてなくなります。

学んだことを振り返る
 今日は何を学んだか、何が大切だったか、自分ができなかったことはどこかなど、一日の学びを振り返るようにしましょう。さらに、友達と意見を交換したり先生に話したりして、理解したことを自分なりに表現することで学びは深まり、「わかったつもり」が「わかる」に変わります。

志望理由を明確にする
 なぜその大学に行きたいのか、何を学びたいのかを明確にしておくこと。大学に入ることがゴールではなく、入った後に何がしたいかのビジョンを持つことが大切です。入試は大学からのメッセージです。大学で学ぶうえで必ず必要となってくる力が入試では問われます。しっかりビジョンを持つことができれば、立てるべき対策もはっきりしてくると思います。

 大学入学共通テストでは、第1回試行調査の結果を踏まえて受験生が解答しやすい工夫がされる問題もあると思いますが、知識を活用して考える日頃の積み重ねがこれまで以上に大切になることは間違いありません。出題傾向が変わっても学ぶべきことは今までと同じなので、学習の仕方を根底から変える必要はないことを覚えておくといいでしょう。

英語は「リーディング」「リスニング」の配点が均等に

 大学入学共通テストでは各教科とも出題傾向が変わりますが、なかでも特に試験実施の形態が大きく変わるのが英語です。
 まず、共通テストでは「読む」「聞く」の2技能が評価され、認定された民間の資格・検定試験では「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能が総合的に評価されます。共通テストの「読む」「聞く」はそれぞれ「筆記[リーディング]」「リスニング」として試験が実施されます。そして、2018年に実施される第2回試行調査では、今までリーディングに比重が置かれていた配点が、リーディングとリスニングで均等になる予定です。これは非常に大きな変化です。
 背景には、より実践的な英語力を育成・評価するという方針があります。ほとんどの検定試験や資格試験では4技能が均等に評価されているのに対して、大学入試ではリーディング中心に問われる傾向がありました。4技能を総合的に問うことで共通テストの配点も見直されたのだと思います。
 出題傾向にも変化がみられます。第1回試行調査のリーディング試験ではセンター試験で問われていた発音やアクセントの出題がなくなり、設問自体も英語になりました。
 リスニングの試験では、読み上げが1回の問題と2回の問題が混在するパターンも実施されました。1回しか読み上げられないのは実際の会話を想定したものと考えられます。共通テストでは複数の情報を読み取りながら解答する必要があるため、読み上げ回数は出題意図によって調整されるのではないかと思います。また、アメリカ英語以外の読み上げもみられ、これらの傾向は今後も続くでしょう。

 実際に英語で会話する場では、技能別に問われることはありません。共通テストが実践的な英語力を測るものへ変化していることから、4技能を統合した力を身につけることが大切です。たとえば、普通の会話と同じスピードの英文を聞き、その発音をまね(シャドーイング)してみる。話す力を身につけることにつながるので、書かれた文章を音読するより実践的かつ効果的です。
 4技能の問われ方や、民間の資格・検定試験については次回以降詳しく紹介しますが(10月・11月公開予定)、民間の資格・検定試験を活用して4技能がどこまで身についているのか、自分の位置を知ることも大切です。なかでもケンブリッジ英語検定試験は、日本の教科書で使われている単語のカバー率(試験の全英文の中で教科書で使われている単語がどれくらいの割合かを示す)が約95%と非常に高く、4技能が国際標準でバランスよく測られるので、日頃の学習の成果を知るうえでも、とても有益だと思います。

自分の伸びしろを信じて

 河合塾が中学1年生から高校2年生の子どもを持つ保護者を対象に行ったアンケートでは、教育現場に期待することとして「英語力」と「思考力・判断力・表現力」の強化が上位にあがりました。まさに大学入学共通テストが大きく変わるポイントに対して、多くの保護者の方が悩んでいることがわかります。

Q大学入試改革に向けて、教育現場に期待することは何ですか。

[対象]全国の中学1年生から高校2年生の生徒を持つ保護者
(n=500)

 今回の大学入試改革で育成・評価されようとしている力を理解するとき、キーワードとなるのは「活用」です。「英語力」と「思考力・判断力・表現力」を強化するうえでも、「学んだことをどう実生活で活用するか」という視点を持つと良いでしょう。
 自分の伸びしろを信じてあげられるのは、誰よりも自分自身であってほしいと思います。受験を通して身につけた力は、将来絶対に自分に返ってきます。日々の蓄積こそゴールへの近道であることを信じて、夢を諦めずにやり遂げてください。(談)

PROFILE
くだまつ・あつこ/河合塾広島校、大阪の教務部にて生徒指導を行い、教務本部 教育教材開発部では英語科、数学科チーフとして全国カリキュラム策定や教材開発を推進。2016年より現職。英語4技能を中心としたグローバル教育、アクティブラーニング、学力スタンダード、「ひらく日本の大学」などの大学調査に取り組んでいる。
※掲載内容は取材・作成当時のものです。
  • 【資料1】社会への貢献意識
    (出典:内閣府「社会意識に関する世論調査」平成29年1月調査により作成)
  • 【資料2】日本の人口ピラミッド(単位:千人)
    (出典:総務省統計局「平成 27 年国勢調査結果」により作成)
  • 【資料3】今の18歳,19歳にあてはまること(複数回答可)
    (出典:内閣府「民法の成年年齢に関する世論調査」平成 25 年 10 月調査により作成)
  • 【資料4】子どもが大人になるための条件(複数回答可)
    (出典:内閣府「民法の成年年齢に関する世論調査」平成 25 年 10 月調査により作成)
  • 【資料5】成年年齢と飲酒・喫煙年齢,選挙権年齢との関係の認知度
    (出典:内閣府「民法の成年年齢に関する世論調査」平成 25 年 10 月調査により作成)
  • 【資料6】少年法(抜粋)

INFORMATION

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