熊本大学

九州の中心に位置する熊本の地で1887年に設立された第五高等中学校(五高)を母体とする熊本大学。五高など六つの官立学校を統合した国立大学の発足から数えても72年の歴史を有する総合大学は今、教育や研究、伝統や文化という「強み」を活かした「開かれた大学」へと新たに躍進しようとしている。

地域に社会に世界に大きく開かれた大学へ。

文理問わずDX時代に対応し
価値を創造できる人材を育成

小川久雄学長

 熊本大学の「強み」の中でも屈指のものといえば「教育」が挙げられる。その基盤をなすのが大学教育統括管理運営機構だ。機構には、教育プログラム管理室、評価分析室、入試・就職戦略室、グローバル教育推進室の四つが置かれ、教育改革等に組織的に取り組んでいる。また、機構内には教養教育実施本部があり教養教育の運営・実施を行う。さらに、機構の附属施設として多言語文化総合教育センターを設置。英語による教養教育科目やきめ細やかな日本語教育等を提供し、グローバル教育の推進支援、地域社会のグローバル化推進を担う。同じく附属施設の数理科学総合教育センターは数理科学教育の充実と質の向上を図り、数理的思考力を備えデータサイエンス・AIを駆使できる人材を育成する。
 小川久雄学長は「グローバル化の一層の推進はもちろん、全学生がデジタルサイエンス、数理・データサイエンス、国際対話のリテラシーが身につく教育で、文系・理系を問わずDX(デジタル・トランスフォーメーション)時代に対応し新しい価値を創造できる人材を育成していく」と力強く語る。

研究拠点大学として
あらゆる分野に取り組む

多言語文化総合教育センターによる異文化交流

 「教育」と並び称せられる「強み」が「研究」だ。マグネシウム合金の研究開発、発生医学をはじめとする生命科学、肥後細川藩の薬園「蕃滋園」の流れを汲む薬草園を利用した活動、永青文庫研究センターの実績、その他、考古学、中国文学、水の循環に関する研究、火山に関する研究など枚挙にいとまがない。海・山・水の大自然、長い歴史と文化に恵まれた地域特性を十全にいかした研究は、さらに専門を深め領域を広げている。新しい可能性、その萌芽の例を挙げれば、大学院先端科学研究部附属生物環境農学国際研究センターがある。これはSDGs発想と熊本の多様な農業に立脚したもので、学内はもちろん国内・海外の研究施設と連携し、環境保全型+地域適合型農業の研究・展開に取り組む。ユニークな研究では、マンガ文化研究がある。新しい地域文化研究だ。
 「論文の引用数がTOP10%に入る世界的な研究者も多く在籍しています。このように優れた研究・研究者に直に接することができるのは学生にとり大変有意義な経験です。加えて本学には九州有数の総合大学という特性をいかした文理融合型・横断型の教育環境が充実しています」と胸を張る小川学長。「教育」と「研究」という「強み」で育まれた人材が国際社会への扉を開いていく。

受け継いでいく五高精神
ポストコロナ対応にも先駆

工学部研究資料館(国指定重要文化財)

 「開かれた大学」を推進するため、「常に情報を発信し続ける」、「常に外から見える」、「常に外からの声に耳を傾け、発展し続ける」ことを標榜する熊本大学。外から見える、という点で注目を集めているのがキャンパスミュージアム構想だ。大学のシンボルである五高記念館は熊本地震で被害を受けたが、2021年の12月に修復が完了する予定。これを機に国指定の重要文化財が四つもあるキャンパスを高校生や一般の人に開放するプランだ。「本学の伝統であり文化である五高精神を、地域だけでなく海外にも開放・開示していきたい」と小川学長は語る。
 外からの声に耳を傾け、発展し続けるという視点で捉えれば、世界的なコロナ禍も追い風になりえる。熊本大学は、教授システム学研究センターにおいて、遠隔(オンライン)授業の研究に取り組んできた。この先駆的研究がコロナ禍によるオンライン授業のいち早い導入と円滑運営を可能にした。大学ではこの経験と実績を生かし、ポストコロナのニューノーマルと期待される「授業の世界規模での開放」や「他大学で受けた授業単位を卒業単位として認める制度」、「ジョイントディグリー、ダブルディグリー」などを推進しようとしている。
 熊本大学は、地域から世界に、そして未来に向かって進化を続けている

CLOSE UP

開かれた大学を体現した国際研究機構

 熊本大学の大きな魅力は、世界的に知られている研究実績や研究者が多くいる点だ。しかも特筆すべきはそのような成果やシーズをオープンにしていることだろう。地域・社会はもちろん、企業や他大学にも「開かれた大学」なのである。最近でいえば今年の4月に設置された「先進軽金属材料国際研究機構」がある。
 航空宇宙技術、モビリティ技術、バイオテクノロジー、メディカルデザイン等の先端技術の進歩は時代の趨勢(すうせい)を左右する重要テーマだ。中でも、軽量で生体親和性を持つ「軽金属材料(アルミニウム・マグネシウム・チタン)」の革新は大きな鍵となる。軽金属材料は元来、日本の経済・社会の発展を支える世界屈指の技術であったが、昨今は欧米や中国などが台頭著しい。
 軽金属材料を用いた製品の多くは、複数の軽金属材料を適材適所で組み合わせて使用する。個々の軽金属材料の高性能化に加えて、マルチマテリアル化技術が軽金属材料の革新には必要不可欠だ。そこで「KUMADAI マグネシウム合金」の名で世界に知られた研究拠点である熊本大学は、同じく世界有数のアルミニウムの研究拠点である富山大学と連携し、熊本・富山両県の地域産業の特徴を踏まえ、アルミニウム・マグネシウムにチタンを加えた三大軽金属を総合的に扱う、日本初の「先進軽金属材料国際研究機構」を新設。材料開発から製品としての実用化まで「一気通貫」した研究体制の構築を目指す。熊本大学のマグネシウム合金×富山大学のアルミニウム合金。互いの研究の「強み」をオープンにすることで実現した、新しい国際研究機構は今、大きな注目を集めている。

VOICE[在学生・卒業生から]

在学生
医学部保健学科2年
伊井 眞結子さん
長崎県立大村高等学校卒
文系+理系科目から地域学まで
知見を大きく広げる教養教育

 熊本大学の特長の一つは教養教育。幅広く学びながら、地域の魅力を知ることもできます。私は県外出身ですが「肥後熊本学」で活火山を有する熊本の温泉について学び、実際に行ってみたいと思いました。
 入学してからはほとんどが遠隔授業でしたが、自分の行動力を伸ばす良い経験になったと思っています。例えば履修登録やパソコンの設定などの問題を、職員の方に積極的に質問・相談して自分で解決できたときは、確かな達成感がありました。その後は、新しく何かに挑戦することへの敷居が低くなったような気がします。
 現在の目標は、災害時でも臨機応変に対応できる臨床検査技師。本学での学びを通して、熊本地震時のリアルな経験を聞いたり資料を見たりすることで、医療に関する知識や技術だけでなく災害への備えや対応なども身に着けたいと思うようになりました。 

卒業生
ピクシブ株式会社pixiv事業本部
伊藤 祥太さん
2016年 文学部文学科卒
先生や学友、機会にも恵まれ
知的好奇心に満ちた4年間

 大学での学びで印象深いのは、日本語学の演習形式の授業で取り組んだ「にぎる」と「つかむ」の共通点・相違点の分析です。辞書を引き、先行研究を調べ、例文を作り、考察を加え、先生と対話し、また考察に戻る……。この経験を通して問題の発見・考察・解決能力、分析力や表現力などを養いました。
 わが社には、高いスキルを持ったスペシャリストが数多くいます。その中で私が武器としているのは「ことば(言葉)」です。具体的な課題を発見し考え抜いて解決策を「ことば」で提示する。人の意見を体系的にまとめ直して皆が納得できる「ことば」に落とし込む。大学時代の学びは、私の現在の仕事を支え、未来も支えていくと思います。
 先生にも学友にも恵まれ、小説や演劇などのサークル活動で知的好奇心を満たすことに専念できた4年間。それはかけがえのない宝物です。 

●熊本大学(国)

【創 立】 1949年
【学 部】 文学部、教育学部、法学部、理学部、医学部、薬学部、工学部
【高被引用論文(クラリベイト)2010〜2020年10月、薬理学、毒性学】全国4位
【公務員試験合格 国家公務員総合職】九州・山口・沖縄2位
【高校からの評価 生徒に勧めたい(国公立)】九州・山口・沖縄2位
(いずれも『大学ランキング2022版』より)
〒860-8555 熊本県熊本市中央区黒髪2-39-1 
☎096-344-2111
https://www.kumamoto-u.ac.jp/

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