
1820(文政3)年設立の津藩校「有造館」を前身に、三重師範学校・三重青年師範学校、三重農林専門学校を母体とする新制大学として、1949(昭和24)年に開学した三重大学。三重県で唯一の総合大学であり、県の発展を支え、リードする役割を担っている。
伝統と使命を受けて掲げる基本ミッションは、「三重の力を世界へ:地域に根ざし、世界に誇れる独自性豊かな教育・研究成果を生み出す~人と自然の調和・共生の中で~」。その達成に向けたビジョンは、「安心感のある運営と改革」「社会の未来を創る高等教育」「女性・若手に優しいキャリア支援」「大学発の地域イノベーション」「多様で独創的な学術研究」「自然と共生するグローバルキャンパス」の6つだ。
また、教育目標に掲げるのは、「感じる力」「考える力」「コミュニケーション力」。それらを総合した「生きる力」を育むため、課題解決型の授業やプロジェクト達成型の授業を積極的に推進。独創的で自由な発想に基づく研究が産学連携で行われ、県内企業との共同研究数は全国の大学でもトップクラスである。
改革も随時行われ、2019年4月には工学部で新体制がスタートした。
今日、工学部が関わる領域は、極めて多岐にわたることから、専門分野の深い知識と同時に、工学の幅広い知識と情報関連技術を持つ人材の育成が求められている。そこで、これまでの6学科を総合工学科1学科とし、各専門の5コースを導入した。共通基礎教育として数学、物理、情報などのコア科目を設け、原理・原則の理解力や工学共通の知識を身につける。また、コース修了後に進路を柔軟に描くことも可能になる。あわせて、4年次から大学院教育へつなげ、卒業研究に代わるインターンシップを取り入れる学部修士一貫コースも設定された。
三重大学では、教育目標に掲げる「4つの力」を体現し、地域に貢献する人材育成を推進するための新たな取り組みをスタート。インターンシップを2019年度の入学生から卒業要件化する。
2015年の就任以来、駒田美弘学長は三重県内の企業を250社以上訪問。現場に足を運ぶことで、多様な魅力をもつ企業やユニークな経営者、生き生きと働く人たちを目の当たりにしたという。学生にもその実感を得てもらおうと、駒田学長がリーダーシップをとり、三重県全域を学びの場と位置づけ、多彩な企業・団体で実践的な経験を積むインターンシップを実施してきた。
今回、卒業要件化するにあたり、インターンシップを「教育的インターンシップ」と定義。各学部・学科のディプロマ・ポリシー(学位授与方針)に沿った教育実践の一環として活用され、全学生がなんらかの形で参加することになる。大学での学修と社会組織での実習・経験を結びつけることで、学修を深化させ、新たな学修の意欲を喚起させると同時に、職業や将来を考える機会になるなど、さまざまな効果を見込んでいる。
これらの背景には、地域の人材を育てないと三重県が衰退していくという危機感があるという。大学を地域に開放し、学内の研究や人材を学外に惜しみなく出し、地域と大学がともに発展を支えていく。インターンシップは、その象徴的な教育でもある。
全学的に推進するにあたり「三重大学キャリア教育方針」も策定した。教養教育や専門教育、インターンシップ、課外活動の充実を図ることで、三重大学キャリア教育の実施体制を確立。学生が自主性や自立性、創造性、専門性を備え地域に貢献できる能力の形成を目指すとともに、「生きる力」を修得。さらに、それを活用できる能力の確保を目標とする。
教育・研究成果を活用し、地域創生に貢献することを重要な使命に位置付ける三重大学。県内に広がる地域課題に対し、注目すべきが2016年度からスタートしている「地域拠点サテライト」だ。
県内の「伊賀」「東紀州」「伊勢志摩」「北勢」の4つのエリアにサテライト機能を置き、各サテライトが大学と地域を繋ぐハブ機能となり、エリアによって大きく異なる特性や課題に応じた実践的な教育研究活動を展開する。企業や自治体が抱える課題解決に向けた共同研究やプロジェクトの推進、地域の課題を題材にした実践型授業などに取り組み、大学の教育研究力の向上と、地域創生や地域人材育成に貢献する。2019年2月には「北勢サテライト」が先に始動した3拠点に続き完成。企業活動が盛んなエリア特性から、三重県、産業支援センター、東京大学とも協働しながら、「日本のモノづくりの神髄を体感し富を生み出す拠点」を旗印に、産学連携事業やリカレント教育等に力を入れる。既に企業や行政機関との「健康福祉システム開発研究会」などが発足しており、今後も各分野で研究会を立ち上げながら、地域社会・産業界と直接的な議論の場を設けていく。
さらに2018年4月には、駒田学長をトップとする「地域創生戦略企画室」が始動し、サテライトが抽出した地域課題に対して、企業や自治体等と組織対組織で地域連携を推進し、戦略的なプロジェクトを組み上げる体制を強化している。
地域との一層の連携による研究推進、教育の場としての役割を担う4つの「サテライト」。教育研究成果の社会還元を通じて地域創生に寄与する地域連携の本部機能を担う「地域創生戦略企画室」。その今後に地域の期待も高まっている。
伊勢湾や鈴鹿山脈など、豊かな自然のもとに立地する国立総合大学。1949年に三重県初の4年制大学として誕生し、今年創立70周年を迎える。その歴史の中で規模を拡大していき、現在は5学部・6研究科を展開。また、共同教育研究施設や、病院をはじめとする附属施設も充実する、三重県の中核的な教育研究拠点だ。教育と研究の成果を地域社会へ還元し、世界へ発信していくことを目標に、多彩な取り組みや改革を行っている。
http://www.mie-u.ac.jp/