
進む拓大、世界を拓く
2020年に創立120周年を迎える拓殖大学。長きにわたって日本語教育に力を入れてきた拓殖大学に、来春、外国語学部国際日本語学科が新設される(2020年4月開設予定・設置認可申請中)。
1900年、台湾協会学校として設立された拓殖大学は、台湾で開発に携わる人材の育成を担っていたが、日本語教育については、1932年に当時の満州に設置された拓殖大学経営新京講習所にまでさかのぼることができる。戦後の1961年、インドネシア賠償留学生の受け入れが始まった際には、留学生たちの日本語教育を担うために拓殖大学日本語研修所を設立。2年後には拓殖大学語学研修所と名前を変え、留学生のみならず、日本に住む外国人に対する日本語教育も開始した。さらに1969年には日本語教師養成講座を設立し、日本語を教える教員の養成にも乗り出す。
1972年には留学生別科(現在の別科日本語教育課程)を設立し、日本の大学や大学院への留学をめざす海外の学生に対して日本語の予備教育ができるようになった。さらには1997年に大学院の言語教育研究科修士課程、1999年に同博士課程を設立した。
「本学が続けてきた日本語教育について、外国人学生が大学に入る前の専門学校的な位置づけで留学生別科ができました。学部卒業後に学べる大学院もあります。ところが、日本語教育の学部・学科だけがなかったのです。日本語学科を作るという構想は以前からありました。それが、ここ数年のインバウンドの急増、日本文化への興味の高まりなどから日本語教育を担う人材のニーズが高まり、満を持しての新設に至ったわけです」
川名明夫学長は、このように新学科開設の経緯を語る。
「日本語学科」ではなく、頭に「国際」がついているのは、単に日本語を習得するというだけではなく、学生には日本文化や日本の事情をしっかり理解したうえで日本語を学んでもらいたいという意味が込められているからだ。
定員は50人を予定し、日本人学生と海外からの留学生がともに学ぶ環境作りをめざす。カリキュラムには「クールジャパン論」「日本語・日本人論」「異文化理解」など、日本文化への理解を深める授業を設ける予定だ。
「積極的に海外へ出かけて行って、日本語と現地の言葉を使いながら活躍できる人材を育成したい。在学中に海外へ行って日本語を教える経験ができるよう、留学のプログラムを整えているところです」
新学科設立と同じタイミングの来春から、既存の学科である外国語学部英米語学科、国際学部国際学科もそれぞれ30人、50人の増員を予定している。
外国語学部英米語学科については、インバウンドの急増や幼児英語教育の広がり、小学校からの英語の必修化などを受け、英語を教えられる人材育成のニーズに応えるためというのが増員の理由だ。
国際学部国際学科に関しては、一国だけでは解決できない問題が増加しているという世界的な状況に対応できる人材の育成を強化したい、ということがまず一つある。
「国際学部はもともと〝国際協力〟の力になれる人材の育成をめざして設けられた学部です。発展途上国へ出かけて行って、その地域の人と一緒に、現地の開発を担うことができる人材です」
創立120周年に向けて、現在は「教育ルネサンス」を掲げた教育改革を進めている。
「人間性、専門性、国際性を兼ね備えた人材の育成をめざしての取り組みで、国際日本語学科の開設もその中の一つですし、英米語学科、国際学科の定員増も同様です。国際性を持ち、積極的にさまざまなことに関われるような人材を育てたいと思っています」
2015年9月の国連サミットで、SDGs(持続可能な開発目標)が、2016年から2030年までの国際目標として採択された。持続可能な世界を実現するための17のゴール、169のターゲットから構成され、地球上の誰一人として取り残さないことを誓い、発展途上国のみならず先進国自身が取り組む普遍的なものとされている。
拓殖大学の建学の精神は「積極進取の気概とあらゆる民族から敬慕されるに値する教養と品格を具えた有為な人材の育成」である。SDGsが採択されるはるかに前から、拓殖大学はもともと建学の精神として、同じ方向をめざしてきたのだ。
「本学の建学の精神そのものが、SDGsのめざすところと合致していますので、その目標へ向けてみんなが取り組むという気持ちでやっていきたいと思っています。明るく元気に、世界へ向かって自分で考えて行動できるような人材を育成したい。これからのAIの時代に一番重要になるのは、『自分で考える』ということです。大量に入ってくる情報に流されることなく、自分で考えて自分で行動する。本学に入っても、常にそのようなことを頭に入れておいてほしいですね」
求める人物像を川名学長は笑顔で語った。時代も平成から令和へ移り、創立120周年を迎える拓殖大学は、建学の精神にのっとり、これからもグローバルな人材の育成を続けてゆく。