
横浜の地から未来をつくる
神奈川大学は1928年、横浜で働く勤労青年たちの旺盛な勉学需要に応える学び舎(や)「横浜学院」を桜木町に創設したことから始まる。創立者・米田吉盛が掲げた「教育は人を造るにあり」という理念を受け継ぎ、日本はもとより、国際社会で活躍できるあまたの人材が輩出してきた。横浜とともに歴史を刻みながら、8学部・大学院8研究科を擁する総合大学へと発展し、2028年に創立100周年を迎える。その先の新しい時代を見据え、さらなる発展を遂げるべく、さまざまな改革に取り組んでいる。
その象徴ともいえるのが、今年4月にオープンした「みなとみらいキャンパス」(横浜市西区)だ。新キャンパスには、グローバル教育に重点を置く「経営学部」「外国語学部」「国際日本学部」の3学部が集結し、約5千人の学生が学んでいる。兼子良夫学長は「新キャンパスは創立の地に近く、まさに原点回帰。『人材の育成』という創立の意義に立ち返り、新たな時代にふさわしい真のグローバル人材を育てていきたい」と語る。
みなとみらい地区は、数多くの世界的な企業や官庁、国際会議場、ホテルなどが集まる「国際化の縮図」のような場所。美術館や音楽ホール、劇場など文化施設も多い。開国後に海外との接点としての役割を果たしてきた横浜港が近く、日本の近代化の歴史を感じられる街でもある。世界で活躍しようとする学生にとって、みなとみらい地区全体が大きなキャンパスであり、学びの場だ。
「近年は教員と学生が教室や研究室を出て、地域や社会で起こる事象を題材に学んだり、企業と連携して研究を行ったりするなど、大学の教育スタイルは変わりつつあります。学生はこの土地で刺激を受け、歴史や文化を肌で感じながらさまざまな人と触れ合い、多くのことを吸収してほしい。みなとみらいという刺激的な場所に大学が飛び込むことによって、どのような化学反応が起こるのか。我々の教育プログラムと立地がもたらす相乗効果を期待しています」
21階建ての都市型・未来型キャンパスの内部は、みなとみらいでの学びを後押しする工夫があふれている。3階までの低層階は、「ソーシャルコモンズ」と呼ばれる交流の場。図書館やオープンイノベーション関連施設、グローバルラウンジ、カフェといった多様なスペースに、教員や学生はもとより、市民、オフィスワーカー、観光客などあらゆる人が自由に集い、交流を楽しむ。
さらに上層階には、吹き抜けを利用した開放的なプレゼンフィールドやガラス張りの教室、全学部の教員が集まれるラウンジといった、人と人がオープンに対話をしながら連携できる場が設けられている。
「キャンパスは『知』の拠点。さまざまな立場の人が自由に交流することで、新たな教育や研究が生まれます」
神奈川大学は22年4月に工学部建築学科を改組し、「建築学部」を新設する(設置届出中)。さらに23年には、湘南ひらつかキャンパス(神奈川県平塚市)にある理学部の横浜キャンパス(横浜市神奈川区)移転を契機に、各学部との連携を強化するなど、未来を見据えた改革を進めている。
新設される建築学部では、建築を「たてもの」としてだけでなく、「人間の暮らしをかたちづくる環境すべて」という広い視点で捉える。教育プログラムには建築学に加えて、社会科学や人文科学、自然科学といった幅広い分野を取り込み、さまざまな立場から、建築を介してより良い暮らしや社会を提案できる「建築の専門家」を育てていく。
一方、理学部のキャンパス移転によって、神奈川大学の全学部が横浜市内にある二つのキャンパスに集結。国際都市「YOKOHAMA」の総合大学として再始動する。
「二つのキャンパスは距離が近く、行き来しやすい。例えば、語学や教養では全学部共通のプログラムを組むことができるなど、新しい教育につながる。また、興味のある他学部の授業を受けるといったフレキシブルな学び方も可能になります。総合大学ならではのメリットを存分に生かせるようになると考えています」
昨年来の新型コロナウイルス感染拡大を受けて、早い段階から遠隔授業のためのシステムやインフラを整備。同時に対面授業再開に向けて、換気機能の強化やパーティションの設置、制菌コーティングなど、キャンパスの感染対策を充実させてきた。そのため、対面、オンライン、そして両者を組み合わせたハイフレックス型授業など、さまざまなスタイルで授業を提供できる態勢が整っている。
「感染状況に加え、学部学科ごとに授業の内容や規模などを考慮し、授業スタイルを選択しています」
未来を拓(ひら)く学生たちが自ら学び、考え、成長していくために、神奈川大学は最高の教育と環境を提供し続けていく。
神奈川大学では1933年から、独自の奨学金制度として「給費生制度」を設置。単に経済援助を目的とするのではなく、全国から優秀な人材を募り、その才能を育成することに重きを置く。4年間で最大880万円の奨学金が給付され、返還の義務はない。(毎年継続審査あり)
給費生試験は一般入試と同じ3科目型で、今年の試験日は12月19日(日)。今年度は多くの受験生が地元で受験できるよう会場を増やし、全国22会場で実施する。現役・既卒の区別なく受験でき、神奈川大学のほかの入試や他大学との併願も可能だ。合格発表は来年1月12日(水)。ウェブサイトで科目ごとの得点を、本人にのみ開示する。なお、給費生に採用されなかった場合も、2月の一般入試の合格者と同等もしくはそれ以上の学力を有すると認められた受験生は、一般入試を免除して入学が許可される。
横浜市の住宅街に建つ「神奈川大学栗田谷アカデメイア」は、約200人の留学生と日本人学生が暮らす国際学生寮だ。卒業生の萬玉(まんぎょく)直子氏が「まちのような国際学生寮」をコンセプトに設計した。1階から4階まで吹き抜けを配した開放的なデザインで、館内約20カ所にさまざまなデザインの「ポット」と呼ばれるオープンスペースを設置。少人数で作業や会話を楽しめる共用空間として活用できるようにした。個人のスペースは約7m2の寮室で、室内機能を寝室に特化したことで、積極的に部屋を出て会話するなど、多国籍の学生との自然な交流が生まれるという。
「集まって住むことから得られる学び」を重視したデザインが評価され、2020年度のグッドデザイン・ベスト100を受賞した。国際交流に力を入れている神奈川大学だからこそ、このデザインが生まれたといえるだろう。