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脳卒中夜間学校

2014年6月27日
【特別授業】心房細動と心原性脳塞栓症 ~薬を飲まないことのリスクを考えよう~

【講師】

岡田靖 (おかだ・やすし)

1982年九州大学医学部卒業。84年国立循環器病センター。92年米国スクリプス研究所客員研究員。94年九州医療センター脳血管内科医長。2010年九州医療センター臨床研究センター長。

講義【脳卒中について】

かつて日本人の代表的な死因だった「脳卒中」ですが、急性期治療の進歩などによって死亡率は年々減り続け、2011年の統計では肺炎に続く第4位にとどまっています。

しかしその一方で、要介護度4、5といった重度の介護が必要になった原因としては、未だに第1位というのが現状。また、有病者数そのものはずっと増え続けていて、今後もまだまだ増えていくと予想されています。

「死亡率が下がってもなお、重要な病気であることには何ら変わりはありません」。講師の岡田靖・九州医療センター臨床研究センター長は、そう話します。

50年前は4分の3が「脳出血」だったのに対し、最近では「脳梗塞」がおよそ6割を占めるなど、脳卒中の中身も変化しています。高血圧や糖尿病の患者の発症リスクも具体的な数値でわかってきました。

特に今回のテーマでもある「心房細動」がある場合の発症リスクは、心臓で出来た血栓が脳の血管に詰まってしまう「心原性脳塞栓症」は10倍以上、脳梗塞全体でみても3~5倍に跳ね上がると言われています。

まずはこのような脳卒中全体の知識に加え、岡田さんが「放置すると崖っぷちにいるのと同じ」と警告する心房細動、さらには心原性脳塞栓症が起きる仕組みなどについて、詳しく解説します。

講義【心原性脳塞栓症の問題】

「高血圧を指摘されていたが、薬は飲んでいなかった」という76歳の男性のケースを参考に、「心原性脳塞栓症」を発症するまでの具体的な様子をみていきます。

後で振り返ってみると、原因とみられる「心房細動」や、前兆とみられる「一過性脳虚血発作(TIA)」と思われるような症状が出ていました。

ひとたび発症すれば、重症になってしまいがちな心原性脳塞栓症。それを防ごうと、最近では心房細動が見つかったらまずは脳梗塞予防のための治療を開始し、次に心房細動そのものに対する治療を行うという手順が一般的になってきているそうです。

心房細動がある患者の脳卒中リスクを判定する「CHADS2スコア」、脳梗塞予防で一般的に使われている薬のメリットとデメリットなど、心房細動や心原性脳塞栓症との向き合い方を紹介していきます。

講義【新薬と予防】

心房細動がある患者の脳梗塞予防薬として、2011年に登場したのが「新規経口抗凝固薬」。

従来型の薬に比べ、「食事制限がほぼない」「採血の回数が少ない」「効果の高さ、出血リスクの低さは、同等かそれ以上」といったメリットがあるとされています。

頭蓋内出血のリスクなどから従来の薬が使いづらいケースでも効果が出るなど、新しい薬の登場によって治療の選択肢も広がっています。

従来薬と新薬のメリットとデメリットを理解し、適切な治療を受けるためにはどうすればいいか、考えていきます。

一方、「痛い」「苦しい」など具体的な症状を抑えるわけではないため、患者が自己判断でのむのをやめてしまうという「予防薬」特有の問題点もあります。心臓にできる血栓を予防するための抗凝固薬を「半数以上の患者が勝手に中止している」という海外の調査結果もあるそうです。

心原性脳塞栓症は「10年以内に75%の患者で再発する」のが現状。少しでも改善するためには「薬物療法に加え、生活習慣の改善も重要」と岡田さん。さらに「薬は勝手にやめないで」と訴えています。

質疑応答

「新しい抗凝固薬は、どこの病院でも使ってもらえるの?」「脳卒中は遺伝と関係するの?」「運動、減塩を心掛けていますが、それ以外に気を付けることは?」など、今回もたくさんの質問が寄せられました。

「目立ったリスクがなくても脳卒中になるとすると、どう予防すればいい?」という質問に対しては、年齢を重ねるとどうしてもリスクが増えてしまうことに加え、喫煙やアルコールは体調に変化がなくても大きくリスクを上げている可能性が高いため、「自暴自棄にならないで、生活習慣を見直してほしい」とのアドバイスがありました。

また、「脳卒中については何も知らないため、知りたいことがたくさんあります」という質問が10代の女性からも寄せられたことに対しては、「今は、脳卒中を中学校くらいから勉強しましょうという動きもある」という最新事情を紹介。「脳卒中は痛みを伴わないことも多いため、症状の見分け方など正しい知識が救命につながります」とのことでした。

放課後

痛みなどが少ないため、病院に運ばれてきても、まだ患者自身が自分の身に起きていることの重大さをわかっていない場合も多い――そんな脳卒中の特性について、あらためて振り返った平子編集長と小林アナウンサー。

しかし症例をよく見てみると、実は様々な「予兆」が出ていたこともわかり、「勉強になりました」とのこと。

また抗凝固薬については、飲むことの効果が数値によって具体的に現れやすい高血圧薬などと比べて、「飲み続ける動機付けが難しい」という点にも触れ、「私たちには知恵がありますから、それでも続けることが大切です」との意見で一致しました。

最後に、平子編集長からのお知らせもあります。