日本工業大学

新たな50年のステージへ

大学のいま

「継承と進化」
新時代に向けた実工学

新しい時代の中で
進化する実工学

災害救助用4足歩行ロボットの開発。実験・実習を中心としたカリキュラムで、実践的な技術を身につける

 昨年50周年の節目を迎えた日本工業大学は、2018年度、これまでの1学部7学科体制から3学部6学科2コースへと組織を改編、新しいスタートを切った。新設されたのは、「基幹工学部」「先進工学部」「建築学部」の3学部だ。
 「基幹工学部」の目玉は応用化学科の新設。成田健一学長は、「今なぜ応用化学科を新設したかといえば、建築やエレクトロニクスなどの分野でも、先端的なテーマになるほど化学分野とリンクする内容が増えてくるからです。本学では、以前からそうした分野横断的な研究・学修を進めることが可能でしたが、必ずしも連携が十分ではありませんでした。学科の新設が本学の強みをさらに強化し、文字通り新たなケミストリーを生むことを期待しています」と語る。
 「先進工学部」では、ロボティクス学科の新設が注目される。第4次産業革命という言葉も認知が広がり、日本では「超スマート社会(Society5.0)」構想もスタートした。ロボティクス学科はそれを実現するファクターであるロボットとAIを学ぶことで「先進」を体現する。また、既存の建築学科を発展させ学部として独立させたのが「建築学部」だ。これまで多くの卒業生が一級建築士資格を取得してきた日本工業大学。新学部は、そんな伝統の教育をさらに充実させることをめざす。
 学長が新体制による相乗効果に期待を寄せる背景には、ノーベル物理学賞受賞者である中村修二氏の言葉がある。「本学特別栄誉教授でもある中村先生は、自分が高輝度青色LEDの研究で国際競争に勝つことができたのは、実験器具の自作により、研究全体をスピードアップできたためと語っています。そして、研究とものづくりの環境が両立する日本工業大学でも、同様のことができるはずだと評価をいただきました。大変勇気付けられる言葉です」
 この先AIが進歩していけば、人間の仕事の約半数は機械にとって代わられるとの予測もある。長年培ってきた「実工学」教育の基本思想は継承しつつ、新たな時代に活躍できる人材を育てるため、さらに進化させる。「継承と進化」こそが日本工業大学の未来を支えると、学長はいう。「人間は機械と違い、なぜこんなことを学ぶのかと疑問を持つ。それが人間の強みであり、面白さでもあります。もちろん機械にかなわないことはたくさんありますが、人間にしかできない仕事は必ず残る。私たちが育てるのは、意思を持ち、自分の頭で考え、技術で新たな価値を創造できる技術者です」

応用化学科棟完成イメージ図(2019年秋竣工予定)

厳しくかつ丁寧な
初年次教育

成田健一学長

 学部学科の改編とともに、初年次の学生に対する工学基礎教育のカリキュラムを全面的に刷新、入学直後に行われる数学・物理・英語のプレースメントテストをもとに、一人ひとりの習熟度に合わせたクラス編成を実施している。「過去の学生たちのデータを見ると、卒業時の成績と最も密接な関連があるのは1学年終了時点の成績です。大学での最初の1年間は、人生を変える1年になる。そんな強い意志を持って確実に力を伸ばしてほしいと思います」。成田学長は、その狙いを説明する。
 現在も工業高校卒業生が学生の約半数を占める同大学では、従来「工業科卒」と「普通科卒」というふたつの入り口で初年次教育を行ってきた。しかし高校教育が多様化し、例えば、出身学科から学生の実力をはかることが難しい現在、よりきめ細かな指導が必要になってきたことが背景にあるという。意欲的な新カリキュラムを支えるのが、工学基礎科目におけるクォーター制の導入だ。すべての科目で一定レベルに達しなければ進級を認めない代わりに、再チャレンジの機会を何度も与える。日本工業大学のクォーター制は、非常に厳しく、かつ非常に面倒見のよいシステムといえるだろう。「あえて修羅場といえるような状況をつくったので、覚悟して学んでくれと学生にははっきり言っています。一方で、クォーター制というのは私たち教職員の側にかかる負荷も小さくありません。本学にかかわる全員が、『やらないでは済まされない』という強い気持ちで臨む必要がある。日本工業大学の新しい挑戦です」

CAMPUS[キャンパス]

多目的講義棟 間もなく完成
 大学設立50周年と学園創立110周年を記念した事業の一環として、地上7階建ての多目的講義棟の建設が進んでいる。低層階は、初年次教育センターや学修支援センターなどを備えたアクティブ・ラーニングゾーン。高層階は授業形態に合わせて自由な展開が可能な講義棟となっている。
 延べ床面積は約7,800平方㍍、工事の完了は今年12月を予定。周囲の緑とも違和感なく溶け込む省エネ型の建物は、キャンパスの新たなランドマークとなるだろう。なお日本工業大学では、来年秋に応用化学棟も完成予定となっている。
多目的講義棟完成イメージ図(2018年12月完工予定)

NEWS[最新ニュース]

全固体電池技術の先導役に
 特色ある研究を基軸として、独自色を強く打ち出す私立大学の取り組みを文部科学省が支援する「私立大学研究ブランディング事業」。昨年度、日本工業大学の「次世代動力源としての全固体電池技術の開発と応用」がこの事業に採択された。
 安全性や耐久性で現在主流のリチウムイオン電池を上回る全固体電池については、すでに多くの企業や大学が研究を進めている。成田学長は、「本学は大きな大学ではありませんが、特定の分野では世界をリードする研究・開発が可能な環境が整っています。全固体電池もそのひとつです」と自信を見せている。
材料の合成

SEMINAR[ゼミ]

ものづくりで課題解決力を養う
 日本工業大学の特徴的な学びのひとつに、「カレッジマイスタープログラム」がある。全日本学生フォーミュラ大会への参加をめざすフォーミュラ工房、カナダ研修所で現地の職人との共同作業を体験する2×4木造建築工房、機械・電気・情報分野の幅広い技術が身につくヒューマノイドロボット研究など、学生が自由にプロジェクトを選択して履修できる。実際に手を動かすものづくり体験を通して、工学分野のリアルな課題解決力を養うプログラムだ。なお、優秀な成績を収めた人には「カレッジマイスター」の称号が授与される。
全日本学生フォーミュラ大会で4年連続全種目完走を達成

『大学ランキング』杉澤編集長が見た「日本工業大学」

新体制による相乗効果

 2018年春、1学部7学科から3学部6学科2コースへと大きく体制を変えた日本工業大学。成田健一学長は、時代に即した新たな価値を創造する技術者を育てるために、「実工学」の伝統を継承しつつさらに進化させていくと語っています。同大学特別栄誉教授でもある中村修二博士(ノーベル物理学賞受賞者)が期待するのは、研究とものづくりの環境が両立するキャンパスからイノベーションが生まれること。これからの展開に注目しています。

クォーター制

 大がかりな改組と合わせて、これまで工業科出身者と普通科出身者で分けていた初年次教育を見直し、よりきめ細かく工学基礎科目を指導するカリキュラムが整備されました。進級条件を高めに設定する代わりに、再チャレンジの機会を何度も与える「厳しくも面倒見のいい」制度ですが、これは成田学長も語っているように、大学側の負担も大きいはずです。それだけの覚悟を持って臨む取り組みに、ぜひ期待したいところです。

杉澤誠記編集長
朝日新聞出版『大学ランキング』編集長

掲載大学一覧[関 東]

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