2020年度 新たな大学入試に挑むすべての親子に
大学入試改革により、2020年度からは大学入試センター試験に代わって「大学入学共通テスト」が実施され、試験内容も大きく変わる予定です。国公立大学や私立大学の個別試験にも、変化の兆しがみられます。

新たに始まる大学入試で合格するカギは、正しい情報を得ることです。さまざまな憶測に振り回されることなく、確かな情報をもとに合格への第一歩を踏み出してください。
SPECIAL TALK

福永就夫さん

学校法人河合塾
理事
進学教育事業本部長

杉澤誠記さん

株式会社朝日新聞出版
アエラムック編集部編集委員
『大学ランキング』前編集長

Vol.07

│今からできる新入試対策│
変わる時代に強い受験生とは

「どこの大学か」より
「何を学べるのか」で選ぶ

杉澤 ここ数年の大学の動きとして、新しい取り組みで独自のカラーを出すところが増えてきましたね。社会のニーズに沿った学部や学科を開設したり、外国人教員を積極的に採用したり、グループ学習ができるラーニング・コモンズを備えた図書館を新設したりと、個性が際立つようになってきました。さらに、2020年度(2021年1月)から始まる大学入試改革をチャンスと捉え、特色ある入試を取り入れる大学も増えています。結果として、「どこの大学に入るか」よりも、「何をどう学べるのか」という視点で大学を選ぶ方向へシフトしてきたように思います。
福永 そうですね。自分のやりたいことがはっきりしていて、そのための勉強ができる大学を選ぶ受験生が増えてきました。志望校を決める面談をしていると、「建物のリノベーションを学びたいから、この分野の第一人者がいるこの大学に入りたい」という生徒もいます。「あなたの学力からすると、この大学も狙えますよ」と言っても、絶対にその大学と決めているんですね。語学系志願者のなかには、少人数で学べる大学に行きたいと考える生徒も多くいます。
杉澤 偏差値や知名度を基準にした大学選びだけでは、変化の激しい時代にマッチしなくなってきたということですよね。文部科学省によって大学には、どういう力を身につけてきた人に入学してほしいかを公表することが義務付けられました。それはアドミッション・ポリシーと言い、大学のホームページなどに掲載されています。大学の受け入れ方針が最も明確に反映されるのが入学試験でしょう。たとえばお茶の水女子大学では、出された問題を図書館で調べて答える「図書館入試」を始めましたし、追手門学院大学では事前に大学が指定したプログラムに参加し、グループディスカッションや面接などで選考する「アサーティブ入試」を進めています。島根大学の「地域貢献人材育成入試」のように、地域活性化に意欲のある人を受け入れるケースもありますし、早稲田大学の政治経済学部では2020年度入試から「数学」を必須科目に加える決定をしました。

ユニークな入試を実施している大学

国際総合入試│北海道大学
国際的な大学入学資格「国際バカロレア資格」やアメリカの大学進学適性試験SATまたはACTのオフィシャルスコアを持っている人を対象に、人物(書類と面接など)、学力(国際バカロレア資格など)、語学力(TOEFLなど)の三つの観点から評価する。
図書館入試│お茶の水女子大学
AO入試(新フンボルト入試)の2次試験として実施される。プレゼミナールを受講した後、2日間にわたって実施。1日目は与えられた課題に対し、大学図書館で資料を探してリポートを作成。2日目はグループ討論と個別面談を行う。
総合教養入試│国際基督教大学(ICU)
短い講義を聴いた後、関連する論述などを読んで設問に解答する。文系・理系を超えた多角的な問題で、総合的な思考力を問う。
特色入試│京都大学
高校時代の幅広い学びや今後の目標を書類審査で評価するとともに、入学後に望ましい力を論文、面接などを組み合わせて評価する。
アサーティブ入試│追手門学院大学
「アサーティブ」とは、相手の意見に耳を傾けつつ自分の考えを主張できる態度のこと。あらかじめ指定された大学プログラムに参加した後、グループディスカッション、面接、学力テストなどを行う。
地域貢献人材育成入試│島根大学
島根県・鳥取県の高校を卒業し、地域の活性化に強い意欲のある高校生が対象。入試方法などは学部によって異なる。
飛び入学│千葉大学 他
飛び入学とは、特定の分野について特に優れた資質を持つ学生が、高校を卒業しなくても大学に入学できる制度。実施学部や試験内容については大学によって異なる。
[2019年度「飛び入学」入試の実施大学]
千葉大学、京都大学、東京藝術大学、会津大学、名城大学、エリザベト音楽大学、日本体育大学

福永 これまでも大学側は受け入れたい学生像を示してはきたのですが、大学の伝統を全面に出すなど、非常に抽象的でわかりにくいものでした。それがアドミッション・ポリシーとして具体的に示されれば、受験生は大学を選びやすくなりますし、そこで求められる能力を、受験生は一生懸命身につけようとします。単なる選抜のための試験ではなく、大学入試改革は受験生と大学を結ぶものという位置づけで考えることができるのではないでしょうか。
杉澤 そうですね。ちなみに、アドミッション・ポリシーの他に、ディプロマ・ポリシー(卒業認定・学位授与の方針)、カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)をセットに「三つのポリシー」として覚えておくとよいと思います。

高校や大学の教育現場では

福永 一方で、この動きに高校の教育現場がなかなか追いついていないという現状があります。学力の3要素として、「知識・技能」のほか「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協働性」がうたわれていますが、それをどう実践するかは各高校にゆだねられているからです。大学入試と高校との間に今まで以上の開きがあり、この溝をどう埋めるのか。私たち塾や予備校の役割は、まさにそこにあると考えています。つまり、今回の教育改革は、社会や産業界が必要とする人材育成という大人の視点から進められていますが、受験生の視点から考える必要があるのではないかと。考える力はあっても、ひとりよがりな意見では通用しません。他の人の意見を聞き、全体としてどうまとめるかという視点も必要です。これは訓練しないとなかなか身につくものではありません。
杉澤 先生が一方的に講義をする従来型の授業だけでは限界があり、生徒参加型のアクティブ・ラーニングを進める必要があると言えますね。

福永 おっしゃる通りです。もちろん、高校でも積極的に取り入れることになっていますが、河合塾では独自の研究を通してアクティブ・ラーニングの手法を確立し、すでに高校グリーンコースの授業に取り入れています。実はアクティブ・ラーニングは中高一貫校でも積極的に取り入れられていて、そこでの成績上位者は海外の大学をめざす動きが出始めています。海外の場合、TOEFL対策はもちろんですが、英語のエッセーで何を伝えられるかが重要になってきますから、専門的な訓練が必要です。河合塾でもいち早く海外大学をめざす人のための海外大進学コース「AGOS(アゴス)×K」を立ち上げ、受験生の幅広いニーズに応えるようにしています。
杉澤 世界の大学ランキングで、日本の大学は評価が下がりつつありますから、海外を視野に入れるのは自然の動きではないでしょうか。日本の大学でも、日本と海外、二つの大学の学位が取得できる「ダブルディグリープログラム」を取り入れるところが多くなってきました。
福永 グローバルな企業は、海外にも広く人脈を持つ人を求める傾向がありますし、今後もその傾向は強まると思います。
杉澤 こうした動きに危機感を持つ大学もあります。早稲田大学の田中愛治総長は、アメリカの大学がヨーロッパの伝統校に追いつくために40年かけてランキングを上げていったのを目の当たりにし、世界を視野に入れて早稲田のブランディングに取り組もうとしています。
福永 入試改革がめざす方向は、海外と同じ方向を向いています。ようやく日本の教育が、世界標準に追いつこうとしているといえるかもしれません。

目標が明確になれば、
一気に走り出せる

杉澤 こうした状況を踏まえて、受験を取り巻く環境がひと昔前とは劇的に変わったことを認識しておく必要があると思います。先にも触れましたが、有名大学に入ればそれで一生安泰かというと、もはやそうとも言えません。むしろ、あまり名前を知られていない大学でも、すばらしい環境のところはいくらでもあります。大学名で志望校を選ぶのではなく、学部や学科で大学を絞っていくという逆の発想が必要です。
福永 河合塾ではそれをクオリティランキングと呼び、大学の中身や国家試験の合格率などを受験生に提供して、志望校選びのサポートをしていきたいと思っています。そのために将来のキャリアアドバイスも含めてしっかりと大学選びを指導できる「河合塾カレッジカウンセラー制度」という資格を設け、全職員に試験を課しています。
杉澤 日々情報を入手しないといけませんから、受験生にとってはありがたいサポートですね。

福永 目標がはっきりすれば生徒たちは一気に走り出せます。親に「この大学に行きなさい」と言われて大学をめざしても、勉強は続かないし学力も伸びません。河合塾には、高校を中退したけれど大学に進学したい人を対象にした「河合塾COSMO(コスモ)」というコースがあるのですが、そこに通う生徒は中退したといっても勉強が嫌になったわけではないんですね。親に言われて進学校に入ったけれど、目標を見つけられず中退した、でも大学に行きたいという子どもたちなんです。生徒たちを見ていて思うのは、将来やりたいことが明確になり、自分の立ち位置をしっかり持てるようになった生徒は、生き生きと勉強をするようになるということです。つまり、本当に「やりたい」「やろう」と思ったときがスタート地点なのです。
杉澤 やりたいことが見つかると、モチベーションが湧きますからね。寝食を忘れて没頭できるくらい夢中になれるものを持った人は、たとえ関心が他に移ったとしても、主体的に学ぶ姿勢が身についているので同じように夢中になれるはずです。真剣になれるものを見つけるには、新しい世界で知見を広げてもいいですし、身近なところで「こんな大人になりたい」と思えるロールモデルを探すのもいいと思います。

福永 将来を見据えたサポートをするために保護者の方にお願いしたいのは、早い段階から社会一般の仕組みをお子さんに伝えてほしいということです。世間一般の常識的なことを日頃の会話で伝えることは大切です。たとえば、公務員といってもさまざまな職種があり、採用試験も分けられていることや、管理栄養士と栄養士の違いなど、世の中にどんな仕事があるのか、興味・関心を持つ機会を与えてほしいのです。総合的な知識のなかで、子どもたちは将来を選んでいきます。大学に合格するという目の前の目標をゴールにするのではなく、大学の先にある将来に目を向けてあげてください。高校生の皆さんは、世の中に関心を持ち、疑問に思うことがあったらそのままにせず、調べたり誰かに聞いたりして解決して、興味を広げるようにしてみましょう。将来のキャリアデザインを考えて、目標に向かって主体的に学び続けること。それが夢の実現や、自分が活躍できる世界を広げることに結びついていくのです。

PROFILE
  • ふくなが・なるお/河合塾において高校生・高卒生の指導、カリキュラム編成、教材・模試作成等に携わりながら、30年以上にわたって大学入試の変化を見つめ続けてきた。常に受験生側の視点に立ち、予備校の役割を大学と高校の「橋渡し役」と位置づけている。現在、河合塾の予備校事業の責任者として入試改革対応にあたっている。
  • すぎさわ・せいき/就職情報誌、女性ビジネス誌などの編集を手がけた後、「大学ランキング」や「AERA English」などの編集長を歴任。現在は「アエラ大学ムック」や「アエラ企業研究シリーズ」、ネットニュースの「AERA dot.」などの編集、執筆を担当している。
※掲載内容は取材・作成当時のものです。

INFORMATION

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