自分が「伸びる」環境か
それが大学選びの指針

「これまで何かに熱中したことがありますか」。LINE Fukuokaの落合紀貴社長は、採用面接の際に必ずそう質問するという。勉強でも趣味でも何でもいいので、学生時代に一度は何かに夢中になってほしいと語るその理由とは。自身は決してまじめな学生ではなかったと言いながら、大学に行って良かったと感じた体験とは。大学選びでは、自分の可能性を引き出してくれる環境かどうかを考えるべきだという落合氏に、受験生へのアドバイスを語ってもらった。

INTERVIEW
落合 紀貴さん
LINE Fukuoka株式会社 代表取締役社長
おちあい・のりたか/1974年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。2013年4月、LINE株式会社執行役員に就任。同年11月LINE Fukuoka株式会社取締役に就任。16年5月からLINE Fukuoka株式会社代表取締役社長。※LINE株式会社執行役員を兼任。

自分の想像を超える
多様な個性との出会い

 私は大学の政治経済学部に進みましたが、受験する時にそこでの学びを具体的にイメージできていたわけではありませんし、社会に出て何をしたいという目標も明確ではありませんでした。そして入学後も、お世辞にもまじめとは言えない学生だったので(笑)、大学選びやそこで何を学ぶかについて、あまり偉そうに語れる人間でないことはご容赦ください。
 そんな私が大学時代を振り返って一番良かったと思うのは、育ってきた場所や環境も、興味関心の方向性も、自分とはまったく違う人たちと出会えたことです。出身地域それぞれの文化や習慣の違いに驚いたり、あるジャンルについての膨大な知識を熱っぽく語る同級生に圧倒されたり。中高も6年一貫の男子校だったので個性的な友人たちに恵まれたと思っていますが、大学で出会った人たちの多様性は、その比ではありません。
 たとえば入学前は外国への興味なんてまるでなかったのに、友人が留学制度について熱心に調べている姿を見て、自分も行ってみたくなるということもあるでしょう。初めはそんな「受け売り」でしかなかったことが、自分の将来の可能性を大きく広げることもあります。
 もちろん、大学入学前に将来の目標が明確に見えている人は、そこに向かって迷わず進めばいい。でも18歳や19歳でそこまでしっかり考えられる人は、おそらく少数派です。まだ進路選びで迷っている人は、この先自分が熱中できるものや、影響を与えてくれる人との出会いが「ありそうな」環境を選んでみると良いでしょう。留学生と机を並べて一緒に学べる。独創的な研究をしている先生がいる。社会の中で面白い活動をしている卒業生が多い。何でもかまいません。本当にやりたいことを見つけるのは大学に入った後でもいいし、大学ほど刺激に満ちた環境も、他にそうはないと思うからです。

何かに熱中した人は
仕事にも夢中になれる

 学習態度はまったく褒められたものではなかった私ですが、放送研究会というサークル活動にはかなり熱心に取り組みました。マスメディアをめざす学生が多く所属するサークルで、私自身はそうした志向はなかったものの、ものをつくる面白さや難しさをそこで学んだと思っています。
 現在は会社経営の立場で採用面接をすることもありますが、応募者に対して必ず質問するのは、これまで何かに熱中したことがありますか? ということです。その気になれば今はいくらでも情報が手に入るので、たとえばエンジニア志望の人であれば、自分でプログラムを書いて自作アプリを販売するといったことは誰でもできます。やろうという意志さえあれば。仕事だからと指示されたことをなんとなくやる、という人と、頼まれてもいないのに好きだからどんどんやり方を調べて覚えた人とでは、スキルもその後の「のびしろ」も大きく違うことは容易に想像がつくでしょう。
 技術者以外の営業や管理部門の採用では、自分の頭でしっかり考え、考えた内容を実行に移せるか、ということを重視します。そこでも指標になるのは「何かに熱中したことがあるか」です。たとえばダンスが好きな人なら、世界中のダンスが上手な人の動画を見て情報を集め、この人はどこがすぐれているのかを自分なりに考え、自分でもまねをしてみるでしょう。そんな体験を繰り返してきた人は、それが普段の行動の、もっといえば生き方の「クセ」になっています。
 以前、面接で出会ったある人は、大学で始めたマイナースポーツのコーチが日本にいないので、SNSで必死に探して、アメリカ人コーチにアドバイスをもらっているんだと話してくれました。何かに熱中したことがある人は、仕事や他のことにも夢中になれる人だと思います。ぜひ大学時代に、とことん熱中できるものを見つけてください。

福岡の街でなければ
きっとできなかった

 私たちLINE Fukuokaは、先日福岡の「最も働きたい企業」第1位に選ばれました。ただしこれは当社だけでなく、「LINEと一緒に面白いことをやっている福岡市」への評価を含んでいると思っています。昨年8月に市と包括連携協定を結び、市民が街の不具合を通報できる仕組み、粗大ごみ収集の申し込みと支払い、傘シェアリングサービスとの協業など、LINEやLINE Payを利用した様々な取り組みを始めています。行政の立場からすれば、こうした事業を「やらない」理由はいくらでもあるはずです。たとえば傘が壊れたらゴミになるだろう、傘でケガをする人がいたらどうする、というように。しかし福岡市は、まず挑戦してみようと言ってくださる。二人三脚を一緒に走るパートナーとして、これほど理想の相手はいません。
 今の福岡市には、国内はもちろん海外からも優秀な人材や面白い企業がどんどん集まっています。この街で、この出会いがなければできなかっただろうということも多くありますし、その点で私たちは非常に幸運でした。みなさんがこれから進学先を選ぶ際にも、大学のブランドや場所のイメージだけに左右されず、自分の可能性を最大限に伸ばせる環境を、ぜひ見つけてほしいと思います。(談)

※人材サービスのランスタッド(東京・千代田区)が福岡県と佐賀県在住の18〜65歳の男女約7,200人を対象にインターネット調査を実施。

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