慶應義塾大学

Over 160 Years of Tradition and Innovation

〝半学半教〟の伝統が
多様な人材を育成する

すべての学生に
国際性豊かな教育を

長谷山塾長(日本最初の演説会堂として明治8年に開館した三田演説館<重要文化財>前にて)

 慶應義塾大学は、1858(安政5)年に創立された日本初の近代的高等教育機関で、民間有志の協力で運営される「義塾」の伝統を守りながら、日本を代表する総合大学に成長してきた。
 創立者である福澤諭吉は「一身独立して一国独立す」の信念に基づき、「民」の力による日本の近代化に力を入れ、特に、近代的な産業育成のために、多くの門下生を産業界に送り出した。「財界の慶應」と呼ばれる伝統は、現在まで続いている。
 数字で見ると、出身大学別東証一部上場企業の社長数において第1位、2013年Times Higher Education(THE)「世界的な大企業トップの輩出大学ランキング」では、世界第9位の評価を得た。
 大学別公認会計士試験合格者数で44年連続第1位を保持。国会議員の数で第2位。法曹界に目を向ければ、最高裁判所において法曹有資格者として初の女性判事を生み出し、法務省発表では、司法試験においても2013年に合格者数、合格率の両方で第1位の成績を収めた。
 スポーツの分野では、1920(大正9)年のオリンピックアントワープ大会で、慶應義塾大学出身の熊谷一弥選手が日本人第1号となるメダルをテニスで獲得し(銀)、その後、延べ130人を超えるオリンピック・パラリンピック選手を輩出。長谷山彰塾長は、こう語る。
 「教師と学生が互いに敬意をもって教え、かつ学ぶ半学半教の伝統。そしてキャンパスにあふれる自由な雰囲気が、慶應義塾の人材育成の豊かな土壌です」
 世界で活躍する多様な人材を育てるために、国際性の向上にも力を入れている。これまでに300を超える海外の大学・機関と交流協定を結び、大学院レベルでは海外の協定大学との間で、日本の大学の中では屈指の29のダブルディグリー・プログラムが用意されている。外国語で学位を取得できる総合政策学部・環境情報学部のGIGAや経済学部のPEARLをはじめ、全学部に開かれた、英語による総合教育科目のコースであるGICなど、外国語で習得できるコースも多数設置。この狙いについて長谷山塾長は「国際系の学部に所属する学生だけが国際化の恩恵を被るのではなく、留学生も含めすべての学生に国際性豊かな教育プログラムを提供することが目標」と話す。

良い人材の育成には
研究力が必要

 良い人材を育てるためには教育力の土台となる研究力の強化も必要だ。福澤諭吉を師と仰ぐ北里柴三郎により開設された医学部は2017年に開設100年を迎えた。看護医療学部、薬学部と合わせ医療系3学部の連携により、人生100年時代を見据えたライフサイエンス分野の研究や、医工連携による先端的な医療技術の開発、AIホスピタル構想も進む。湘南藤沢キャンパス(SFC)では、1990年の総合政策学部、環境情報学部の開設以来、IT技術をはじめとする革新的な研究分野の開拓に挑戦を続けるなど、大学全体がイノベーションを巻き起こす雰囲気にあふれている。
 これらの先端的な取り組みにより、2018年トムソン・ロイター社の「世界で最もイノベーティブな大学ランキング」において、総合74位の評価を受け、2019年にはTHE「世界大学インパクトランキング」で総合91位となり、京都大学、東京大学とともにランキング100位以内入りを達成した。
 「学校は人にものを教えるところにあらず。ただその天資の発達を妨げずして、よくこれを発育するための具なり」
 福澤諭吉が主張した通り、時代の転換期には知識を習得するだけではなく、未知の課題に遭遇した時に、問題の本質を見極める「洞察力」、解決法を発見できる「創造力」、そして異文化を理解し、違いを乗り越える「コミュニケーション能力」と、人間として普遍的な倫理観を備えた人材が必要である。長谷山塾長は、こう強調する。
 「『大学力とは何か』。この問いに答えを出すことは容易ではありません。『すぐに役立つものはすぐに役に立たなくなる』。大学は、その時々の流行に惑わされることなく人材を育成し、学問の力によって社会に貢献していく責務があると考えます」

SDGsへの取り組み

 2015年9月の国連サミットで採択された、持続可能な開発目標「SDGs(Sustainable Development Goals)」を実現するために、慶應義塾大学は多くの取り組みをしている。
 SDGs研究の第一人者である慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の蟹江憲史教授を代表として、2017年10月にSFC研究所xSDG・ラボ(エックスSDG・ラボ)を設置し、共同研究および、企業や自治体と連携する研究コンソーシアム「xSDGコンソーシアム」を推進している。
 xSDGコンソーシアムでは、産官学のコラボレーションを通じて、SDGs達成へ向けた優良事例を作り、日本から世界への発信とスケールアップをめざしている。
 また、産学連携イベント「SFC Open Research Forum 2019」(11月22-23日、東京ミッドタウン)では、「SDGsの次の社会」をテーマに掲げ、さまざまな研究プロジェクトの現状と将来計画を広く紹介する。
SFC研究所xSDG・ラボ »

THE「世界大学インパクトランキング」では、国際連合が提唱している17のSDGs(持続可能な開発目標)のうち11の目標について調査が行われ、慶應義塾大学は総合91位にランクされた
iPS細胞による臨床研究

 ヒトiPS 細胞を用いて損傷した脊髄(せきずい)を再生させるという臨床研究が始まる。「中枢神経系は、一度発達が終われば再生しない」という定説を打ち破るこの研究は、世界中の注目を集めている。
 中心となるのは、慶應義塾大学医学部生理学教室の岡野栄之教授と整形外科学教室の中村雅也教授。基礎研究から「不可能を可能にすること」に挑戦してきた岡野教授は、世界の研究を牽引(けんいん)する。「不治の病を治す挑戦は、基礎研究から始まるのです」と岡野教授は話す。
 岡野教授は学生時代、がんの分子生物学を研究していた。そして同時に、医学の限界をも思い知らされたという。不治の病への糸口は、基礎的な分子生物学などの新たな近代科学を導入しないと出てこない。基礎研究の成果を臨床現場に生かす「基礎・臨床一体型医学」の実現をめざし、新たな再生医療の道を切り拓いていく。

岡野教授のチームには、女性研究者も多い

CAMPUS TOPICS ①

数字で見る慶應義塾大学

CAMPUS TOPICS ②

慶應義塾ミュージアム・コモンズ
 慶應義塾大学は、160年を超える歴史のうちに集積された学内の文化財や学術資料を、相互に連携させて活用し保存していくために、新たな学術資料展示施設「慶應義塾ミュージアム・コモンズ(英語名:Keio Museum Commons)」を2021年3月(予定)に開設する。
 資料に根ざした領域横断的な研究・教育活動を発信し、多様な人材の交流を生み出すとともに、先端的なIT技術を駆使したアナログコンテンツとデジタルコンテンツの融合による新たな展示・収蔵モデルの提案を行う。
施設は三田キャンパス東側に隣接。文化財を起点とした交流を担う(完成予想図)

掲載大学一覧[関 東]

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