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「リウマチ・膠原病の最前線」第61回 日本リウマチ学会総会・学術集会 市民公開講座

座長
  • 三森経世先生
  • 三森 経世 先生
  • 京都大学大学院
    医学研究科
    内科学講座臨床免疫学
  • 齋藤知行先生
  • 齋藤 知行先生
  • 横浜市立大学副学長
    大学院医学研究科
    運動器病態学

リウマチ・膠原病治療への理解を深めてもらおうと、市民公開講座が4月23日、福岡市博多区の福岡国際会議場で開催されました。3人の専門医が、近年大きく進歩している治療法について、全国膠原病友の会の代表が病気との上手な向き合い方について講演し、約1000人の参加者が熱心に耳を傾けました。

  1. 講演1 関節リウマチの治療最前線

    抗リウマチ薬の進化で治療の幅も広がる

    • 川上純先生
    • 川上 純 先生
    • 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 先進予防医学共同専攻リウマチ・膠原病内科学

     関節リウマチは、関節の滑膜が増殖し腫れが起こり、次第に関節の骨が破壊されていく病気です。早期に適切な治療を行うことが大切で、寛解したら薬を減らせる場合もあります。

     抗リウマチ薬に関しては、以前は第一選択薬でもあるメトトレキサートなどの経口薬しかありませんでした。しかし2003年から、メトトレキサートよりも関節炎と関節破壊の進行を抑える力が強い、生物学的製剤が使われるようになりました。8種類の生物学的製剤に加え、13年には同等の有効性が期待される経口薬のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤が発売されました。これらにより治療の幅が広がり、関節リウマチの予後も良くなっています。

     具体的な治療の進め方は、医師による関節の診察、医師・患者さんによる評価、血液検査の結果を基に「総合的疾患活動性スコア」を算出し、治療の指針を決めていきます。必要であれば、滑膜の炎症を観察できる関節超音波や核磁気共鳴画像装置(MRI)で、より詳しく炎症を確認します。関節リウマチの活動性が高いと判断した場合は活動性を1カ月から3カ月ごとに評価し、治療を進めていきます。薬は、治療アルゴリズムにのっとって投与していきます。日本リウマチ学会の診療ガイドラインでは最初にメトトレキサート、効果がなければ生物学的製剤を併用。それでも効果がなければ、別の種類の生物学的製剤もしくはJAK阻害剤を用います。

     治療は進歩していますが、患者さんの状態は一人一人異なります。主治医と相談しながら、病気を正しく理解し、治療に取り組んでください。

  2. 講演2 関節リウマチの外科療法

    機能を損なわない手術で生活の質が高まっている

    • 西田圭一郎先生
    • 西田 圭一郎 先生
    • 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 生体機能再生・再建学講座 整形外科

     正常な関節の3要素は、「痛みがない」「安定している」「よく動く」ということです。リウマチが進行し、適切な薬物治療を受けているにもかかわらず、関節の3要素のうち一つでも半年以上にわたって損なわれた場合や、思い通りの生活が難しくなったときが、関節手術を受ける目安です。

     人工関節置き換え手術は、短期間で関節の3要素を取り戻すことができ、膝・肘・股関節では安定した成績を残しています。デメリットとしては、感染に弱い、脱臼の可能性がある、全ての患者さんに長期耐用性が得られるわけではないということ。さらにタイミングを逃すと、良い結果が得られるとは限りません。

     実例を挙げると、生物学的製剤を使用しても痛みが取れない患者さんがレントゲンを撮ったところ、関節が破壊されていました。人工肘関節置き換え手術に踏み切りました。早期の段階だったため、術後は正常な時と同等の機能を取り戻すことができています。

     足関節の手術に関しては、今までは固定するしかありませんでしたが、人工関節や手術技術の向上などにより、術後にスムーズに歩けるケースも増えています。また最新のトピックとして、2016年11月、日本で初めて人工手関節が作られました。実用化は今年5月の予定ということです。

     医療の進歩とともに、体の機能を損ないにくい手術ができるようになり、患者さんの生活の質も高まっています。手術を選択される場合、その必要性、内容、術後の見通しなどを、専門医、家族とよく話し合ってください。

  3. 講演3 膠原病の新しい治療

    早期治療、新規治療薬で体にダメージを与えない

    • 桑名正隆先生
    • 桑名 正隆 先生
    • 日本医科大学アレルギー膠原病内科

     膠原病は、全身の血管や皮膚、筋肉、関節などに炎症が起こる病気の総称です。関節リウマチも含め、多くの病気があるため、今回は現在行われている膠原病の一般的な治療の考え方を紹介します。

     膠原病患者の経過を見ると、熱などで発症した後、5年、10年と入退院や手術を繰り返して、臓器の機能障害を起こします。問題は、病気そのものだけでなく、薬の副作用や合併症などによって体にダメージが蓄積されることです。長期にわたる機能を維持し、通常の生活を送るためには、ダメージを蓄積させないことが重要です。そのためには、薬で病気を抑えるのと同時に薬による副作用を最小限にする必要があります。それらから現在、専門施設では三つのことが実践されています。

     一つ目が早期診断。二つ目はステロイド使用を最小限にするため、初期にステロイドパルス療法や免疫抑制薬を組み合わせた集中的な寛解導入療法を行います。三つ目は新規治療薬の導入です。

     2015年から、ようやくダメージ蓄積を予防する免疫調節薬ヒドロキシクロロキン硫酸塩が使えるようになりました。基礎研究で病気の原因となる分子や細胞が次々に判明しています。関節リウマチで原因に関わる分子をピンポイントで抑える生物学的製剤が治療効果を向上させたように、他の膠原病でも、それと同じような薬が世界中で開発されています。

     早期診断に加えて、薬を上手に使い、副作用管理など包括的な戦略を立て、ダメージを蓄積させない治療を実践することで、膠原病の治療も新たな時代を迎えようとしています。

  4. 講演4 膠原病とどう向き合うか?

    病気と支援制度を知り希望の持てる療養生活を

    • 森幸子さん
    • 森 幸子 さん
    • 一般社団法人 全国膠原病友の会

     私は33年前、膠原病の一つで難病指定もされている全身性エリテマトーデスと診断され、目の前が真っ暗になりました。肉体だけでなく、精神的、経済的、社会的な苦痛も感じました。膠原病と向き合うということは、病気、医師、家族、仲間、社会はもちろん、これまでの自分とは違う自分に向き合うということです。

     膠原病友の会は現在、全国35の地域で相談・講演・勉強・交流会などの活動をしています。私たちには三つの目的があります。一つ目は、希望が持てる療養生活を送るために、病気と支援制度の知識を患者自身が得ること。二つ目は、同じ疾病や経験を持つ仲間と交流を図ることで、治療への勇気、病気と共に生活するという広い心を持つこと。三つ目は、膠原病の原因究明と治療法の確立、社会的支援システムの樹立を要請することです。

     膠原病は、長期にわたる治療と高額な医療費がかかり、周囲に理解されにくい病気です。2015年1月、医療・療法環境を整えて難病患者を支援する「難病法」が施行され、多くの膠原病が指定されています。障害者総合支援法、障害者差別解消法、障害者雇用促進法など障害者の制度も使えるようになりました。

     療養環境を整えるためにも、医療費助成制度を理解し、申請してください。難病指定を受けるだけでは使えるサービスに限りがあるため、身体障害者手帳の取得も勧めています。支援などの情報収集は、厚生労働省や難病情報センターのホームページで確認したり、当会の相談窓口や講演会などへ足を運んだりしてください。

  5. Q & A 事前に寄せられた質問に、登壇者が答えました。

    Q

    関節リウマチですが、妊娠を希望しています。リスクや対策は。

    A

    川上 妊娠前に関節リウマチの活動性を抑え、しっかりと治療することが基本です。妊娠時には禁忌薬があり、メトトレキサートもそれに入ります。メトトレキサートの使用は、少なくとも妊娠の約4週間前(1月経周期)は避ける必要があります。生物学的製剤も妊娠がわかったら使用を中止することになっていますが、ケース・バイ・ケースも考えられますので、専門医にご相談ください。

    桑名 膠原病でも、原則は関節リウマチと同じで、妊娠前に活動性を抑えて最小限の薬にしておくことが大切です。

    Q

    関節リウマチの手術は、痛みが出てから行ってもいいでしょうか。

    A

    西田 関節リウマチの中には、関節はグラグラなのに痛みが伴わない場合があります。手指だけでなく、膝や肘でもおこりますので、まずは主治医にご相談を。また治療期間が長くなり、高齢になった患者さんで、背骨が曲がって足に痛みやしびれが出る場合があります。まひが出てしまうと手術が必要ですが、予防的手術もあります。

    Q

    薬が経済的に負担になっています。寛解したらやめられますか。

    A

    川上 関節リウマチの生物学的製剤は、薬価が3割ほど安いバイオシミラー(バイオ後続品)も出ています。生物学的製剤では早期治療で寛解した人の場合、50%ほどが減量もしくは中止できるのではないかという論文も出ています。もし再燃しても、同じ薬剤の投与で元の状態に戻ることが多いです。

    桑名 膠原病は指定難病ですので、高額な薬を必要とする重症度の場合は公費負担の対象になります。

    医療費助成については、都道府県の保健所が窓口になっています。関節リウマチは、身体障害者手帳の等級によって受けられる助成金も変わってきます。市町村の窓口か、難病相談支援センターへご相談ください。