法政大学

自由を生き抜く実践知

制限のあるいまこそ
自由を守るための知を磨こう

これからの社会と
大学が交わす「約束」

この春就任した廣瀬克哉総長

 2021年4月に就任した廣瀬克哉総長は、3月まで法政大学の副学長を務めていた。さらに法学部で30年来教鞭をとってきた、同大のベテラン教員でもある。大学を熟知する「新総長」に今後の方針を聞いた。

 「法政大学に限らず、いま、大学と社会は『約束』を結び直す時期に来ていると考えます」

 今日に至るまで、日本では広く新卒一括採用が行われてきた。これは旧来の「大学と社会との約束」のひとつだろう。だが、こうした「就職の前段階」としての色合いが強すぎたためか、「日本の大学は教育をしていない」という批判の声が上がることもあった。

 一方で、大学が「即戦力」や「グローバル人材」を養成することへの期待は高まっている。この状況を、廣瀬総長は「過大な期待と過小評価が混在している状況だ」と話す。

 「日本の学部教育は専門教育のカリキュラム内容でいえば世界でもトップクラス、海外の大学院修士課程レベルに匹敵する分野もあります。ただ、それを日本語で教育していますから、留学経験者と比べ、語学を生かして即戦力となるのは難しい。また社会経験のない同年代の若者がほとんどという環境では学ぶにも限界がある。つまり、日本の大学には強みと弱みがあるということです。その両面を含んだ日本の大学教育の成果や、本学が育成する人材の特色を社会に示し、認識のギャップを埋めていく必要があります」

 廣瀬総長は学生が学んで得た「手ごたえ」を可視化し、見えにくい価値を内外に伝えることの重要さを強調する。16年に制定された大学憲章「自由を生き抜く実践知」も、法政大学のめざす社会への「約束」を伝えるために打ち出したものだ。

教育成果を可視化し
学内外で活用

「2021年・2020年入学式」を日本武道館にて3部制で開催した

 教育の現場で生まれる成果を客観的なデータに表すことは難しく、これまでは教員の知見や学生の実感として蓄積されるのみだった。廣瀬総長は、同大の学部横断型科目を例に挙げてこう説明する。

 「成績優秀者が、全学部の約2000の科目を自由に学べる制度があります。公開科目に限らず、どの学部の科目も自分の興味に応じて学べます。その学生たちの履修実績を分析したところ、他学部科目の中に自分自身の学びたいことの体系を見いだし、科目を選び取っていることが分かりました。そこから学部をまたいだ科目間の関連性が浮かびあがり、学部を越えた新たなカリキュラムが生まれる可能性も見えてきました。それを具体化したのが、複数の学部が設置している科目を体系的に編成したサティフィケート・プログラムです」

 例えばデザイン工学部の公開科目である「都市デザイン」は、まちづくりを学ぶ法学部の学生にも人気だ。異なる学部の学生が互いに刺激し合い、自らの得意分野を意識しながら学ぶ。15もの学部を有する総合大学ならではのメリットだが、だからこそ学部間での情報共有はハードルが高い。しかし、どんな学部の学生がどの公開科目を履修しているかなどのデータが可視化され共有されれば、教育効果はより高まる。法政大学がいま提供している科目編成が秘める可能性とその広がりを、多くの学生に示すことができるようになるからだ。その実現のためにも、廣瀬総長自身の主導で大学のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を進めているところだという。

 「豊富な学びの機会を学生に『発見』してもらうためにも、教員が学問の面白さを学生に見せる努力も必要です。大学の教員は研究者でもありますから、『これまでわかっていなかったことがわかる瞬間』を、研究の第一線で一緒に経験することができる。これが高等教育の醍醐(だいご)味ですね」

いまできる最善を尽くし
「行きたい未来」へ

2021年1月に全体工事を完了した市ケ谷キャンパス。60年以上親しまれてきた旧校舎のデザインも継承されている

 研究を通じて社会に貢献することは、廣瀬総長の掲げる「手ごたえの可視化」の最たるものといえる。こうした取り組みを通じて、同大は社会に知を還元し、よりよい未来をつくる学びの場をめざす。

 同大の授業は現在、対面式のほか、対面とオンラインのハイブリッド型、同時配信のハイフレックス型、動画や資料を配信するオンデマンド型など、多様な形式を展開している。現在はそのノウハウも共有され、教員は複数の授業形式を組み合わせて活用しているという。

 廣瀬総長はオンライン授業について、「課題があったり発言が求められたりするため、多くの学生が受け身ではなくなりました。動画を繰り返し見られる授業では聞き逃しや取りこぼしも減りました。このメリットは維持すべきです」と語った。

 先の見えないコロナ禍ではあるが、廣瀬総長は「この環境でできることに知恵を絞ろう」と、学生たちを励まし続ける。

 「いま海外渡航ができなくても、オンラインでつながることはできる。協定を結んでいる海外の大学と声をかけ合い、気軽に各国の学生と学べるようにもなりました。遠くの人との距離が縮まったことでチャンスが増えたとも言えます」

 旅行業界や航空業界を志望する学生も多いが、業界が採用を再開する時まで、何をして過ごすかが大切だと言う。

 「長い人生のキャリア後半まで考えた時、コロナ禍にかかわらず、自己プロデュース力をつけることは必須です」

 それは内定をとるための短期的なテクニックではなく、「自分の行きたいところへたどり着くための力」だと廣瀬総長は語る。学んで得た「手ごたえ」を人に伝えることで、道は開けるものだ。
 この春、法政大学は新入生を分けて3部制で入学式を開催した。その式辞で、廣瀬総長は大学憲章を使って学生に語りかけた。

 「制約のある時期だからこそ、大学で『自由を生き抜く実践知』を磨いてください。法政大学の教職員は全力で応援します」

 法政大学が結び直す社会との「約束」は、同大と学生が交わす約束でもあるはずだ。

CAMPUS TOPICS ①

「実践知」を通じ、SDGs達成に向けて
新たな答えを生み出す人材の育成をめざす

 法政大学では、大学におけるSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みについて、2018年に「総長ステイトメント」を発表。19年度からは全学部から提供された約700の科目を「SDGs科目群」に設定し、「SDGsサティフィケート・プログラム」を開始した。学部を越えた履修が可能で、所定の単位を取得することで修了証(サティフィケート)が授与される。

 また同大では、地域と共同での全学プロジェクトも推進している。20年度は岩手県陸前高田市との「SDGs連携協定」に基づいた「SDGsワークショップ」を、また札幌市と北海道大学とともに「オンラインSDGs人材育成プログラム」を開催。さらに関西大学と連携した「KANDAI×HOSEI SDGsアクションプランコンテスト」では、17のゴールに向けた具体的なプランを提案し合った。学内でもSDGsに関わるイベント企画や運営などに積極的に取り組む学生団体「SDGs Action Students of HOSEI/SASH(サッシュ)」を組織するなど、SDGs達成に向けて精力的に活動を続けている。

「KANDAI×HOSEI SDGsアクションプランコンテスト」表彰式

CAMPUS TOPICS ②

コロナ禍でも充実した学生生活を!
学生生活応援プロジェクトなど支援の輪広がる

 2020年4月、コロナ禍でも学生生活の充実を図るべく、法政大学は「学生生活応援プロジェクト」を立ち上げた。オンラインでの活動が活発で、同年度だけで109ものプロジェクトが実施された(一部対面)。例えば、中国・韓国・イギリス・北欧などの大学との「オンライン学生交流会」や、語学習得や海外の文化を理解するための講座、ボランティア活動やキャリア支援、図書館の有効活用を目的とする講座、各界で活躍する卒業生の協力による講座、文化系サークルや学生のアイデアを反映した講座など、そのジャンルは多岐にわたる。

 また、2020年度の「自由を生き抜く実践知大賞」(※)には「コロナ禍で孤立する留学生のオンライン学習支援(受賞者:『多文化教育』科目の有志32名)」が選ばれた。通学できずに孤独と不安を抱えながらも懸命に学ぶ留学生たちを、学生有志がオンラインでの交流や語学支援活動で支援した。このように、学生同士が自主的に支え合う取り組みも新たに生まれている。

(※)法政大学憲章を体現する教育、研究、課外活動等を年1回顕彰するイベント

2020年度「自由を生き抜く実践知大賞」のプレゼンテーションの様子

掲載大学一覧[関 東]

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