
多国籍キャンパスで次代が求める国際感覚を養う
予期せぬ感染症拡大に端を発し、世界は分断されたままだ。不安定な情勢で他者との向き合い方や行動が問われた一年間、「心のありよう」に思いをはせた人は少なくないだろう。
東京国際大学(埼玉県川越市)は、1965年の創学以来「公徳心を体した真の国際人の養成」を掲げてきた。高等教育機関が心を説く理由について、倉田信靖理事長・総長はこう語る。
「人種や民族、宗教、政治などで差別や対立が生じるのは、個々の利益を求めることで和が欠けてしまうからです。公(おおやけ)の和を求め協調する姿勢があれば争いを乗り越えることができます。東京国際大学が是とする『公徳心』の原点は和であり、我が国では十七条憲法の時代から大切にしてきました。これは世界に伝えていくべき普遍の価値観でしょう。私たちは今、令和という時代を生きていますが、この元号はBeautiful Harmony(美しい調和)と英訳されました。私はこの元号と『公徳心』という言葉が共通して表すものが、この時代にこそ必要なものだと感じます。大学教育の目的は、人類社会に資することです。国内外で活躍せんとする若者たちに、精神の軸をつくる学びと環境を提供し続けます」
同大学では養成すべき真の国際人について、未来へ向かう「大志(ビジョン)」を掲げ、行動する「勇気(カレッジ)」と磨かれた「知性(インテリジェンス)」を備えた人材と位置付ける。この三つを、徹底した外国語教育と専門教育を通じてバランスよく伸ばしているという。近年は「THE 世界大学ランキング日本版2021」の国際性で首都圏4位(全国13位)にランクされるなど教育調査機関からの評価が高まり、入学志望者も増加。今年度から6学部10学科となり、87の国と地域から集う留学生を含む約6300人が学ぶ総合大学として、さらに存在感を強めている。
目的意識が明確な学生が集う東京国際大学では、卒業までに学生の約7人に1人が留学を経験する。学内には「品格のある英語」習得のための教育体制が整い、多様な留学プログラムも用意されている。なかでも最大の特徴は、英語教育組織GTI(Global Teaching Institute)によるレベル別授業だ。GTIを構成するのは、英語を母語とする約50人の教員たち。少人数制の対話型で一科目60分・週3回実施され、学生は実践的なコミュニケーションを経験する。「相手の立場を尊重する英語力」の育成には定評があり、語学力や外交スキルが問われる「模擬国連」でも優秀な成績を収めている。
昨年度はコロナ禍対応の学修環境を整備した。4月から全学で導入したオンライン授業に加え、GTI教員らが常駐する国際交流拠点のEnglish PLAZAをインターネット上にも展開。気軽な英会話が楽しめるバーチャル・カフェや、GTI教員とマンツーマンで授業の予復習ができるアカデミックアドバイジングなど、オンラインでも多くの学生に利用されている。
独自の留学プログラムASP(American Studies Program)は、アメリカの姉妹校ウィラメット大学の学生寮で約1年間過ごしリベラルアーツを学ぶものだ。例年およそ120人が参加するが、2020年の参加学生はコロナ禍を受け昨年4月に全員が無事帰国。以降はGTIやEnglish PLAZAなどを活用し、「英語のシャワー」を浴びるような学修を続けている。学生の満足度も高いという。現在は情勢に鑑みつつ、来秋の再開に向けて調整中だ。ほかにも、単位互換による長期留学を求める学生に向けて、同大学が加盟する世界的な交換留学推進組織ISEP(International Student Exchange Program)や、独自の留学プログラム協定校と留学再開への準備を行っている。この4月には、第1キャンパスで留学フェアを開催した。学内の国際交流センターでは個別相談も受け付けており、アフターコロナを見据えた動きを加速させている。
「学生にとっても大学にとっても、大きな試練が続いています。しかし、長年にわたり多数の留学プログラムを実施してきた経験が柔軟で緊密な連携を生み、本学の教育体制はいささかも揺らぐことはありませんでした。これからも、国内の学生と海外からの留学生たちの不安を払拭(ふっしょく)し、期待に応える学びを拡充していきます」
一人ひとりに向き合う手厚いサポートと環境整備は、語学教育にとどまらない。学びの柱の一つに据えるスポーツでは、世界で活躍した指導者を招いている。その指導は和と礼節を重んじ、弱者にも配慮する心を育むものだ。多くの強化クラブが拠点とする埼玉県坂戸市のキャンパス(総合グラウンド)は、約17万平方㍍の敷地に、トレーニングルームはもちろん、公式試合ができる野球場やサッカー場、陸上競技場、ゴルフレンジなどを完備する。一流の指導と充実の施設で、サッカーなどの団体競技や駅伝、ウエイトリフティングをはじめとする個人競技の選手たちが活動。いずれも目覚ましい活躍を見せ、知名度を上げている。
倉田理事長・総長は、こうしたスポーツへの注力は健康づくりへの足がかりでもあったと明かす。今年度開設された医療健康学部では、理学療法士の育成がスタートした。
「本学では国の求めに応じ世界に和をもたらす人材の育成と、そのための学問の発展に注力しています。新学部開設によって、高齢化の進む日本社会に対し、具体的かつ直接的に貢献することを目指しました」
ほかにも東京国際大学では、観光やビッグデータの活用といった新たな学問領域も重視している。国内外の情勢と未来を見据えた独自の施策が、学外評価が高まる要因の一つと言えるだろう。
学びとともに文化の振興にも取り組む同大学。茶道や能、狂言の第一人者を教授に迎え、日本に関心を持って学ぶ留学生たちに、礼節の伝統と奥ゆかしさを伝えている。日本人学生が自国の素晴らしさを体感する機会にもなっているという。
「50年以上にわたり使命としてきたのは、時代の求めに応じ、国内外問わずどのような環境でも活躍できる人材の育成です。そのために、学生がいかに大学で学ぶ意義を感じられるか、本学の精神を体得することができるか、東京国際大学はそれを問い続けています。道をひらくのは皆さんの意志です。ぜひ私たちと共に歩みましょう」
東京・池袋のサンシャインシティに隣接するエリアに22階建てのビルキャンパスが誕生する。都市型キャンパスを目指し、留学生と共に英語で専門科目を学ぶE-Trackをはじめとするグローバル教育機能を集約。このキャンパスで学ぶ学生約3500人のうち、約2000人は100以上の国と地域から集う留学生で構成する予定。川越市のキャンパスと同様に留学生の出身国の国旗を掲揚するという。また、日本の伝統が体感できる三つの茶室を設けるほか、研究と文化活動を推進する日本文化研究所を移転させる。特別栄誉教授として迎えた四世梅若実氏(観世流シテ方能楽師/人間国宝)、野村萬氏(和泉流狂言師/人間国宝)ら伝統芸能の功労者が教壇に立つことも決定した。
人口減少と高齢化という日本の課題に正面から向き合うべく、今年度から医療健康学部を開設。医療・福祉分野での活躍はもちろん、健康づくりやスポーツ文化の発展に寄与する理学療法士の育成を目指す。100を超える実習施設と提携する臨床実習が特徴で、英語対応などの社会的なニーズにも応えるカリキュラムが編成されている。チーム医療の一翼を担うための臨床理学療法に加え、スポーツ系学科と連携するスポーツ理学療法、外傷や疾病のみならず予防の見地からアプローチする予防理学療法の三つからなる履修モデルを設けたことで、幅広い進路選択が可能に。人の心に寄り添いながら身体の機能を回復させることを目指している。
来年度から商学部に開設されるグローバルデータサイエンスコースは、英語をベースとして注目の学問領域であるデータサイエンスを学ぶ。1・2年次はGTIで英語をブラッシュアップし、統計解析やAI(人工知能)デザインなどに触れる。3年次以降はTOEIC®︎700点以上を前提に、プログラミングや暗号通貨といった先端テクノロジーやデジタルマーケティング、実践的なイノベーション事例を学ぶ。リサーチとディスカッションを重ねる授業でコミュニケーション力と、次なる時代に重用されるビジネススキルを同時に身につけることが可能。出願時に指定の基準を満たす受験生を対象とし、合格者は全員が特待生として入学する。