
―名古屋芸術大学は2020年の今年、創立50周年を迎えました。これまでの歩みはどんなものでしたか?
本学は1970年、当時珍しかった音楽学部・美術学部を併せ持つ大学として誕生しました。中部圏唯一の私立芸術系総合大学として存在感を強めるなか、2002年、美術学部から独立させてデザイン学部を開設。母体である学校法人名古屋自由学院は幼稚園教諭や保育士の育成に力を注いできており、その一環である名古屋自由学院短期大学保育科の流れをくむ人間発達学部を2007年に開設しました。そして、2017年に大々的な改組を行い、新しい学びをスタートさせました。
―「ボーダレス」な学びですね。その背景、詳細を教えてください。
社会が大きく変わるなか、色々なものが結びつき、新しい文化が誕生しています。芸術の在り方も変わり、活躍のスタイルや場も広がって、従来の枠に収まらなくなっています。さまざまな世界で、ジャンルを超えたトータルな力が求められるようになっています。そこで生まれたキーワードが「ボーダレス」です。
縦割りだった学部学科の壁を取り払い、芸術学部に統合し、「音楽領域」「美術領域」「デザイン領域」と、新たにリベラルアーツを学ぶ「芸術教養領域」を設置。人間発達学部子ども発達学科と共に学修体系を整備しました。各領域の科目を自由に選択できるカリキュラムで、専門の領域プラス他の領域の素養も身につけられ、マルチに活躍できる力を育てる体制を作りました。
―「Worldea(ワールディア)」という新プロジェクトも始まっています。
学生数も増え、成果が見えてきた「ボーダレス」な学びを進化させるため、2019年に開始しました。「WorldクラスのIdea」 を自分のものにする、世界で通用するスキルを磨くプログラムを、3セクションで展開しています。活躍のステージを広げる表現力を培う「アート/エデュケーション」、語学力を身につける「グローバル」、学びを社会に還元する思考力を習得する「キャリア」です。例えば「グローバル」では、外部スクール提携の講座などで、世界に自分をアピールできるような英語力を養成。思い描く出口からプログラムを提供しています。
―将来はどんな道が開かれているのでしょう。また、サポートは?
芸術大学出身者は、プロの演奏家やアーティストになる以外、就職は厳しいと考えられがちですが、卒業生は芸術を通じて学んだ感性やコミュニケーション能力を生かし、多様な分野で活躍しています。確かにプロになれるのは一握りですが、チャンスはあります。たとえ叶わなかったとしても、何かを追求することで得るものは大きく、それを色々なところで生かせます。
各種の講座やインターンシップ、また、ポートフォリオの作成といった「Worldea」のプログラムも含め、キャリアサポートも充実させており、本人の希望をできるだけ実現できることを大切にしています。
いい大学を出て、いい企業に入って一生安泰、という図式は崩れています。そんな時代にこそ大切なのは、感性。それはビジネスにも、どんな世界でどう活躍するにも必要です。私自身、オーケストラで学んだことが大学運営にも生きています。感性は芸術に接することで身につきます。それでしか身につかないと言っても過言ではないでしょう。だからこそ一般の大学も芸術にアプローチすることが増えています。
―これから大学へ進む人に向け、一言お願いします。
好きと思えること、学びたいことがあれば、ぜひ飛び込んでください。そうすることで納得できる、いい人生が送れると思います。あなたの前にはあらゆる可能性が開かれています。芸術を通して磨かれる感性、ひらめき、創造性を生かす道はいくらでもあります。
―最後に今後の展望を。
これまでにやってきたことをさらに発展させ、新時代に芸術大学としてあるべき姿を示していきたいと考えています。まず2021年度に行うのは、「美術領域」の時代に合わせた改編。もう一つが「舞台芸術領域」※の開設です。音楽も美術も、デザインも、すべてが有機的に結びついて完成するのが舞台。これはまさに芸術の集大成、中心で、その専門家を今までにない実技体制で育てます。またこれにより、音楽領域にあるミュージカル俳優やダンサー、声優を養成する課程と併せ、舞台を創り上げる人材の育成を網羅できます。
※ 2021年4月、開設準備中。
私立大学では東海地区唯一の芸術系総合大学として、1970年に開学。2017年に教育改革を行い、音楽・美術・デザイン・芸術教養を学べる芸術学部芸術学科、人間発達学部子ども発達学科の、2学部2学科を構築し、選択と可能性の幅を広げた。2つのキャンパスは名古屋駅から30分圏内の、各地から通いやすい立地。緑の多いのびのびとした環境で、それぞれの活動をバックアップする施設・設備も整っている。
http://www.nua.ac.jp/