同志社大学

日本の未来を切り開くため、幕末に国禁を犯して渡米した同志社大学の創立者・新島襄。その熱い志を受け継ぎ、創立150周年となる2025年に向けた「同志社大学VISION 2025」を展開中だ。伝統と創造性を融合させ、さらなる進化を目指す。

クラーク記念館(今出川キャンパス)

「同志社大学 VISION 2025」の
その先へ
6つのビジョンを繋(つな)ぐ、
「多様性」を培う教育と研究を推進

新島の言葉「人一人ハ大切ナリ」
その精神が深く浸透する同志社

植木朝子 学長

 同志社大学は、新島襄が1875年に創立した同志社英学校が起源です。「キリスト教主義」「自由主義」「国際主義」を教育理念とする、良心教育を実践してきました。このような伝統ある大学の学長に、2020年4月に就任いたしました。3年間務めた副学長としての経験を生かし、学内の多様な意見を吸い上げ、大学を運営していきたいと考えています。
 同志社大学には新島の言葉「人一人ハ大切ナリ」の精神が深く浸透しているのを感じます。学生数の多い総合大学でありながら、教職員が一人ひとりの学生に、非常にきめ細かく対応しています。
 特に今は、新型コロナウイルス感染拡大を予防しつつ、学生が学び続けるため力の限りを尽くしています。

あらゆる専門分野からポストコロナを研究
産官学の社会連携も積極的に

 本学は創立150周年に向けて策定した「同志社大学VISION 2025」に基づき、6つのビジョン「学びのかたちの新展開」「キャンパスライフの質的向上」「創造と共同による研究力の向上」「『志』ある人物の受入れ」「『国際主義』の更なる深化」「ブランド戦略の展開」を進めています。この6つを繋ぐキーワードは「多様性」です。例えば「キャンパスライフの質的向上」には、「多様な人物が様々な活動を通して共生できるキャンパスの実現」という言葉が含まれています。既に障がい学生支援室やカウンセリングセンターがありますが、さらに性的マイノリティーの問題なども支援できるよう体制を強固にします。「『国際主義』の更なる深化」の国際主義はまさに多様性そのものです。2017年にはドイツのテュービンゲン大学構内に、EUキャンパスを設置しました。
 研究の多様性として、「新型コロナウイルス感染症に関する緊急研究課題プロジェクト」を始動します。ポストコロナの新しい社会に向けて何を提言し、何を成すべきか、学内で研究募集をしたところ77件が集まりました。「健康・医療」領域はもちろん、新型コロナウイルスがもたらした働き方、自粛要請と個人の権利の問題など「社会・経済」「教育・文化・生活」領域もあり、総合大学として様々な分野からポストコロナを考えていきます。研究成果は各教員の授業に還元したり、研究期間終了後にシンポジウムを開催したりして発信する予定です。
 産官学の社会連携も研究の多様性といえます。今年4月に「同志社-ダイキン『次の環境』研究センター」を学内に設立しました(下記参照)。2017年には文化庁地域文化創生本部との研究交流に関する包括協定を締結。キャンパスには重要文化財の建物があり、文化財保存・活用の観点からも、引き続き文化庁と交流を図っていきます。
 本年度は新型コロナウイルスの恐怖と不安の中に始まり、春学期の授業は原則ネット配信の措置を取りました。秋学期からは感染拡大防止に細心の注意を払い、一部対面授業も始めます。経済的に困窮した学生を支援する、本学独自の奨学金も用意しています。
 不安が大きいのは受験生も同じでしょう。一般入試は例年と大きく変わることはありません。高校時代には多くの知識を吸収し、ことばの力(読む力、書く力)を付けてほしいと思います。その勉強は大学で主体性、創造性、独創性を育む礎となります。同志社大学は、一人ひとりの学生が輝ける快適な環境を提供いたします。

地球の持続的発展のための
“次の環境”が提案できる人物の
養成を指向する
実践的な学びの場の創生を目指し

ダイキン工業と
「包括的連携協力」協定を締結

「次の環境」研究センターが
京田辺キャンパスに誕生

同志社-ダイキン「次の環境」研究センター センター長 理工学部環境システム学科 後藤琢也 教授

 「同志社大学VISION 2025」の事業の一つ、同志社-ダイキン「次の環境」研究センターが2020年4月に京田辺キャンパスに誕生した。同志社大学は空調メーカー最大手のダイキン工業株式会社と、同年3月に環境課題をテーマにした実践的研究開発を目指し、包括的連携協力に関する協定書を締結。社会との共修の在り方を模索する中、同志社の卒業生であるダイキン工業の井上礼之会長と、松岡敬前学長とがディスカッションし方向性が一致した。
 「次の環境」研究センター センター長で、理工学部環境システム学科の後藤琢也教授は「もともと、ダイキン工業と本学は2017年2月に連携大学院協定を結び、理工学研究科と共同研究をしてきました。今回のセンター設立で、本学の学生・大学院生とダイキン工業の社員との共修環境を作り、次世代の地球環境に役立つ新しい科学技術、新しい教育を打ち出していきます」と意気込みを語る。

研究テーマはCO₂分解技術や
エアコン主要部品の省エネ

 研究センターは、訪知館内のワンフロアに開設。まずは二つの共同研究群から始める。
 一つは「CO₂回収・分解・再利用技術の開発」だ。二酸化炭素(CO₂)から化学的な操作により酸素と炭素分子を取り出す同志社大学独自の技術と、ダイキン工業が得意なフッ素化学技術を組み合わせ、CO₂を資源として利用することで、CO₂の削減に貢献することを目指す。
 もう一つは「エネルギー損失の極限を追求する環境技術テーマの研究」。空調の主要部品であるインバータ、圧縮機、熱交換器の3分野において、さらなる省エネや材料の強度・耐食性の向上を追求する。研究テーマは今後、拡充していく予定だ。

自然科学、人文・社会科学の教員も参画
文理融合による教育を展開

研究センターがある京田辺キャンパス訪知館

 このような共同研究を通して育てたい人物像について、後藤教授は「常に次世代のことを考え、倫理観を持ち、社会に役立つ新しい原理や仕組みなどを生み出す人物」と話す。
 「サイエンスを正しく使うには倫理観が必要で、その倫理観を養うには文理融合の学びが重要です。本学は、文理融合の教育を強く推し進めており、ダイキン工業もテクノロジー一辺倒では環境問題は立ち行かないと考えておられます。そこで自然科学だけではなく、人文・社会科学も含めた教育を行うことになりました」(後藤教授)
 センターには専属の教員が2人いるが、神学部や法学部、経済学部、グローバル・スタディーズ研究科、理工学部、生命医科学部、脳科学研究科、赤ちゃん学研究センターなどから二十数人の教員がセンターの研究員として参画。さらに学外からも大学や国立研究所などに所属する研究者もメンバーに加わった。
 文理融合の具体的な取り組みは今年度から開始し、まずSDGs教育や、将来世代を設定して社会の仕組みをデザインするフューチャー・デザイン演習を行う。演習科目はダイキン工業の社員と学生が交ざり、グループで展開する予定だ。さらに、次年度には、「次の環境」協創・人材育成コースを新たな教育プログラムとして開始する。
 「社会人との共修は、学生にとって大きな刺激となるでしょう。ダイキン工業の井上会長もそうですが、同志社大学の卒業生や学生には、リスクがあってもチャレンジを恐れない創立者・新島のフロンティア精神が息づいているのを感じます。私が所属する環境システム学科の私の研究室の4年生も新しい発想で資源を創製したいという志を持ち、全員が大学院に進学しています。変わっていく未来の環境を、社会人と学生が一緒になって考えてもらいたいです」(後藤教授)。センターでのCO₂資源化の取り組み以外に、例えば、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が公募した「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/次世代火力発電技術推進事業/カーボンリサイクル技術の共通基盤技術開発」に採択され、CO₂利用について産業技術総合研究所と共同研究を今年度から行う。文理融合でCO₂資源化、省エネ技術などの次の環境を考えさせる教育研究拠点での学びは、学生をより成長させるはずだ。

ダイキン工業との記者会見の様子

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