拓殖大学

国際大学のパイオニア

 大学には今、日本の市町村と提携して地域を活性化する役割が期待されている。拓殖大学は、これまでもゼミ活動や課外活動で積極的に地方創生に取り組み、学生による「まちづくり」に力を入れてきた。今年新たに活動の拠点となる「地域連携センター」を設置したことを記念し、学生と教員、学長による座談会が行われた。

大学力座談会

地方創生に取り組む体験が
世界へ挑戦する行動力を育む

伝統を基盤に
拓大らしい貢献を

【座談会メンバー(左から)】 永見 豊准教授[工学部]  
土川優作さん[工学部4年]
髙橋美憂さん[国際学部4年]  
徳永達己教授[国際学部]  川名明夫学長

──地域連携センターをつくり、大学として学生の地方創生活動を奨励する狙いは何でしょうか。

川名 拓殖大学は、1900年に「国際的な舞台で活躍する人材の育成」を掲げて設立された、国際大学の草分けです。海外で活躍する卒業生も多く、地域の人と一緒になってその土地の価値を作り上げてきました。いわば地域貢献の伝統がある。現在本学は創立120周年にあたる2020年に向かい、設立時の精神に立ち返り、「教育ルネサンス2020」と名付けた大学改革を進めています。教育目標は「世界的視野に立ち、国内外の人と協働してチャレンジするタフな人間力」。専門性や国際性は授業で身につける。ではタフな人間力は?というとそれは教室だけでは不十分でしょう。地域の中で現実の課題を解決していくことで育つと思います。地域連携センターは、各ゼミや学生によるチャレンジ活動をまとめ、情報を共有し、まだ参加していない学生たちにその活動を広めるために生まれました。
徳永 現在の日本は東京への一極集中により地方が疲弊し、40年までに今ある自治体の3分の1は消滅する可能性があると言われています。そこで私たち首都圏の大学が果たす役割は何か。地方から来ている学生を引き受けているわけですから、学生をスキルアップさせて地方へ返すという使命もあります。このように、今の地方を活性化するためには社会貢献的な活動に加え、教育的な側面を重視する必要があります。国際学部の私の研究室では、私の専門であるアフリカなどの開発途上国を対象としたインフラ整備の工法を活用し、日本の地方活性にモデル事業を提案していく、プロジェクトマネジメント演習を行っています。
川名 開発途上国への対処と日本の地方活性化を結び付ける。そこが本学の特長になります。

4月26日(木)に開催された公開座談会「拓殖大学と地方創生」

デザイン力を生かし
地域の合意形成を確立

──工学部デザイン学科の永見研究室では、まちづくりに関わるさまざまなコンペや外部のプロジェクトに参加しています。

永見 3年次のプロジェクト演習で15年から、大学生観光まちづくりコンテスト、大学コンソーシアム八王子、富士川町まちづくりシンポジウムにも参加しました。コンテストに参加すると学生は自分たちの位置づけがわかり、モチベーションが上がります。4年次の卒業研究では、広島県呉市三角島の活性化、八王子市清川町の活性化プロジェクトなど主体的な研究につながりました。
土川 僕は1、2年ではモノのデザインを学び、3年からコトのデザインをテーマにするようになりました。その一つとして、八王子のまちづくり計画に基づく団地再生についてアイデアを考えました。ひとつは高齢者対象のウォーキングプロジェクトの企画で、団地の空室を学生寮として提供することで、学生と高齢者との交流、地域経済効果のアップを図ります。入選には至らなかったのですが、現地の方に直接取材し、UR都市機構へのヒアリングなど、調査からじっくり考えて取り組むことができました。
永見 地域の課題は、若者の働き手がいないことです。大学生は、「ここにどんな魅力があったら自分が来たくなるか」と、自分に問うことになる。そこでマーケット感覚が鍛えられると思います。また、他学部との連携では、自分たちの所属学科の強みを意識して協働することができます。
徳永 まちづくりにおけるデザイン学科の強みは何ですか。
永見 いろいろな人が関わるまちづくりには、合意形成が大切です。そこに具体的なモノのデザインや、一枚の絵があると、意思を伝えやすい。プロダクトデザインやメディアデザインの勉強が生かされると思います。
土川 プロジェクト演習「信州鹿教湯温泉のためのデザイン提案」に取り組み、子どものためのデザインという課題でボードゲームを作りました。デザインはその地域に住む人のためのものであり、地域の人の心を動かすことを主目的にしなければならないと考えています。

【デザイン学科の学生による地域貢献提案事例】

●大学生観光まちづくりコンテスト

  • ・「きっかけはインターンシップ!学生あおもりんぐプロジェクト」(2015)
    ねぶた祭りの協力インターンシップを企画。PRプランを作成。
  • ・「Giro d’ Yamanashi」(2016)
    山梨をサイクリストの聖地にする提案。
    ロゴマーク、レース用ジャージをデザイン、走行ルートを計画。

●広島県呉市三角島活性化

  • ・「みかど島ぴっかりこキャンプ」(2015)
    星のきれいなキャンプ場を提案。
    電車のつり広告、パンフレットを作成し呉市にプレゼン。

●大学コンソーシアム八王子

  • ・「八王子クリテリウム」(2016)
    八王子市での自転車ロードレースイベント開催を企画。
    シンボルマークやポスター、グッズのデザイン提案。
広告のデザイン提案
ロードレースのジャージデザインを提案

一つの町と向き合い
調査から政策提言まで

川名 大学では17年9月、山梨県富士川町と包括連携協定を締結しました。これは徳永研究室が数年にわたって富士川町のまちづくり活動に参加し、デザイン学科のチームと合同で地域ブランド創生に取り組んだ成果でもあります。
徳永 15年からフィールド調査を行い、「大学生観光まちづくりコンテスト」に参加して「プロジェクトYターン!」と題した提案をしました。学生がアトリエとして空き家を活用する、留学生が農家にホームステイするといった企画のほか、郷土料理を活用した新レシピも考案しています。
髙橋 実際にみんなで空き家に宿泊し、「空き家の潜在価値は何か」を経験的に知りました。現地の人から学んだことと感じたことを持ち帰り、政策提案を考えて論文にまとめました。「富士川町まちづくりシンポジウム」という場で実際にそれを現地の方々の前で発表する機会をいただき、手応えを得ています。また、富士川町での経験をもとに、「八王子学生まちづくり協力隊」の創設も発表しました。学生がまちづくりに参加し、八王子市は周辺地域との連携を強化する。3者にメリットがあるプラットフォームをつくります。八王子市の問題解決が、富士川町の問題解決にもつながることを発見しました。
徳永 活動を通して、地方に対する見方が変わりましたか。
髙橋 地方の人々は、学生の提言にきちんと耳を傾け、真剣な意見をくれます。すばらしい経験ばかりで、私は活動によって好きな場所が増えていきました。都会と地方では人の数、交通機関のアクセス、情報量が圧倒的に違いますが、地方には豊かな自然、おいしい食べ物、温かい人があふれています。ふたつは全く別のものではなく、切り離せない関係性の上に成り立っている。お互いの魅力を知ることが重要だと思います。
川名 日本の地域活性化は、学問として取り組みがいのある、面白いテーマです。豊富なOBたちのネットワークも使い、国内だけでなく、国外も連携した地方創生を、これからも展開してほしいと思います。

【山梨県富士川町への提案事例】
  • ●郷土料理「みみ」を活用した地域ブランド創生
    新しいレシピ提案や認知度アップアイデアなど。
  • ●廃校の潜在能力を活用した芸術的地方創生〈廃校×アート〉
    文化施設やイベント会場としての廃校活用を提案。
  • ●富士川町における商店街の活性化とバス利用策
    にぎわいコミュニティースペース提案、バスダイヤへの考察。
  • ●ゆずのまち富士川 香る町プロジェクト
    アロマボトル、ブレスレットなどグッズ提案。
  • ●ジロ・デ・フジカワ
    自転車ロードレースを企画。
    大会シンボルマークやグッズのデザイン提案。
地域の人と郷土料理を調理
ゆずアロマボトル

『大学ランキング』杉澤編集長が見た「拓殖大学」

地域の中で現実の課題を解決

2020年の創立120周年に向けた「教育ルネサンス2020」の一環として、〝国内外の人と協働してチャレンジするタフな人間力〟の養成を目標に掲げる拓殖大学。その力は「地域の中で現実の課題を解決していくことで育つ」と川名明夫学長は述べています。創立当時から広く世界へと目を向けてきた一方で、地域連携センターを通じて地域創生への貢献にも力を入れている点が、拓殖大学のユニークな個性といえそうです。

学生がまちづくりに参加

そうした地域における課題解決のひとつのかたちが、山梨県富士川町での取り組みです。学生たちのまちづくりアイデアを政策提言としてまとめるだけでなく、その経験を地元・八王子に持ち帰り「八王子学生まちづくり協力隊」として活動。「八王子市の問題解決が富士川町にもつながる」「地方と都会の課題は別のものではなく切り離せない」という学生自身の気付きにつながっている点も素晴らしいと思います。今後はぜひ、海外とも連携した地方創生に取り組んでほしいですね。

杉澤誠記編集長
朝日新聞出版『大学ランキング』編集長

掲載大学一覧[関 東]

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