法政大学

自由を生き抜く実践知

自由と進歩の精神で
さらなるダイバーシティを

学内の変化に応えた
ダイバーシティ宣言

廣瀬克哉総長(右)とダイアナ・コー常務理事。コー常務理事は副学長・グローバル教養学部教授も務める

 法政大学は2016年度、30年の創立150周年を見据えた長期ビジョン「HOSEI2030」を策定。その一環として「法政大学ダイバーシティ宣言」を発表し学内の多様化を推進している。この取り組みについて廣瀬克哉総長(以下、廣瀬)とダイアナ・コー常務理事・副学長(以下、コー)が語り合った。

廣瀬 法政大学は男子学生が多いイメージがあり、また国際的なイメージは薄いかも知れません。しかし、ダイバーシティ宣言の前年にはすでに、文系の学部では約4割が女子になっていました。1970年代から学生の海外派遣には力を入れており、海外の交流協定大学数は260校にのぼっています。ただこれらの実績は、その時々の判断の結果として実現してきたもので、大学の組織的な方針として示されたものはありませんでした。そこで「HOSEI2030」の策定に当たり、改めてダイバーシティについての方針を明確化すべきだと考えたのです。

コー ダイバーシティ宣言が出た16年、私はグローバル教養学部長を務めていました。ちょうどその頃、明らかに学内の多様化が進んできていると感じていました。同年には二つの英語学位プログラムが新設され、短期留学生も増加。これらの学生たちはさまざまな文化的背景を持っており、中には自分の性的指向や性自認をオープンにしている学生もいました。多様な学生が共に学ぶ環境は素晴らしいものですが、一方で少数者に疎外感を抱かせてはいけないとも思っていたので、宣言はとてもよいタイミングだったと思います。ダイバーシティ宣言を受けて、「こうした宣言を出す大学が母校であることを誇りに思う」と連絡をくれた卒業生もいました。

廣瀬 それは嬉しいことですね。私の知る中でも、勤務先でダイバーシティ担当を任されたと話してくれた卒業生がいます。ただ、LGBTQ+の学生の中には、大学までは何となくその人の個性という感じで受け入れられてきたけれども、就職などの段階で改めて自分のアイデンティティーの問題として葛藤を感じる人もいます。自然に受け入れているというだけではなく、多様性に対するしっかりとした考え方が学内に定着していく必要があります。

コー 学生も教職員も、大学の構成員一人ひとりが自己の価値観を相対化し、自分の中のバイアスを意識して、互いを柔軟に認め合うこと。これが理想的なダイバーシティのあり方だと思います。私は本学のダイバーシティ推進担当副学長も務めているのですが、教職員の研修参加率も上がっていて、少しずつですが着実に前進しているのを感じます。今年の3月にはダイバーシティ・男女共同参画ホームページも開設され、外部への発信力も強化されました。

2021年1月に建替工事が完了した市ケ谷キャンパス(東京都千代田区)

誰もが自由に
自分の人生設計を

廣瀬 日本のジェンダーバイアスによる問題の一例として、国内の理工系学部では女子学生や女性教員が少ないことなどが挙げられます。この問題を是正するため、性別による公募枠を確保するという選択肢もありますが、そうした直接介入には限界があると思います。少し時間をかけてでも、まずは大学を構成する一人ひとりに方向性や理念を共有したい。本学では中長期的な展望と具体的な数値目標を掲げて、男女や国籍といった比率のダイバーシティ化を図っていきたいと考えています。

コー 人文系学部に男子学生が少ないということも同様ですね。ダイバーシティ化の最終目標は、性別にかかわらず、誰もが自由に自分の人生を設計できるようになることだと思います。中には、数値目標の設定より、むしろもっと平等なジェンダーフリー教育をするべきだと考える人もいるかもしれません。でも単純に同じ教育を提供するだけでは、現在の格差は埋まりません。私はいまこそ「ジェンダー」を意識して、徹底的に「格差」を洗い出すべきだと思います。

世のバイアス解体も
大学の担う役割

廣瀬 私も、イノベーションが生まれるのは「違い」のある組織からだと思います。価値観が違えば見える風景も変わる。大学としてそうした多様性豊かな環境を提供すると共に、学生自身が見ている景色を変える手助けもしたいと考えています。全学部生を対象とし、特定分野の授業履修者に修了証を授与する「サティフィケートプログラム」もその一つです。例えば「SDGs」というテーマでも、法学部の学生と理工学部の学生では捉え方が違ってくるでしょう。自分の新たな関心分野に出合ったり、違う景色が見える人がいることに気付いたりするきっかけにもなると思います。

コー やはり大学としては、国籍や性別を問わず、誰もが「余計な心配をせずに勉学に集中できる」環境を作る責任があると思います。そのためには女性や外国人にとってのロールモデルを示すことも大事です。見えない未来はなかなか想像できませんが、実際に活躍している人を見れば「自分もああなれるなら頑張ろう」という励みになるのではないでしょうか。

廣瀬 コー先生のおっしゃるとおり、実例を通して多様な未来をイメージできるようにしていく必要があります。また、ポストコロナに向かっていく現在、これまで制限されていた留学生の入国を緩和していくことの意義を社会にしっかりと訴えていくことも必要になっています。新しい変異ウイルスが持ち込まれるのではないかとか、コロナ禍の影響で日本人学生も経済的に苦しいのになぜ外国人留学生を優遇するのか、といった声が聞こえてきます。自分とは違った人と実際に肩を並べることでしか見えてこないものがあるし、その機会をもつことは、自分たちの社会の強みを増すことです。いち早く「開かれた」環境をつくり、ダイバーシティを実感できる知的な刺激にあふれたキャンパスをつくりたいですね。

多様性ある社会の
縮図をめざしたい

コー 働き方の制度改革やマイノリティー対応、ダイバーシティ推進のための持続性ある組織の設置など、学びの環境整備はもちろんですが、大学が理想とするダイバーシティ像を実現するためには、やることが山ほどあります。でも私は比較的楽観的です。ダイバーシティ化を推進しようという一人ひとりの意識さえあれば、多くの課題は地道な活動で解決していけると考えています。

廣瀬 現代社会の多様な課題を解決する人材は、多様な学生が集う大学でしか育ちません。日本の大学は同質性が高く、社会の縮図になっているとは言いがたい。本学は、自由で多彩な価値観に触れられるグローバル社会の縮図をめざしています。ただし自由とは、必ずしも常に自然体でいられることではありません。人生では自然体では通じ合えない人と必ず出会い、悩むこともあるでしょう。なぜ話が通じないのか、相手と自分の考えはどう違うのか、そもそも自分は何者なのか。社会に出れば、自らに問いを持ち、考えを言語化して伝える力が求められます。大学の多様性をさらに広げ、複雑化する世界で生き抜く力を持つ学生を育てたいのです。

CAMPUS TOPIC ①

データで知る
法政大学の最前線
(※)同じ志願者がいくつ併願しても1人として算計
【出典】
1.2週刊朝日 2022年5月6日・13日合併号 ※2022年入試
3.4.5「大学ランキング2023」(朝日新聞出版)※2021年5月1日現在

CAMPUS TOPIC ②

理工系における女子学生や
大学院生、研究者・教員輩出の
好循環を目指して

 上記対談でも話題となった理工系分野のダイバーシティ推進の取り組みについて、理工学部創生科学科の松尾由賀利教授は次のように語る。

 「社会に変革をもたらすイノベーションに直接かかわる理工系の発展においては、今後、ダイバーシティの向上がより一層求められます。法政大学では、ダイバーシティや男女共同参画への大学としての取り組みの効果が表れてきた一方で、理工系の教員および学生の女性比率は現在も低く、改善すべき点が多くあります。そこで2021年4月、HOSEI2030推進本部の下に設置された『男女共同参画推進チーム』内で、主に理工系に関する施策を検討する理工系ユニットが立ち上がりました。理工系では大学院に進学し研究を深めることによるキャリア形成への好影響が知られていますが、女子学生にとっては、身近な先輩の女子大学院生と接することも進学を具体的に考えるきっかけになることがわかってきました。ユニットでは今後、このようなロールモデルの見える化やネットワーキングによる女子学生・大学院生・研究者・教員を生み出す好循環の仕組み作りと同時に、男女がともに直面する理系特有の働く環境の問題に取り組み、アウトカムとしての理工系女性比率向上を目指します」

理工学部創生科学科・松尾由賀利教授
小金井キャンパスに情報科学部、理工学部、生命科学部が、市ケ谷キャンパスにデザイン工学部がある

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