明治大学

「個」を強め、
世界をつなぎ、未来へ。

環境を守り、生命をつなぐ
若き研究者たちの挑戦

 「農学」は命を支える学問だ。食、生命、環境、バイオ、エネルギーなど、学問領域も広い。明治大学は「農学部」を有する数少ない私立総合大学で、人類に寄与する世界レベルの研究も生まれている。明治大学卒業生の親睦団体・連合駿台会が優れた研究者に贈る「学術賞・学術奨励賞」を受賞した、農芸化学科の教員3人に話を聞いた。

微細藻類から
プラスチックを作る

上から時計回りに小山内 崇准教授、瀬戸義哉専任講師、石丸喜朗准教授

──受賞の対象になった研究について教えてください。

小山内 非常に小さい藻類を使って、プラスチックを作る生産法の開発です。石油由来のプラスチックが、海洋をはじめ自然環境に悪影響を及ぼしています。プラスチックはさまざまな原料から作られますが、その一つが貝のうま味成分として知られるコハク酸です。コハク酸由来のプラスチックは、生分解性を有するため、環境への負荷も少ないのです。生物由来のコハク酸はすでに実用化されていますが、生成する際に糖を必要とするので食料との競合がネックになっていました。
 そこで着目したのが、二酸化炭素を使い、発酵の力で微細藻類からコハク酸を作る方法です。発酵させることで細胞を壊さずにコハク酸を生産できるという利点がありますが、難点は生産効率が悪いことです。今は付加価値の高い食用の色素などとの組み合わせを考えながら、効率のよいバイオプラスチック作りに取り組んでいます。

石丸 受賞のテーマは、刷子細胞によるエネルギー代謝調節機構です。刷子細胞とは、気管や小腸、胃などの消化管の壁にわずかに存在する細胞のことです。小腸は主に四つの細胞から成りますが刷子細胞は0.4%しか存在しません。ところが2016年、その刷子細胞が寄生虫感染のセンサーの役割を果たしていることが発見されました。
 そこで、刷子細胞のない状態だとどのようなことが起きるか、マウスを使って研究を行いました。刷子細胞のないマウスと通常のマウスに対して同じように餌を与えたところ、前者の体重は増えずに成長が抑えられました。その原因は完全には解明されていませんが、この仕組みが肥満や糖尿病、アレルギー疾患の予防や治療に役立つのではないかと期待されます。

瀬戸 研究テーマは植物ホルモンで、受賞したのはストリゴラクトン受容のメカニズムです。植物はストリゴラクトンというホルモンが作用することで、枝分かれを適切に制御しています。その一方で植物は、根っこからこのホルモンを放出し、土壌の微生物をおびき寄せて共生することで栄養を獲得しています。ところが寄生植物の一種であるストライガは、このホルモンを感知すると発芽して根っこから侵入して寄生し、栄養分を吸い取って枯らしてしまうのです。日本での寄生植物の被害は大きくありませんが、アフリカでは深刻な食料被害の原因となっています。

先輩研究者が若手を
サポートする学風

──皆さんは他大学の出身ですが、明治大学の研究環境はいかがでしょうか。

石丸 組織が非常にフラットなところがいいですね。例えば前職では教授を決めるときには教授にしか投票権がなかったのですが、明治大学では准教授や講師にも投票権があります。このような雰囲気が、研究の活力を生んでいると感じます。また、年上の先生が若手を盛り立てる気風があります。大型機器を購入するときは、先輩の先生が新任の先生に譲ることに驚きました。明治大学の文化でしょうか。

小山内・瀬戸 確かにそうです。

石丸 「権利自由」「独立自治」の建学の精神が、研究の場にも根づいていると感じました。私たちは3人とも出身が違いますが、明治大学にはいろいろな背景の研究者がいて多様性があります。

瀬戸 それが健全ですよね。明治大学は、一人の教員が一つの研究室を持っています。他大学では研究室が一つあったら、そこに教授や准教授が複数いる場合も多く、研究テーマを決める際に気を遣うこともあるかと思います。自分の追求するテーマを、周囲を気にせず研究できる環境はありがたいです。
 また、研究費の面でも、旧帝大クラスと比べても遜色ないと思います。学内にも科研費と似たようなシステムがあって、私も昨年度採択されました。

小山内 確かに研究へのサポートは手厚いですね。研究費のほかにも、英語の論文を校正するための予算サポートがありますし、論文を出す場合の資金補助もあります。明治大学の学生は、優秀でポテンシャルも高いので助かります。自分たちで論文もよく書いていますね。

石丸 学生が優秀なのは、小山内先生が上手に回しているからだと思いますよ。そうそうできることではありません。

瀬戸 確かに小山内先生の研究室は論文発表が多い。刺激されます(笑)。

小山内 たまたま私たちが受賞しましたが、農学部の先生方は質の高い論文を多く発表しています。明治大学は文系のイメージが強いかもしれませんが、今後は理系の研究成果もたくさん発信されていくと思います。

結果が出なくても
努力は必ず報われる

──3人は研究とともに教育にも携わっています。どういう点に注意して指導をしていますか。

瀬戸 自身の経験ともリンクしますが、頑張って努力すれば報われるということを伝えたい。研究は、成果につながらないことの方が多いんです。でも成果に結びつかなくても努力すれば、絶対に評価してくれる人がいて、何かしら実を結びます。

小山内 明治大学は、実験が好きで目的意識を持って入った熱心な学生が多いです。成果を味わってもらうために、時間を区切って効率的な指導をするようにしています。でも、素直で優秀ではありますが、その素直さが弱点にならないかを危惧しています。社会に出て揉(も)まれたときに、ちょっと心配ですね。

石丸 そういう傾向はありますね。素直な点は長所ですが、与えられたことをこなしているような受け身の姿勢ではなく、自分で課題を見つけ解決できるようになってほしいと思います。

──コロナ禍で、あらためて命について考える機会が多くなりました。皆さんの研究は、まさに命に直結すると思います。今後の抱負を聞かせてください。

瀬戸 植物には、地球環境を救う力があります。1940年代~60年代にかけて、化学肥料や高収量品種の導入によりその後、穀物の生産性が飛躍的に向上し「緑の革命」と呼ばれています。この緑の革命には植物ホルモンが深くかかわっていることが後に明らかにされました。寄生植物は世界中で問題になっており、これから日本も被害を受けるかもしれない。私の研究が、次の緑の革命につながるような成果を出せたらと思います。

石丸 農学は医学領域とかぶる分野がありますが、医学は病気を治すのに対して農学は病気を未然に防ぎます。私の研究は肥満や糖尿病、アレルギー疾患の予防に役立つことが期待されます。健康で生きることは、何より本人の幸せにつながると思います。

小山内 分子生物学は、生命現象を追求する学問の一つで、生き物とは何かを明らかにする研究です。将来、必ず役に立つ学問であり、その応用であるバイオプラスチックは、環境に優しい物質です。研究を進めて、日常的に使っている製品などにも展開できるようになればいいなと思います。

VOICE - 学長の声

「同心協力」の精神で
大学のコミュニティを再生していく

 世界は今、大きな転換期を迎えている。グローバル経済は歴史上まれに見る豊かさをもたらす一方で、さまざまなひずみを生みだしている。エネルギーを膨大に使い自然環境を破壊し、気候変動を起こして生態系を崩してしまった。今起こっているコロナ禍も、人々の自由な往来が感染を拡大させた。グローバル化のネガティブな側面と言えるだろう。
 1950年~70年代にかけて、欧米諸国が経済の成熟化を迎えた時期に、日本はその狭間(はざま)で急成長を遂げた。それがあまりにも劇的であったために、今でもその成功体験から脱却できないでいる。しかし、グローバル化経済が内包する諸問題があぶり出された現在、私たちは世界と協力しながら同じ目標を見据えて、問題の解決に当たらなければならない。日本はまさにそのあり方を根本から問われている。
 大学での学びも、時代にあわせて変わらなければならない。しかし、個々の大学がすべての問題に対応するには限界がある。これからはクロスアポイントメント制度を導入し、国境を越えて海外の大学と連携・融合することも視野に入れていく。
 明治大学にない学びを受け入れ、逆に我々が持っているコンテンツを提供する。新型コロナウイルス感染症の影響でオンラインによる講義が定着しつつあるが、これを機にオンラインとオフラインを組み合わせながらベストミックスを探っていくことが今後の課題の一つである。
 4月に新学長となり、任務の一つとして学内の無駄を省くことを掲げている。教職員が本来の役割に時間を使えるよう事務処理をICT技術を駆使して効率化し、空いた時間を研究や学生の教育のために使ってもらう。本学は、2022年をめどに情報システムを抜本的に更新する時期を迎えており、これを機に教育と研究、事務を連携して徹底した効率化を図っていきたい。
 今後の課題は研究成果の発信だ。明治大学には、世界的な研究をしている教員が多くいる。自ら発信している人もいるが、なかには苦手意識を持つ人もいる。大学が研究成果の発信支援を行って、明治発の研究を世界へ広げるとともに、研究のリーチも広げていきたい。
 明治大学は創立以来、「権利自由」「独立自治」という建学の精神のもとで教育を行ってきたが、もう一つの創立以来の精神である「同心協力」を実現させたい。創成期、コネクションもバックグラウンドもない血気盛んな若者が私財を投げうって明治大学を創り、貧しい学生からは学費も取らなかったという。コロナ禍が原因の退学者を出さないためにも、息の長い支援を目指して、校友(卒業生)、教職員の寄付等を原資とするファンドを設立した。
 コロナ禍で難しいかじ取りになるが、これをきっかけに学生や教職員、保護者、校友会が一体となって、明治大学のコミュニティを再生していく。

大六野耕作学長

CAMPUS TOPICS

各種動画配信やオンライン相談会を実施
ホームページで情報更新中!
 新型コロナウイルスの影響により、オープンキャンパスや大学説明会・進学相談会などのイベントが中止となる中、明治大学では受験生のために代替策として、YouTubeでの各種動画配信やZoomを使った「オンライン相談会」を実施している。
 「オンライン相談会」は、6月6日(土)の初開催以降、土曜を中心に定期的に開催されており、入試部署のスタッフらが受験生の個別相談に対応。さらに「オープンキャンパス@home」と題したWEB上のイベントも、各学部のガイダンス・模擬授業動画や学生によるキャンパスツアー動画、Zoomによる個別相談などを組み合わせて、8月に実施予定だ。
 また、全10学部それぞれのコンセプトを表現したイメージ動画も6月下旬より順次公開している。これらのコンテンツやイベントを活用し、情報収集や不安解消に役立てよう。
10学部の特長がわかるイメージ動画も公開中

 【動画はこちら】https://www.youtube.com/user/Meijiglobal

掲載大学一覧[関 東]

OPEN