長崎大学

2020年、「プラネタリーヘルス(地球の健康)」への貢献という壮大な目標を新たに掲げた長崎大学。今年4月に開設された情報データ科学部を含めた10学部、7研究科、3学域の総力を挙げ、プラネタリーヘルスの実現へ向けて、従来の教育・研究を進化させる方針だ。新型コロナウイルス感染症対策や核兵器廃絶など、地球的規模の課題にも果敢に取り組んでいる。

プラネタリーヘルス(地球の健康)に
貢献する大学

全学を挙げて取り組む
「プラネタリーヘルス」

河野茂学長

 「私たちの住む地球は、環境問題一つとっても、危機的な状況にあります。プラネタリーヘルスが脅かされているのです」と、河野茂学長は警鐘を鳴らす。その原因としては、地球温暖化などの環境問題をはじめ、国際紛争などの政治問題、高齢化や人口減少、教育、医療、経済の格差など、さまざまな事象が挙げられる。「これらが複雑に絡み合い、地球の健康を冒している」というのが河野学長の見立てだ。
 人類の健康を地球規模で考える「グローバルヘルス」に対し、地球そのものの健康を考えるのが「プラネタリーヘルス」だ。長崎大学ではこれまでも、熱帯医学研究所や医歯薬学総合研究科を中心に、グローバルヘルスへの貢献を果たしてきたが、「地球の環境変化によって人間の健康が損なわれている現在、10学部・7研究科・3学域すべてがプラネタリーヘルス実現へ向けて進化することが大切」と河野学長は語る。
 「さらに、地球環境や次世代を見据えた研究を行っていくうえでは、多様な視点から問いを立て、その答えを追求していくプラネタリーヘルスマインドを持った人材を輩出することが必要。プラネタリーヘルスを通じて、特定の立場からだけではない分野や領域を越えた多面的でしなやかな知の連鎖を誘発することで、これまでにない新しい知を創造したい」と河野学長は意気込む。「プラネタリーヘルス」という壮大なテーマのもと、長崎大学は大きく進化しようとしている。

新型コロナウイルス
対策の最前線に立つ

検体サンプルを検査する様子

 感染症研究の長い歴史を持つ同大学は、新型コロナウイルス感染症に対しても、きわめて多大な社会貢献をしている。長崎大学熱帯医学研究所は、世界保健機構(WHO)の指定する「COVID‐19 reference laboratories」に日本で唯一指定されており、行政と連動して新型コロナウイルスのPCR検査を実施している。
 同大学を含めた世界各地、5カ所の主要研究所は、毎週定期的にWHO本部と専門家会議を行い、世界の情報収集や解析、抗体検出技術の確立を進めている。
 診療の中心を担う長崎大学病院には、感染対策を専門とする感染制御教育センターと、感染症診断を行う感染症内科、診断に欠かせない検査部などがあり、疑い患者の診療や検査を日々行っているほか、確定患者の受け入れ準備も整えている。今年の新型コロナウイルス感染症拡大の危機に際し、長崎市に停泊するクルーズ船での乗組員に対するPCR検査の実施や医療支援を行うなどさまざまな支援活動を行っている。
 長崎大学と長崎大学病院は、新型コロナウイルス感染症拡大の危機に際して、対策の最前線に立ちながら、地域の人々を守り続けている。

「核なき世界」を目指す
世界で唯一の研究機関

国連本部で会議に参加するナガサキ・ユース代表団

 2012年に開設された長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)。「核なき世界」の実現を目標とした、世界で唯一の核廃絶に特化した大学の研究機関である。核兵器に依存しない安全保障の実現に向けて、日本政府や国際社会に具体的な政策提言を示すための研究を進めるとともに、次世代を担う若手の人材育成や情報発信にも力を入れている。
 核兵器廃絶長崎連絡協議会(長崎県、長崎市、長崎大学で構成)が主催する「ナガサキ・ユース代表団」は、長崎県内に在住・在学・在勤の若者を対象とし、核軍縮や平和の問題を実践的に学ぶ。代表団は事前学習の後、海外でNPT(核不拡散条約)再検討会議などに参加。各国代表と意見交換を行い、被爆地ナガサキの若者代表としてメッセージを発信する。帰国後は活動報告のほか、平和教育の出前講座などを全国へ展開する。
 さらにRECNAでは、若者から社会人までを対象とした平和・軍縮教育を進めている。教養教育「全学モジュール」では、学部や専攻の枠を超えてさまざまな視点から核軍縮についての授業を開講。また、国際基督教大学や被爆地の研究・教育機関と連携し、平和・軍縮教育の教材・教育方法の開発を進めている。大学院の多文化社会学研究科でも、RECNAの教員が教育・研究指導を実施。学部から博士課程まで一貫して「自ら考え行動できる」人材を育て、世界に羽ばたく専門家を輩出している。

CLOSE UP[注目情報]

「実社会課題解決プロジェクト」で実践力をつける
〜情報データ科学部〜

 今年4月に設置した情報データ科学部では、「実社会課題解決プロジェクト」という科目が設置されており、1年次から4年次までの4年間、体験的に学ぶことができる。
 1年次には、チームを作りプロジェクトを進める活動を体験的に理解。2年次には、問題の中から解決すべき課題を明らかにして、実際に解決のために取り組む活動を通じて、知識技能を深める。3年次にはプロジェクトのアドバイザーとしてチームをファシリテートする力を養成。4年次にはプロジェクトのマネジメントをする力を養う。
 学年進行に応じて段階的に、本物の課題に取り組む機会が与えられ、学んだ知識技能を課題解決に活用することで、用いた知識や技能についての理解を深めるだけでなく、自らが持っている知識・技能・経験では対処できない課題に直面することで、次の学びを方向付ける。
 本科目では、自治体や地元企業と連携し、実際の社会における課題を発見し、解決していくことを目指す。その際に、多種多様なデータを収集し、解析していくことで、表面化されていなかった課題を可視化することができる。また、発見した課題に対して、どのようにアプローチすれば解決にたどりつけるかを模索することで、「創造性」や「コミュニケーション力」、「批判的思考力」などの普遍的に必要とされる力を身につけ、情報社会で活躍できる人財の育成を目指している。
 さらに、他の講義や実習で学ぶ専門的な知識や技能と、実社会における実践的課題解決とを往還することで、大学での学びをより深めることが期待されている。

VOICE[在学生・卒業生から]

在学生
多文化社会学部
多文化社会学科4年
原 迅哉さん
幅広い分野を学べるため
自分に合った学問に出会える

 グローバル人材の育成を目指す多文化社会学部では、幅広い分野を学べるため、多方面で活躍できる力を身に付けることができ、必ず自分の興味がある学問に出会うことができると思います。大学生活で一番打ち込んだのはオランダ語の修得です。3年次にはオランダのライデン大学に留学し、オランダ語の授業を受けることで、日常生活で困らない程度の会話をオランダ語で行えるようになりました。
 大学生活を通じて成長できたのは、英語やオランダ語の語学力と、多角的な視点から物事を考える力です。多文化社会学部では、自分のキャリアについて考える講義や企業の方の説明会などが多く、自分に向いている業種は何か、就職に必要なスキルは何かを考える環境が整っている点も魅力です。社会に出ても学びの精神を忘れることなく、グローバルに活躍できる人材になりたいと考えています。

卒業生
フリーランスコーディネーター
大城(旧姓内原)英理子さん
2002年 環境科学部 環境政策コース卒
Think Globally,Act Locallyで
まちづくりに関わっていく

 本学には、環境科学部の一期生として入学。新しい学問領域「環境」というテーマの方向を探る先生方や学友との日々は刺激的でした。グループワークで諫早湾干拓問題の現場に足を運んだことが、まちづくりを仕事にする原点となりました。地域の社会課題と思っていた問題が、有明海全体、ひいては渡り鳥の越境地など、世界に繋がる問題であると気づき、Think Globally,Act Locallyを実感したのです。
 卒業後は株式会社日建設計の都市開発部門で環境アセスメントや大規模都市開発プロジェクトのコンセプトデザインなどを担当し、現在はフリーランスコーディネーターとして仕事をしています。今力を入れているのは、地域の子どもたちに、まちづくりを学んでもらう「こどものまち」のプロデュース。子どもの頃から地域のよりよいあり方を考えること、地域の方々と直接対話し、ポジティブ繋がることは、世界、よりよい地球づくりに繋がると思います。

●長崎大学(国)

【創 立】 1857年(医学伝習所として創基)
【学 部】 多文化社会学部、教育学部、経済学部、医学部、歯学部、薬学部、情報データ科学部、工学部、環境科学部、水産学部
【就職率(学部別)農、水産、生物系学部】 全国1位
【就職率(学部別)工、理工学部】 全国1位
【小学校教員採用】 九州・山口・沖縄2位
【国家試験合格 理学療法士(率)】全国1位
【国家試験合格 薬剤師(率)】九州・山口・沖縄2位
【官僚(中央省庁)出身の国会議員】九州・山口・沖縄1位
(いずれも『大学ランキング2021版』より)
〒852-8521 長崎県長崎市文教町1-14 
☎095-819-2007(広報戦略本部)
http://www.nagasaki-u.ac.jp/

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