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自治体とエイドワーカーが連携する秘訣

討論2

  • 木村 忠治
    熊本県健康福祉部健康福祉政策課
    福祉のまちづくり室 室長(当時)
    木村 忠治
  • 菅 磨志保
    関西大学社会安全学部
    准教授
    菅 磨志保
  • 栗田 暢之
    特定非営利活動法人全国災害ボランティア
    支援団体ネットワーク(JVOAD) 代表理事
    認定特定非営利活動法人
    レスキューストックヤード 代表理事
    栗田 暢之
  • 栗田 暢之
    公益財団法人
    米日カウンシル-ジャパン
    TOMODACHIイニシアチブ
    アラムナイ・マネージャー
    宇多田カオル
栗田 暢之

栗田 阪神・淡路大震災のときに大学の職員をしており、学生と一緒に現場に入ったのが災害ボランティアとの出会いでした。阪神・淡路大震災は「ボランティア元年」といわれ、22年の月日を経て、現在は、災害が起こればボランティアがいない現場はないぐらい、当たり前になりました。1998年に福島、栃木で大きな水害があり、自然災害の「ボランティアセンター」が初めて立ち上がりました。「ボランティアをしてほしい」人と「ボランティアがしたい」人をつなぐのがボランティアセンターです。日本社会の中でボランティアセンターが決定的に組織化されたのが、台風が10個上陸した2004年です。その年は10月に新潟県中越地震も起きました。社会福祉協議会がボランティアセンターを担う覚悟を決めたのも04年でした。その後も全国各地で災害が起こる中で、こうした動きやノウハウが定着してきた矢先の11年に、東日本大震災が起きました。ボランティアセンターも立ち上がりましたが、自分の家族の安否もわからない段階でボランティアを受け入れるセンターをつくるのは難しい。地域間格差もあり、長期にわたる復興にボランティアがどうかかわるかなどの課題がありました。NPOやNGO間の連携も十分ではなく、行政や企業との連携を充実させることができたのか、その場限りだったのではないかなど、さらなる課題も見えてきました。被災地が広範囲だったこともあり、支援の漏れや抜け、落ち、ムラがあったのではないかということが、最大の反省点でした。この反省をもとに、社協を含む市民セクターが連携し、昨年6月、正式にNPO法人化して立ち上げたのが、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)です。その準備段階で、熊本地震が発生しました。私たちは、地元NPOとしっかり連携し、現地で活動するボランティア団体やNPOと情報交換する「火の国会議」という〝場〟をつくりました。参加したのは約300団体で、行政セクターや企業セクターも参加してくれました。これまでに105回開催し、県域の支援の過不足に対して、「ここではこれが足りない」「こちらにはあるよ」といったマッチングや、「ここが手薄だ」となれば、それを補うような調整を繰り返しました。一方で、熊本県・市や熊本県社協・市社協と私たちNPOで、情報連携会議を50回以上開催し、ベクトル合わせも進めてきました。こうした多様なセクター間をコーディネートするという動きは、今回の熊本地震で初めてなし得たものです。その結果、熊本では、くまもと災害ボランティア団体ネットワーク(KVOAD)も立ち上がり、熊本県とKVOADと私たちとで協定を結び、復興支援やこれからの災害にどう備えるかの議論も進めています。被災者の方々に1日でも、1秒でも早く支援の手が届くよう、行政・企業と連携して取り組んでいきたいと思っています。今日は県の方、有識者の方、現場で支えるボランティアの方に来ていただいているので、それぞれの立場から伺えればと思っています。木村さんから順番にお願いいたします。

木村 忠治

木村 熊本地震では全国、それから海外の方々からご支援いただき感謝申し上げます。私からは、昨年発生した熊本地震で、ボランティアの方々とどのように連携したかをお話しします。私自身、阪神・淡路、中越、東日本を見ていて、「災害が起こったらどうするか」を毎年4月に確認していました。社協が災害ボランティアセンターを置くので、情報共有をして、必要であれば県から職員を常駐させ、ボランティアや資材が足りなければ県のホームページで情報支援をする。一言でいえばそれだけでした。「JVOAD」いう言葉も知りませんでした。今は、経験・ノウハウを持つ災害ボランティアの方々(エイドワーカー)が必須だと実感し、スタンダードになってほしいと思っています。(地震発生から5日後の)昨年4月19日に国の現地対策本部からJVOADをご紹介いただき、連携してほしいと言われました。それまでの間、私は、県の社会福祉協議会と災害ボランティアセンターの設置に向けて協議していました。前震のときは「益城町だけでいいんじゃないか」という方向でしたが、16日から全域に被害が発生したので、他の多くの市町村でも設置が必要になりました。災害ボランティアセンターは、一般のボランティアを中心にたくさんの人が来るので、それを束ねて大きな力にしていくのがミッションだと思います。さらに、来る人の安全を確保することが最優先課題です。熊本地震は、震度7が連続して起こったこと、半年の間に余震が4000回起きたため、数日間は「県外からお越しいただくのは危険すぎる」状況でした。受け入れる準備は社協が一生懸命してくれていたので、安全が確保できるまで準備だけはしておいてもらえればという思いでした。JVOADの担当者に19日に初めて会い、その日に「お願いします」となり、JVOADから「県庁内に事務所が欲しい」という要請がありました。また「よければ、県の腕章も貸してもらえないか」とのことで、その日の夕方前に提供しました。もう一つ、NPOの方が集まって情報共有する場所も必要とのことで、これは副知事が用意しました。その日の夜には「火の国会議」もありました。「NPOから怒られるのではないか、文句をいわれるかもしれない」と思っていましたが、JVOADもNPOも何十人という人がいましたが、「今の事態をどうしたらいいか」「どんなふうに連携して対応するべきか」という視点で議論しており、「これは本当に連携しなければいけない」と強く思いました。しかし、連携が最初からうまくいったわけではありません。行政には遠慮の文化のようなものがあります。責任感の裏返しかもしれません。社協も同じかと思います。「行政と社協ができないなら、もうできない」という場面が何度かありました。しかし、そうではなく、できる人たちがいるわけです。できる人に頼ることで、自分たちも助かるのです。熊本では、そうした反省を踏まえ、JVOAD、KVOADと協定を締結する予定です(本フォーラムの3日後の3月30日に締結)。「もうボランティアニーズは収束したんですね」という声を時々聞きますが、フェーズに応じてボランティアは必要ですし、郡部では棚田が壊れ、農業に支障が出ているところもあります。ボランティアニーズは今もあります。先ほど栗田さんから1995年の阪神・淡路がボランティア元年だという話がありましたが、熊本地震が行政とボランティアの方々との連携元年だと評されるように、これからも熊本は、NPOの皆さんと連携していきたいと思います。

プロフィル

  • 木村 忠治

    きむら・ただはる/1961年、熊本県生まれ。86年、中央大学法学部卒業後、熊本県庁入庁。土木部監理課を振り出しに、広報課、鹿本地域合併推進協議会(出向)、地域振興課などを経て、2014年4月から福祉のまちづくり室長に。地域福祉、やさしいまちづくりに携わる。16年4月の熊本地震発生後は、災害ボランティアとの連携、被災者を支援する地域支え合いセンターなどの業務を担当。今年4月、障がい者支援課審議員に就任

  • 菅 磨志保

    すが・ましほ/1971年、神奈川県生まれ。東京都立大学大学院社会科学研究科修士課程修了。神戸大学自然科学研究科で博士号取得。専門は災害社会学、市民活動論。東京都社会福祉協議会・東京ボランティア・市民活動センター専門員、人と防災未来センター専任研究員、大阪大学コミュニケーションデザイン・センター特任講師などを経て、2010年から現職。共著に『震災ボランティアの社会学』(ミネルヴァ書房)、共編著に『災害ボランティア論入門』(弘文堂)など

  • 栗田 暢之

    くりた・のぶゆき/1964年岐阜県生まれ。名古屋大学大学院環境学研究科修士課程修了。95年、阪神・淡路大震災で、当時勤務していた大学の学生ら延べ1500人のボランティアをコーディネートし、その後、40カ所以上の自然災害の現場で支援活動を展開。現場での学びを生かし、地域防災力の向上や、災害ボランティア・NPO等の育成・連携構築などにも尽力している。2011年の東日本大震災では、東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)代表世話人、愛知県被災者支援センター長に。震災がつなぐ全国ネットワーク代表、災害ボランテイア活動支援プロジェクト会議幹事等の他、中央防災会議専門調査会委員や愛知県防災対策有識者懇談会委員など、国や地方自治体の各種検討会委員も歴任。岐阜大学、至学館大学の非常勤講師も務めている

  • 宇多田カオル

    うただ・かおる/ニューヨーク出身の日系アメリカ人。10年近く報道の世界で活躍し、日米両国のテレビ局で国際関連のニュース制作を手がけたが、3.11をきっかけに日本で活動することを決め、2012年秋に来日。翌13年からTOMODACHIイニシアチブのプログラム・マネージャーとして、若手リーダー育成プログラムを毎年20個以上企画・運営した。15年10月から現職。5700人以上の次世代リーダー「TOMODACHI世代」を育成するため、新しいstrategy とframework を作り上げている

フォーラム&フェア

2016年10月に開催されたフォーラムとフェアの様子を、記事と写真でご覧いただけます。
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