名古屋工業大学

地域産業界との融合を強化して
「心に届く工学」を実践する

イノベーションによる幸(さち)
創造の工学へ

名古屋工業大学学長 木下隆利氏。理事(研究企画・評価担当)・副学長を経て2020年度より学長に就任。専門は高分子化学。

―急速な技術進化が進むなか、工学を取り巻く環境についてどのようにお考えでしょうか。

 工学はいつの時代も産業界と密接な関係を築き、日本の発展を支えてきました。かつて日本の技術力は「メイド・イン・ジャパン」として世界を席巻しましたが、少子高齢化や新興国の台頭などにより、その位置づけは相対的に低下しています。天然資源の乏しい日本が、今後も世界と渡り合っていくためには、工学に携わるすべての人間が現状を自覚し、危機感を持たなければなりません。
 技術進化がライフスタイルを変え、幸福に対する感覚も変化しています。工学のミッションも「技術の改良」から、イノベーションによる「新たな価値の創出」へと変わりつつあります。0から1を生み出す過程には失敗が付きものですが、これまでにない価値は人々に新たな喜びをもたらします。これからの工学には、失敗を恐れずチャレンジを続け、幸を創造する視野を持つことが求められると思います。

―「幸創造の工学」の実践に向けた、名古屋工業大学の研究・教育方針についてお聞かせください。

 イノベーション創出のカギとなるのは、分野や組織の枠を越えた融合だと考えています。本学では創立以来、企業や行政との連携を重要な使命の一つとしてきましたが、第3期中期目標では「中京地域産業界との融合」という旗印のもと、より積極的に企業や地域社会の声に耳を傾け、課題解決につながる研究に取り組んでいます。また、産業の最前線で求められている工学人材像を明確化し、教育システムに反映させるなど研究・教育の両面で改革を推進していきます。

―研究指針として掲げる「工学のイノベーションハブ」とは、具体的に何を表しているのでしょうか。

 本学が「人・知・技術」をつなぐ拠点となり、産学官連携や国際共同研究によって生み出した新たな価値を、世界に発信していくという決意を表しています。具現化に向けて、国内外の大学・研究機関、産業界、行政、金融界で構成する「産学官金連携機構」を設置し、異分野融合やグローバル化を推進する先端的な各種研究センターを立ち上げ、研究力強化に取り組んでいます。2020年度は受託研究費が初めて13億円を突破。教員一人当たりの研究費受入額で全国公私立大学の中で3位になるなど、着実に成果が生まれています。今後もさまざまなステークホルダーを結ぶハブ機能を強化し、産業界の発展に貢献していきたいと思います。

「これからの工学には、心のフィルターを通して幸を創造することが求められる」と語る木下学長。

社会の変化に対応した実践型の工学教育

低温分光器を前に外国人博士研究員と議論する神取研究室の大学院生。

―教育では「工学教育のフロントランナー」という指針のもと、さまざまな改革を実施されています。

 あらゆる産業で分野融合が進み、企業は幅広い工学知識とスキルを備え、異なる事業部をつなぐことができる人材を求めています。本学では2016年度に学科専攻を改編し、国立大学としては初めて電気・機械工学科を設置しました。また同時に、専門を中心に工学全体を幅広く学ぶ、6年一貫の創造工学教育課程を新設しました。
 創造工学教育課程は、1年次から複数の研究室を体験する「研究室ローテーション」をはじめ実践的なカリキュラムが構築され、多様な価値観に触れ、自主的に学びを組み立て進められることが大きな特徴です。専門分野の異なる仲間と議論を重ね、失敗を恐れず〝正答のない課題〟の解決に取り組むことで、エンジニアとしてのスキルはもちろん、協調性、調整力、タフな精神力を備えたイノベーション・リーダーの育成を目指しています。設置から4年が経ち、昨年度末に実施した地元企業による学生評価の結果も上々で、活きた工学教育ができていると手応えを感じています。

―受験生へのメッセージとして、工学の未来を担うエンジニアに欠かせないものを教えてください。

 「心で工学をする」という信念ではないでしょうか。便利な化学製品の開発が公害を生んだように、急速な技術進化は社会に劇的な変化をもたらします。だからこそ、これからのエンジニアには、社会と向きあいながら、幸の創造に取り組む姿勢が求められるのだと思います。
 名古屋工業大学は、頭脳による工学を客観視する「心の工学」を、教育・研究の両面で実践していきます。エンジニアである前に、社会から信頼される人間でなければ、心の豊かさを実感できる社会は実現できません。そのことを意識しながら学び続けてください。

TOPICS[注目のトピック]

学生フォーミュラプロジェクトが
世界2位の快挙!
 2019年12月に発表された学生フォーミュラ世界ランキングで、名古屋工業大学フォーミュラプロジェクトが世界第2位にランクインした。
 学生フォーミュラ大会は、学生が製作した小型レーシングカーの走行性能や設計プロセスを競う大会。世界各国でレースが開催され、日本大会には海外勢を含め約100チームが参加する。名古屋工業大学フォーミュラプロジェクトは第1回大会から参戦し、2015年から3年連続3位を獲得するなど実績を伸ばしてきた。そして2019年、17回目の挑戦となった「学生フォーミュラ日本大会2019」で、最新車両「NIT-17」が他大学を圧倒する走行を披露し、初の総合優勝を果たした。
 世界ランキングは過去3年間の大会結果をもとに作成され、車両製作にかかるコストやデザイン、プレゼンテーションも審査対象となっており、文字通り「ものづくりの総合力」が評価されての快挙となった。
約100チームの頂点に立った「NIT-17」を囲み笑顔を見せるメンバー。

TOPICS[注目のトピック]

女性研究者育成制度
「スタートアップ助教」
 名古屋工業大学は2020年4月に、独自の女性研究者育成制度「スタートアップ助教」を創設した。
 この制度は、博士前期課程を修了した女子学生を助教として採用し、在職しながら博士後期課程の学位取得を目指す〝社会人ドクター〟制度。修士課程の優秀な女子学生に研究者を目指す機会を提供することで、女性研究者の裾野拡大や研究力強化を図ることが目的だ。
 採用されたスタートアップ助教は「若手研究イノベータ養成センター」に所属。研究費と個人研究室が配分され、5年間の任期中に学位を取得して研究業績を積み上げることで、テニュアトラック助教、准教授、教授への道も開かれる。
 このような女性研究者育成制度は全国に先駆けた先進的な取り組みで、今後も名古屋工業大学の修士課程学生に限らず、幅広く世界から女子学生を公募し、優れた女性研究者を育成していく。
優秀な女子学生に研究者を目指す機会を提供している。

PROFILE

名古屋工業大学

中部地域初の官立高等教育機関として、1905年に創設された国立工科系大学。名古屋市の中心部にキャンパスを構え、基盤的・先端的研究の成果と優れた工学人材の養成により、ものづくり企業が集積する中京地域産業界を支えている。2016年に設置された6年一貫の「創造工学教育課程」では、工学全体を俯瞰して新たな価値を創出する、イノベーション・リーダーの育成に取り組んでいる。
https://www.nitech.ac.jp/

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