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06月21日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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  • 鎌倉文士の立原正秋 オールドパーを客人にふるまう

  • 同じ鎌倉文士として田村隆一とも交流のあった立原正秋が、『薪能』で芥川賞候補となったのは、昭和三十九年(1964)だった。翌年にも『剣ヶ崎』で同賞候補となり、翌々年『白い罌粟』で第五十五回直木賞を受賞。以降、『冬の旅』『紬の里』『春の鐘』など、流行作家として数々の物語を紡いだ。

  • そんな立原が被写体となった一葉の写真がある。鎌倉腰越の自宅。立原は和服を身にまとい卓袱台の前に座している。卓上には、皿や小鉢に盛られた料理とともにオールドパーのボトルが見える。その日の仕事を終えて一献というときに写されたものだろう、作家の頬にこぼれるような笑みがうかぶ。直木賞受賞三か月後の撮影で、微笑の奥に文筆家としての自信と矜恃が漲っているようでもある。

  • 立原 正秋

  • 立原は食通の愛酒家だった。「限りなく酌めども未だ唇を潤さず」という、酒にまつわる詩的名言も忘れがたい。原稿の受け取りに編集者が鎌倉の居宅を訪れた際も、立原は酒でもてなすのを常とした。はじめビールで喉をしめし、次に日本酒へと進み、「最後の仕上げはさっぱりとウイスキーでしめましょう」と言って水割りでしめくくる。それが定番の流れだった。

  • 移ろわぬ美を追い求めた高い美意識の持ち主。味覚と嗅覚にすぐれ、食にはことにうるさく、旬を迎える矢先のいわゆる走りのものを好み、魚を焼くのはガスでなく炭。旨い飯が炊けるはずがないと、電気炊飯器も使わない。ポットも置かないから、家に常備の大井川上流で採れる川根茶を喫するにも、そのたびごとに薬罐で湯を沸かした。

  • 立原は日々の散策がてら漁港や市場にふらりと立ち寄り、自身で旬の食材を調達して帰ることも少なくなかった。季節には、山菜を求め山にも入った。気が向くと、自ら調理場にも立つ。刃物と鋏だけは左利きで、3本の包丁と硬軟2枚の俎を使い分けた。

  • いずれ、ものを書くには日常の酒食をおろそかにできない、というのが立原の持論だった。オールドパーのボトルを食膳にのせたのも、そんなこだわりの延長線上にあろう。立原はこのウイスキーの名を、小説や紀行文の中にも綴り込んでいる。

  • かくの如く、日本の文壇史を彩る作家たちの創作の傍らにオールドパーは寄り添っていたのである。

  • 顧みればこの琥珀色の酒は、戦後復興から成長・成熟へと、揺れ動く時代を支えた各界のリーダーたちのためにも、沈思と休息と語らいのひとときを演出してきた。これからも、変わらぬ芳醇な香りと味わいで、今と未来を見つめるニッポンの男たちに愛されつづけていくのだろう。

  • 文:矢島裕紀彦
    やじま・ゆきひこ 1957年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。編集者として、20世紀の「時の人」約6000人を収めた『現代日本人物事典』の刊行に携わる。その後、文筆活動に専念。文学、スポーツをはじめとするさまざまなジャンルの人間の足跡を追う。著書に『ウイスキー粋人列伝』(文春新書)等がある。

  • 撮影協力:モンブラン コンタクトセンター 0120-39-4810 / グローブスペックス エージェント ☎ 03-5459-8326

    Photograph:Fumito Shibasaki (DONNA) / Styling:Eiji Ishikawa (TABLEROCKSTUDIO) / Design:Hiroyuki Aoki (Mag) / Produce:Teruhiro Yamamoto (AERA STYLE MAGAZINE) / Edit:Mayu Yamamoto / Planning:The Asahi Shimbun Advertising Division

時代小説家、池波正太郎 一日の終わりはウイスキーで
翻訳家・詩人の田村隆一 ミステリとスコッチを結ぶ
鎌倉文士の立原正秋 客人にふるまうのはオールドパー
時代を超えて、日本人に愛され続けている スコッチウイスキー。調和のとれた柔らかな味わい、奥行きのある香りと長い余韻は、和食とも好相性。詳しくは、oldparr.jp へ MHD モエヘネシーディアジオ株式会社

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