このページに掲載されている内容は、この発表より以前の情報ですのでご注意ください。
[関連記事]英語新試験制度24年度導入めざす 文科省1年間検討へ
英語4技能をバランスよく評価
守屋 前回は、2020年度から始まる大学入学共通テストの英語試験では、「読む」「聞く」ための力に、「書く」「話す」を含めた4技能が問われるという話をしました。「読む」「聞く」ための力は「筆記[リーディング]」「リスニング」として大学入学共通テストで実施されますが、「書く」「話す」ための力は民間の資格・検定試験が活用されます。
下松 なぜ民間の資格・検定試験が活用されるのかというと、英語4技能のうち特に「書く」「話す」という力をきちんと測るために、適しているのはどのような方法かを検証し、役割を決めた結果だと思います。大学入学共通テストのような大規模な試験で「書く」「話す」力を測定するのは難しいということもありますが。ですから、2020年度からは「大学入学共通テスト」の英語試験と、外部の「資格・検定試験」を受ける必要があります。
守屋 民間の資格・検定試験は、それぞれ別の目的を持ってつくられているので、評価基準も異なります。そこで、語学のコミュニケーション能力を評価するものさしとして、国際指標CEFRが取り入れられることになるんですよね。
下松 そうです。CEFRは語学の熟練度を「A1」から「C2」までの6段階に分けて評価する指標で、入試ではその段階別評価が使われます(グラフ参照)。そして、資格・検定試験のスコアとCEFRの評価が大学入試センターに集約され、大学側に提供される仕組み「大学入試英語成績提供システム」が新たに設けられます。
各資格・検定試験とCEFRとの対照表
文部科学省(2018年3月)

※[ ]内の数値は、各試験におけるCEFRとの対象関係として測定できる能力の範囲の上限と下限。
※表中の数値は、各資格・検定試験の定める試験結果のスコアを示す。
守屋 いくつか注意点もありますね。
下松 はい。指定された資格・検定試験の中からどの試験を受けるかは自由に選べますが、受検期間・回数が限られているので注意が必要です。高校3年生の4月から12月の間に受けた分しか対象になりません。しかも、回数も2回までという制限があります。
守屋 たとえば10回受けたうちの成績が良かった2回分を採用するというわけではなく、その2回の試験は、事前に決めておかなければいけないんですよね。
下松 そうなんです。ですから、実質的には高校3年生の4月から受験がスタートするといえるでしょう。資格・検定試験そのものは、高1・2生のうちから何回でも受けられるので、早めに準備をして慣れるのがいいと思います。
英語の外部試験
それぞれの特徴は?
守屋 どの試験を受けたらいいのかわからない、という人も多いでしょう。簡単にそれぞれの試験の特徴を紹介します。地域によっては、受検できる機会が少ないものもあるので、低学年のうちはまずは受けやすいものから挑戦してもいいと思います。
- 実用英語技能検定
- 認知度が高く、定着率も高い。語彙(ごい)に比重がおかれているが、学習指導要領との整合性が高く、受検しやすい。2級と準1級のレベルに開きがある。
- GTEC
- さまざまな英語試験の特徴が集約されたようなバランスの良さがある。問題ごとに時間制限があるので、時間配分の訓練が必要。
- IELTS
- アカデミックな英語運用能力を問われる。高得点が取れれば、海外の大学進学も視野に入れられるほど難易度が高い。
- TEAP
- CEFRとの整合性が高いので、自分がどの位置にいるのかわかりやすい。今後、大学の一般入試でも、TEAPと似た傾向の問題が出題される可能性が高い。
- TOEFL iBT
- 難易度が高い。大学の教養科目に関連した出題も多く、大学入学後に海外留学を考えている人は、その準備としても活用できる。
- ケンブリッジ英語検定
- 実生活を想定した問題が多く、写真やイラストも豊富。日常生活でいかに英語を活用できるかが問われる。CEFRの段階別評価に完全準拠して作成され、CEFRの全レベルに対応している。
4技能の学びに役立つ
「ケンブリッジ英語検定」
下松 目的にあわせて選ぶ方法もありますね。なかでもケンブリッジ英語検定は、大学入試改革がめざそうとしている方向との親和性が高いので、英語4技能を養うための日頃の学習にも役立つ試験です。さらに、何ができているのかを技能別にチェックしてくれるのも良い点です。全体スコアが目標に届かなかったとしても、「自分は意外とスピーキングの力があるんだな」というように「できた」ところが確認できます。本国イギリスから受検者に直接郵送される認定証には、「あなたには、もう一つ上の段階の力があります」といったことが示されることもあるので、モチベーションが上がりますよね。
守屋 「これができない」ではなく「これだけのことができる」という視点で評価し、「本当はもっと力があるんだよ」と後押ししてくれるのがケンブリッジ英語検定の魅力です。試験のためだけに英語を学ぶのではなく、その先の世界へと視野を広げ、将来的な展望を示してくれると思います。私は個人的にケンブリッジ英語検定のことを「英語力の健康診断」と呼んでいるのですが(笑)。

下松 ケンブリッジ英語検定はスピーキング試験が特徴的で、試験官2人に対して受検生2人で臨みます。受検生同士がお互いの自己紹介をしたり、イラストを見て会話をしたりするので、友達同士で話をする感覚ですよね。受検生からは「こんなに楽しい試験を受けたことがなかった」という声も聞かれました。
守屋 目の前の課題を一緒に解決しようとするので、ある種の達成感も生まれますしね。
下松 単に楽しかったという一過性のものではなく、「英語をもっと使えるようになりたい」「もっと勉強したくなった」というモチベーションの起爆剤になっている気がします。ある高校の先生から聞いた話では、「スピーキングのトレーニングをしてほしい」という声が生徒側から上がるという変化も見られたそうです。
48時間以内にCEFRの評価がわかる
リンガスキル
守屋 ケンブリッジ英語検定にもいくつかのレベル分けがありますが、自分がどのレベルから受けたらいいのかわからない場合は、まずケンブリッジ英語検定4技能CBT「リンガスキル」(以下、リンガスキル)から受ける方法もありますね。
下松 そうですね。リンガスキルは、オンラインテストなのでインターネット環境がある会場であればいつでも受けられます。また、一人ひとりの理解度に応じて受検者ごとに出題が異なるアダプティブ(コンピュータ適応型)テスト形式です。さらにライティングは自動採点なので、48時間以内に試験センターで結果が確認できるようになり、CEFRの段階別評価で自分の位置を迅速に知ることができます。大学入学共通テストに活用できる資格・検定試験ではないのですが、早い段階から何度か受けて、英語力がどれだけ伸びたかを確認するという使い方もできるでしょう。

守屋 そうやって自信をつけていけるといいですね。単語を知れば知るほど、伝えられることが増えていきます。文章が読めるようになればなるほど、知らなかった世界へ視野が広がります。自分の世界を広げる前向きなツールとして英語に取り組んでほしいと思います。それから、英語が苦手な保護者の方でも、英語を使おうとしている姿勢をお子さんに見せてあげてほしいですね。外国の人が道で困っていたら、親子で「大丈夫ですか」と声をかけてみる。そういう姿を通して、英語がコミュニケーションツールであるという実感を生むことができるようになってきます。
下松 これからは外国の人たちと一緒に学んだり、働いたりする機会が増えます。そのためには異文化理解が欠かせません。試験のために英語を学ぶのではなく、英語の学習を通して海外の文化を知り、自分が活躍できる世界を広げていってほしいです。ぜひ、そのような視点も持ちながら、英語に取り組んでみてください。
-
くだまつ・あつこ/河合塾広島校、大阪の教務部にて生徒指導を行い、教務本部 教育教材開発部では英語科、数学科チーフとして全国カリキュラム策定や教材開発を推進。2016年より現職。英語4技能を中心としたグローバル教育、アクティブラーニング、学力スタンダード、「ひらく日本の大学」などの大学調査に取り組んでいる。
-
もりや・ゆうま/一般入試のみでなく、英語重視型入試指導にも長けた人気講師。英語資格検定試験に関する教員向け研修も行う。一人ひとりの学習状況をふまえた質問対応や軽快な語り口の授業で生徒から高い信頼を得ており、現役生から高卒生まで幅広い志望・学力層の授業を担当している。