東京経済大学

考え抜く実学。

困難な時こそ一歩前へ
121年目の進化と覚悟

自由闊達(かったつ)な学風と
人間味あふれる教育

岡本英男学長。2020年に竣工した「東経の森」で

 学長という肩書きに似合わず、岡本英男学長は、実に気さくに学生と接する。そして一人ひとりの学生と実に丁寧に向き合う。

 例えば数年前、当時指導していた財政学のゼミの男子学生が「卒論ではアウシュビッツの研究をしたい」と、教養系のゼミに移ったことがあるという。

 「彼はその後、ポーランドまで視察に行き研究を仕上げたそうです。財政学にそこまでのめり込んでもらえなかったのは正直少し寂しいですが(笑)、私はそれでいいと思う。心から研究したいと思える分野と生涯の師に出会い、研究に打ち込める環境がある。本学はそういう場であり続けたいと思います」

 近年は〝学長ゼミ〟へと形を変え、現代の社会課題について学部・学年を問わず10数人の学生と毎週議論を交わしている。

 「昨年度はほぼ全てオンラインによる開講でしたが、普段は大人しい学生が、核心をつく一言をポロッと発するようなこともありました。オンラインの環境が肌に合う学生にとっては、自分の殻を破るきっかけになったのかなとうれしく思います」

 東京・国分寺のキャンパスに、経済・経営・コミュニケーション・現代法の全4学部が集う東京経済大学。学生と教員が互いに信頼し合うあたたかな関係性、そして学内の風通しの良さには驚かされるが、その学風は「先人の努力によって培われたもの」と学長は力を込める。

 1900年、実業家・大倉喜八郎が創設した大倉商業学校(のちの大倉高等商業学校)は、「国際社会で通用する商人」を育成する名門校として名を馳(は)せた。しかし戦争を機に状況は一変。赤坂校舎の焼失、経済状況の悪化、大倉財閥の解体を経て、国分寺に移転し再起を図る。

 「戦後の混乱の中、学生はバラックのような校舎に集い、必死に勉学に励んだそうです。困難な状況下でも『開かれた批判的精神のもと、質の高い学問研究に裏付けされた教育を守りたい』と、教職員・学生・卒業生が団結し、やがて学校再建と大学昇格を実現します。まさに『進一層』の精神で苦難を乗り越えてきた歴史を私は誇りに思うし、受け継がれた志と学風を大切に守っていきたいと思います」

「実学」と「教養」の
〝ゼミする東経大〟

武蔵野台地の湧水が「新次郎池」を満たす

 東京経済大学が特に力を入れているのが〝ゼミする東経大〟として知られる140ものゼミ活動だ。文献講読やデータ分析、ディベート、フィールドワークなど、各ゼミが多様な方法で専門性を深めているほか、大手企業へのプロモーション提案で高い評価を得ているゼミや、全国の大学生が競う「日銀グランプリ」で何度も最優秀賞を獲得しているゼミもあるなど、活躍の場は学内にとどまらない。「大学生活の思い出はゼミ一色」と語る学生も珍しくないという。

 教養系科目のゼミも盛んで、文学や歴史、哲学、天文学、芸術学、スポーツ科学など、多様な知的好奇心に応える学びの場がそろう。さらに今年度からは、経済・経営学部生を対象とした「教養探求プロジェクト」がスタート。例えば、環境や社会問題などに積極的な企業に投資する「ESG投資」に興味を持った経済学部生が、学部で「環境経済学」等を学びながら「生物学」のゼミで卒業研究をまとめる、といった柔軟な学び方を後押しする。

 一方で、簿記や公認会計士、税理士、公務員、司法書士などの難関資格取得をめざす学生向けに、専門学校の資格対策講座をキャンパス内で受講できる制度「キャリアサポートコース(CSC)」も充実。例年、多くの学生がゼミやサークル活動と両立しながら高い実績を上げている。

 「国際的な商業人の育成をめざした大倉高商の教えを狭義の『実学』教育とするならば、本学の『教養』教育の礎を築いたのは、戦後、教鞭(きょうべん)をとった英米文学の大竹勝先生や、五日市憲法の調査で知られる色川大吉先生をはじめとする各分野の一流の研究者たちです。本学の財産である『実学』教育と『教養』教育の伝統を大切に守りつつ、今後も時代に合わせて進化し続けていくつもりです」

社会の要請に応え
さらなる改革を

「東経の森」はキャンパス内の新次郎池周辺を整備し造られた。
緑あふれる空間には展望パーゴラも

 2020年に創立120周年を迎え、次代への新たなスタートを切った今年度、すでにさまざまな改革が進められている。

 まずコミュニケーション学部の発展改組。22年度より「メディア社会学科」「国際コミュニケーション学科」(仮称・設置構想中)の2学科体制へと移行する。

 「26年前、日本で初めて『コミュニケーション学部』を開設したのが東京経済大学でした。新たな2学科では、語学力に加え、異文化に柔軟に対応し、メディアテクノロジーも駆使できる人材の育成をめざします。また、コロナ終息後は積極的に海外で学び、本学のグローバル化推進の起爆剤となってくれることを期待しています」

 さらに、4学部横断型の「データサイエンススタンダード」が今年度からスタート。「あらゆる分野でビッグデータの利活用が求められる現代において、データサイエンスの知見を備えていることは文理問わず不可欠です。専門の研究者でもある竹内秀一副学長を中心に、まずは全学生に基礎的な理論・スキルを身につけてもらうことから始め、今後より高いレベルの教育プログラムを作っていく予定です」

 また今春には、SDGs(持続可能な開発目標)達成に向けた同学の指針をまとめた「東京経済大学SDGs宣言」を発表。

 「本学では、例えばゼミの場でも、平和学や開発経済学、格差是正、生物多様性、フェアトレード、ジェンダーなど、社会課題解決に向けた研究に多数取り組んできました。また、多摩地域の自然や歴史の研究会を開くなど、地域に根ざした活動も継続しています。改めてSDGs宣言を打ち出すことで、さらなる意識の強化を図るとともに、国分寺市唯一の大学として、研究・教育活動を通してその使命を果たしていきたいと考えています」

社会が変わるいまを
前向きな学びの機会に

 コロナ終息の兆しが見えないなか、東京経済大学でも、対面授業とオンライン授業を併用しながら、より活発な学びのあり方を模索している。

 「苦しい局面が続きますが、同時に、人はどんな状況に置かれても学ぶことができるのだという思いも新たにしています。全世界が直面しているこの危機は、社会のありようを見つめ直す学びの機会でもあります。本学のこれまでの歩みがそうであったように、困難な時も教職員一丸となって、質の高い教育・研究を守り続けます。受験生の皆さんには安心して本学の門をたたいてほしい。ともに学び、切磋琢磨(せっさたくま)できることを楽しみにしています」

News

「メディア×国際」でコミュニケーションを学ぼう

 2022年度から、コミュニケーション学部が「メディア社会学科」「国際コミュニケーション学科 」の2学科体制となる。メディア史などを専門とし、同学部で教鞭をとる松永智子准教授にその特徴を聞く。   

 いま、家族や友人間はもちろん、仕事上のやり取りにもLINEやメールなどを使いますよね。コロナ禍でオンライン授業やリモート会議も普及しました。また、今日では企業の広告・広報にもソーシャルメディアが活用されています。このように、日常に多様なメディアが溶け込んだ現代の「メディア社会」を俯瞰(ふかん)し、メディアの特性、情報分析の仕組み、利用者の心理などを学ぶのが「メディア社会学科」です。

 一方で、現代社会は、人・モノ・情報が国境を越えることで成り立っています。コンビニのお弁当の材料の産地や、店員さんの出身地・国籍を想像すると分かりやすいでしょうか。そんな私たちの身の回りにある国際化を「移動」という観点で考えながら、英語力や異文化理解というスキルやマインドを身につけていくのが「国際コミュニケーション学科」です。

 学科によってウェートは違いますが、どちらに所属しても「メディア×国際」の関係性、すなわち、メディアを介したグローバル化について実践的に学ぶことができます。この環境は、本学のコミュニケーション学部ならではの強みでしょう。

──新たな学科では、英語力が必須なのでしょうか?

 情報のグローバル化に際し、多くの日本人にとって〝壁〟になるのが言語です。一定の英語力があれば、コミュニケーションの範囲は格段に広がり、読める文献の量も桁違いに増えます。そのため、特に国際コミュニケーション学科では英語力向上を重視し、1~3年次には学科独自の英語科目を設置しています。また必修科目の「異文化体験」では、フィリピンや台湾、アメリカなどで短期研修を行います。考え方の多様性を肌で感じ、驚いたり、感動したり、その経験が柔軟な思考力・適応力につながるはずです。海外渡航にあたっては、新型コロナウイルス感染症の状況を見極めて慎重に判断します。試験的にオンラインでの海外研修も実施しています。

──受験生にメッセージを。

 「将来、どんな仕事に役立ちますか」と聞かれることがありますが、率直に言って、どんな業界・仕事でも役立ちます。生産年齢人口の減少が進む日本では、すでに東アジアを中心に多くの外国人労働者が就労しています。日本企業に就職しても、同僚や顧客が外国人だったり、仕事の委託先が海外であったりすることは珍しくありません。また、メディアと全く関わりのない仕事はいまやほぼありません。つまり、「異文化に柔軟に対応しながら、日進月歩で進化するメディアテクノロジーを使いこなす」能力は、今後、誰もが身につけるべきジェネリック(汎用的)なスキルなのです。

 それから、やりたいことが見つからないという人は、「モヤッとすること」「心がざわめくこと」を大切に。それが大学での学びの出発点になりますよ。

コミュニケーション学部 松永智子准教授

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