親子で大学選びを考えるなら
大学への固定観念を捨てよう

大学受験を控えている家庭では、子どもにどんなアドバイスをするべきか、悩む親も多いだろう。親世代が大学生だった1980~90年代と現在とを比較すると、日本の大学を巡る状況は大きく変わっている。「名前も聞いたことがない大学はやめたほうがいい」「偏差値が高い大学でないと就職できない」といったアドバイスは、いまの時代にはそぐわない。この30年間の大学の変化を踏まえ、親子でどう大学選びに向き合うかについて、考えてみたい。

INTERVIEW
鈴木 顕編集長
朝日新聞出版『大学ランキング』編集長
すずき・あきら/朝日新聞出版アエラムック編集部で、「AERA English」「アエラ大学ムック」シリーズなどのデスクも兼務する。「週刊朝日」の医療担当、大学担当記者などを経て、現職。

大学の数は急増し
学部も多様化した

 今年、元号が「令和」に変わりました。その前の「平成」の時代は、日本の大学にとっては、激動の30年間だったといえます。
 まず、大学の数が急増しました。1989(平成元)年には499大学でしたが、現在は約780大学もあります。企業が大卒者を採用する志向が高まったことや、女子学生の大学進学率が上昇したことがその背景にあります。大学進学者は、この30年間で「4人に1人」から「2人に1人」へと増えました。92年をピークに18歳人口は減少傾向にありますが、大学は拡大路線を続けてきました。
 さらに、学部も様変わりしています。文、法、経済、理、工といった伝統的な学部に加え、平成に入って、国際、環境、情報などの名前を冠した学部が相次いで登場しました。近年ではコミュニケーション、グローバル、マネジメントなどの言葉が入った〝カタカナ学部〟も珍しくありません。また、「学部」というくくり方そのものをやめ、「学群」「学域」「学院」といった名称を採用し、学部よりも幅広い学びの場を提供する大学もでてきています。
 つまり、親世代が大学生のころにはなかった大学が300近くもあり、学部のあり方も多様化、複雑化している――。この事実だけをみても、かつての知識で子どもにアドバイスするのが難しい状況になっていることがわかります。
 たとえば、卒業後に保育士に採用された学生の多い大学をみてみると、上位10大学のうち半数以上が、平成に入って誕生した大学です。親にとっては「聞いたことがない大学」かもしれませんが、保育士を目指す子どもにとっては、希望の仕事に近づける「いい大学」です。親がいまの大学についてのきちんとした知識を持っていないと、誤ったアドバイスをすることになりかねません。

偏差値にとらわれず
大学の個性に注目

 大学数が増えただけではなく、大学の情報発信のあり方も変わっています。
 現在、多くの大学がオープンキャンパスを実施し、教職員や現役の学生が、高校生の質問に答えています。模擬授業をおこなっているところも多く、入学したら何が学べるか、大学の雰囲気が自分に合うか、早くからイメージすることができます。親世代のなかには、入試のときに初めて志望する大学に行った、という人もいると思いますが、高校生のうちに大学に足を運ぶことは、現在では当たり前になっています。親子で一緒にオープンキャンパスに参加してみると、親も最近の大学を感じることができるでしょう。
 大学の中身が見えるようになってきたいま、「偏差値」という単一の指標で大学を選ぶのではなく、個性に注目して大学を選ぶことも可能になりました。
 われわれは「偏差値だけに頼らない大学選び」を掲げ、『大学ランキング』という情報誌を毎年刊行しています。全国の大学をさまざまな切り口から調査し、横断的に分析、評価しています。
 たとえば、「人気企業就職ランキング」「資格・採用試験合格者ランキング」をみると、卒業後の進路において、どの大学がどんな分野に強いのかを知ることができます。「海外留学制度ランキング」からは、グローバル化が進んでいる大学はどこか、海外志向のある学生がどの大学に集まっているかがわかります。あるいは「学長からの評価ランキング」「高校からの評価ランキング」は、入学してから学生が伸びる大学、教育力が高い大学が選ばれています。このように視点を変えることで、偏差値で輪切りにしているだけでは見えてこない、大学の個性が浮かび上がってきます。
 こうした指標の何に注目するべきか、子どもをよく知る親のアドバイスは役に立つことでしょう。大学の個性と子どもの適性をあわせて考えることは、ミスマッチの少ない大学選びにつながります。

象牙の塔ではなく
社会とつながる大学

 かつて大学は「象牙の塔」と言われることがありました。世間から隔絶され、現実の社会との接点を失っている、という文脈で使われていました。しかし近年の大学では、社会と密接につながる研究や学びが数多くおこなわれています。産業界と大学が一緒になって研究などに取り組む「産学連携」に熱心な大学も増えています。
 最近注目されるのが、SDGs(持続可能な開発目標)です。SDGsとは、2015年に国連が採択した国際社会が目指すべき目標で、「貧困をなくそう」「すべての人に健康と福祉を」など、17のゴールが設定されています。いくつかの大学は、全学的にSDGsに取り組むことを宣言しています。SDGsに通じる研究や教育は、文系、理系を問わず幅広くあります。社会貢献や世界の課題と向き合う学びに関心があるならば、SDGsも大学選びの一つのキーワードになるでしょう。
 最近、大学が保護者会を頻繁に実施するようになるなど、大学を巡る親と子の距離はかつてよりも近くなっています。一方で、大学選びの主人公は、言うまでもなく当事者である子どもです。固定観念や昔のイメージにとらわれることなく、子どもの選択を尊重し、サポートすることが、親子ともに納得のいく大学選びにつながるのではないでしょうか。

SDGsとは 「大学選びのキーワード」

 SDGsという言葉は、高校生の皆さんには馴染みが薄いかもしれません。2015年に国連が採択した新しい概念で、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略語です。読み方は「エスディージーズ」。下のアイコンのように貧困、飢餓、健康と福祉、教育、ジェンダーなどをテーマとする17項目の目標を掲げ、これらの課題解決を世界に求めるというものです。現在、さまざまな国や地域、企業や団体がSDGsという目標に向けた取り組みを始めており、これから耳にする機会も増えていくでしょう。
 「九州・山口・沖縄の大学力2019」では、このSDGsの考え方を切り口として、課題解決型人材の育成に取り組む各大学の魅力を紹介しています。各大学の教育・研究活動がSDGsにどのようにつながっているかを示すため、各大学紹介ページに目標とする項目のアイコンを掲載しました。大学選びの指標の一つとして、参考にしてみてはいかがでしょうか。

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