熊本大学

コロナ禍は社会に大きな変化をもたらした。たとえばITを活用したテレワーク。在宅勤務が奨励され、東京一極集中の必要性が問われるようになってきた。ポストコロナは、日本各地に在住する社員とオフィスが自在に繋がる、新しい「地方の時代」かもしれない。熊本大学は今、地域における知の拠点として、ポストコロナをも見据えた、研究・教育、人材育成のさらなる充実を推進している。

ポストコロナを生き抜く五高伝来のスピリット

学部の枠を超え柔軟かつ
総合的な高度教育を推進

原田信志学長

 熊本大学は、豊かな教養と確かな専門性を持ち、創造的知性と実践力を兼ね備え、さらにグローバルな視野でコロナ禍のような世界的難題に熱く向き合う人材の育成に取り組んでいる。その主柱とも言えるのが大学教育統括管理運営機構だ。機構には教育プログラム管理室、評価分析室、入試・就職戦略室、グローバル教育推進室の四つが置かれ、それぞれが全学の委員会を加えた組織的なシステムを作りミッション達成に取り組む。
 また、機構内には、教養教育実施本部が置かれており、教養教育の運営・実施を担う。さらに、機構の附属施設として、附属多言語文化総合教育センターを本年4月に設置。このセンターは、英語による教養科目の提供等のグローバル教育を推進するグローバル教育分野と世界に日本を広く伝える日本語教育を含めて外国語教育を担う多言語文化教育分野とに分かれている。熊大生のグローバル教育だけでなく、外国人留学生の修学・生活等支援や地域社会のグローバル化も視野に入れているのだ。
 同じく附属施設である附属数理科学総合教育センターは教育の充実と質の向上を図り、数理的思考力を備えデータサイエンスを駆使できる人材の育成を行う。また、県内の高校等と連携して数理科学教育を推進している。原田信志学長は「両センターは文理系7学部を備えた九州屈指の総合大学という本学の特性を活かしつつ、さらに学部の枠を超えたフレキシブルで総合的な高度教育を推進していきます。入試問題の作成、共通テキストの作成や教育法の改善等、大学ぐるみで行えるのも強みです」と語る。熊本大学ならではのフレキシブルで総合的な高度教育。その具体的なケースを幾つか紹介しよう。

地域と世界に軸足を置きつつ
研究拠点大学としての使命も

語り合う原田学長と学生たち

 グローバルリーダーコース(GLC)は、文学部、法学部、理学部、工学部の4学部がジョイントしたユニークなコース。地域の問題をグローバルな視点で考え行動できる人材の育成を行う。GLCに入学した学生は、留学生と共に英語で授業を受け研修や留学に参加する。キャンパスでの課外活動や、地域ぐるみ・街ぐるみのグローバル交流の担い手にもなる。また、地域の食品関係企業等と連携し、GLC生の海外インターンシップ研修などを通して地域企業のグローバル化促進やグローバル人材の雇用促進にも努めている。
 理系の教育プログラムもユニークだ。Aim-High(高い目標)プログラムは、大学・研究機関で活躍する人材の育成を目的としたもの。「研究者養成コース」は、海外の研究者と連携した研究指導を受け、海外留学も行う。「産学協働教育コース」は、企業との連携のもと本学教員と企業研究者との共同研究等に参画する。いずれのコースも早期の学位取得が可能だ。医学部の大先達である北里柴三郎博士にちなんだ柴三郎プログラムでは、医学部学生時に大学院の講義を受講でき、最先端医学研究も実践する。卒業後は卒後臨床研修と大学院での研究を並行できる。また、高校生対象のプログラムもあり、医学部教員の出張講義、キャンパスでの体験学習などを行っている。高校・大学・大学院とシームレスにスムーズに研究に取り組むことができるわけだ。「基礎研究は、国立大学の使命。地域の研究拠点大学として、今後もこのような改革に注力していきたい」と原田学長は抱負を述べた。

伝来のスピリットで挑戦し
新しい時代を創造していく

五高の表門、通称「赤門」

 コロナ禍は社会に大きな変化をもたらしたが、一方ではこれから求められる資質や能力に改めて気付かせてくれた、と原田学長は言う。例えば、未曾有の事態に直面してもぶれない強さ。いかなる困難の中でもじっくりとものを考え、具体的に課題を解決していくたくましさとしなやかさ。「このような資質や能力は、旧制第五高等学校時代から受け継がれた熊本大学の気風でありアイデンティティーなのです」と誇らしげに付け加えた。研究拠点大学、九州屈指の総合大学としての矜持。そしてなにより五高伝来のスピリットが「挑戦する炎」となって、ポストコロナの新しい時代を創造していく。

CLOSE UP[注目情報]

創薬・健康産業のイノベーションに貢献

 熊本大学では、現在、グローバル天然物科学研究センター(薬学系)を中心として、文部科学省「地域イノベーション・エコシステム形成プログラム事業」である「有用植物×創薬システムインテグレーション拠点推進事業」を組織的に推進している。
 センターは「創薬指向型植物データベース」、「有用植物栽培実験ラボ」、「創薬評価・スクリーニング技術」、「天然物バンク」、「医薬品製造ラボ」など、他大学には類を見ない施設や技術を多数有しており、これらのオリジナル技術を基盤とした全国的にも極めて稀な研究体制を構築している。具体的には、全ての研究者がミッションとビジョンを共有するプロジェクトマネジメント体制の下、国内外のアカデミアや企業と密に連携している。この研究体制下で取り組んでいる一例が、創薬・健康産業イノベーションへの貢献である。
 同センターは、世界の天然物資源の有効活用をサポートし、世界の人々の健康社会形成に貢献し続けている。

VOICE[在学生・卒業生から]

在学生
教育学部 4年
上田 まゆみさん



自分がやりたいことを見つけ
多様な経験を積むことができる

 教員になるための環境が整った教育学部。そこにひかれて入学したのですが、キャンパスでの学びは期待以上のものでした。優れた座学はもちろん、模擬授業など実践的な「学びの場」を経験することで教育実習には自信を持って臨むことができました。自分が今まで学習してきたことが実習での授業に活かされていると実感でき、教職へ思いがさらに高まりました。また、教員採用試験対策講座を無償で受講できるサポートシステムなども大きな魅力です。
 熊本大学は、それぞれの学部で専門的なことを学べるだけでなく、学んだことを自分の将来にどう活かすかを考えることのできるキャリア支援体制が充実しています。また、学園祭やサークル活動も活発です。自分がやりたいこと・楽しいことを見つけ、さまざまな経験を積むことができます。

卒業生
熊本大学 産業ナノマテリアル研究所 教授
伊田 進太郎さん
2001年 工学部 物質生命化学科卒
2004年 熊本大学大学院自然科学研究科
博士後期課程修了
トップクラスの教育・研究環境
ここでの学びが今の自分の支えに

 ナノシート(厚さ1nm程度のナノ材料)の光触媒、高性能燃料電池の電極材料などの実用化を目指して研究を進めています。開発の途中でまだ誰も目にしていない新しい現象や機能に遭遇できることが、大きな魅力です。
 学部時代の一番の思い出は卒業論文研究。ダイヤモンド薄膜の作製表面の化学処理の研究をしたのですが、そのときに最先端の材料分析装置を使用できました。これらの装置は現在の仕事でも必ず使う装置であり、在学中に習得した技術が活かされています。大学院では、スペインで開催された国際学会での発表に1人で参加。学会への申し込みから成果発表まで全て任せてもらい、貴重な経験となりました。全国トップクラスの教育・研究環境の中で学んだ熊本大学での日々は、私の今をさまざまな面で支えています。

●熊本大学(国)

【創 立】 1949年
【学 部】 文学部、教育学部、法学部、理学部、医学部、薬学部、工学部
【就職率(学部別)工、理工学部】 全国1位
【高被引用論文(クラリベイト)2009〜2019年10月、薬理学、毒性学】全国7位
【論文引用度指数(クラリベイト)2014〜2018年、臨床医学】全国12位
(いずれも『大学ランキング2021版』より)
〒860-8555 熊本県熊本市中央区黒髪2-39-1 
☎096-344-2111
https://www.kumamoto-u.ac.jp/

掲載大学一覧[九州・山口・沖縄]

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