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オピニオン vol.2 日本語を共通言語として海外とネットワーク利用共同授業――日本文学文化学科のユニークな試み 専修大学文学部 日本文学文化学科 板坂則子教授

インターネットで海外大学とつなぐ共同授業・遠隔授業が、独自の工夫により大きな成果を上げています。そこで、この「VC授業」を採用している文学部 日本文学文化学科 板坂ゼミナールの取材レポートとともに、担当する板坂則子教授のインタビューを紹介します。

学生の熱気が物語るVC授業の成果

板坂則子教授
板坂則子教授

取材で訪れた板坂ゼミの授業風景は、文学部の、それも日本古典文学を扱うゼミの授業とはとても思えない。画像をふんだんに使ったパワーポイントの画面の前で発表する学生、内容は文学ではなく、「和菓子」についてだ。発表が終わると、聞いていたほかの学生たちが、手厳しい批評もまじえて活発に意見を述べる。続いて別の学生が「黒髪文化」について発表し、また意見交換。それらを板坂教授がテキパキと進行させていく。

この日は、3週間後に予定されている台湾・輔仁大学との共同授業に向けて、当日発表を担当する学生たちが研究の途中経過を披露。仲間や教授からのフィードバックをふまえて内容をブラッシュアップし、本番に臨むのだという。

共同授業とは、「VC(Vertual Classroom)」、テレビ会議のシステムを使って、海外の大学の教室と専修大学の教室をインターネットでつなぎ、両大学の学生が参加して行われる授業のこと。それぞれの担当教員の指導のもと、共通のテーマに対する調査・研究の結果を学生たちが発表し合い、それを元に、リアルタイムのやりとりで議論を進めるというものだ。


「前回の台湾・輔仁大学との共同授業の様子。スクリーンにお互いの様子が映し出される(右が輔仁大学の模様)。」

同学科のVC授業にはもう一つ、「遠隔授業(Internet Lecture)」がある。こちらは、海外の大学の教員がネットを通じて専大生に講義を行い、そのあとのリアルタイムの質問・議論を経て理解を深める。

これら「国際間のネットワーク利用共同」授業の連携先は、ほかに、カルガリー大学(カナダ)、ケンブリッジ大学(イギリス)、ペンシルヴァニア大学(アメリカ)、フランクフルト大学(ドイツ)、ヴェネツィア大学(イタリア)、大田大学(韓国)など、欧米・アジアに広がっている。文部科学省の複数の補助事業に採択され、また全国大学IT活用教育方法研究発表会で、板坂教授の発表が奨励賞を受賞するなど、教育界でも高い評価を得ている。

もちろん、インターネットを使った海外の大学とのコラボは、いまではさほど珍しくない。ただ、同学科のVC授業には、際立った特徴がふたつあり、それが成果の大きさと継続性につながっている。

ひとつは、発表、講義、議論がすべて日本語で行われるということだ。「共通言語=英語」と考えがちだが、この授業の場合は事情が異なる。連携先はすべて日本語や日本文化や日本の経済や政治、すなわち「日本学」を専門とする学部・学科やそれらを海外の大学で担当する教員であり、教員はもちろん、その下で学ぶ学生たちの日本語能力も、非常に高いのだ。英語圏以外の大学も多く、またネットを通した英語会話は聞き取りにくいということもあり、それならば、日本人の責任として、日本語による理解を深める工夫をするほうが、お互いにメリットは大きい。むろん日本の学生にとっては、それだけ参加しやすくなる。

もうひとつの特徴は、通常なら大学の担当部署のサポートを必要とする情報機器の操作・管理を、大学院生を含む学生たちが自力でやっているということ。その結果、予算が節約されるだけでなく、やや大がかりなITシステムを扱う知識や技術も学生間で代々受け継がれているという。

授業終了後、何人かの学生に話を聞いた。皆が口を揃えたのは、「和歌など日本人にも難しいことまでちゃんと勉強している」「自分たちが知らないことまで調べて、反対に教えてもらえることが多い」など、海外の学生たちの勉強熱心さへの驚きだ。「日本の作品を先入観なく受け入れる外国人の意見が新鮮」と、いろいろな面で大きな刺激を受けているようだ。


板坂ゼミの学生

また、海外の学生の日本語力に感嘆しながら、「外国人にとってわかりやすい日本語を考えるのは意外に難しく、理解してもらえたときは嬉しい」と話す学生もいた。

「お互いの発表の内容もさることながら、そのあとの対話の中での発見が大きい」など、各国の学生と直接やりとりできる機会がよい体験につながっているようで、「国ごとの学生の違いよりは共通性の方を強く感じる」「日韓が領土問題を抱えていても、学生同士は理解しあえることがわかった」といった感想も聞かせてくれた。

「現代における古典表象」「異文化との交信」「童話」など、挙げてもらったこれまでの共同授業のテーマも興味深く、オープンキャンパスでVC授業を体験してこのゼミを志望した学生がいるのもうなずける。何より、ゼミ生たちがここでの学びを楽しんでいる様子が、とても強く伝わってきた。

日本に対して自信を持つことがグローバル化につながる(板坂教授談)

板坂則子教授

私どもの「国際間のネットワーク利用共同」授業には、ヨーロッパにおける日本学の第一人者・ケンブリッジ大学の Peter Kornicki 先生(欧米の日本文学の授業では彼の教科書を使う学生が多いのです)、カナダにおける第一人者・ブリティッシュコロンビア大学の Joshua Mostow 先生はじめ、そうそうたる方たちが参加してくださっています。

まず学生たちは、そうした先生方の日本語力、そして日本に対する知識の深さに舌を巻きます。現代語を流暢に話されるのはもちろんのこと、自分たちが四苦八苦している古文を、当たり前のように原文のまますらすら読み、日本人が知らないことをたくさん教えてくれるんですから。授業が終わるやいなや、必ず数人は図書館に走ります(笑)。

そして、たとえばフランクフルト大学の Guido Woldring 先生は必ず、次のように言ってくださいます。「僕は、日本語が世界で一番美しい言語だと思う、それが日本文学を研究している理由なんだ」と。これを聞くと、学生たちは本当に感動します。日本と日本文化に対して、自信を持つようになるんです。

もちろん、海外の学生からもとてもよい刺激を受け、相手のことも知らなければ、と考え始めます。こうして、彼・彼女等の目は間違いなく世界に向かって広がっていく。必ずしも「グローバル化=英語力」ではなく、自国の文化や歴史についてきちんと説明できる力をつけることが大事なのだと、あらためて感じます。

ところで、日本を含むアジアの学生が知識の量や正確さを重んじるのに対し、欧米の学生は分析や理論を重んじる傾向があります。これはどちらも大切で、私は学生に、レポートなどではただ調べた情報を並べるだけでなく、必ず自分なりの論を立てるよう指導しています。ただ、相手を論理的に納得させるというのは、もともと日本人が苦手とする部分ですよね。

VC授業の初期の頃、本学の学生は、ヴェネツィア大学の学生に議論で太刀打ちできず、いつも言い負かされて悔しい思いをしていました。でもその経験から少しずつ学び、あるときしっかり準備をして、徹底的に反論したのです。ついに向こうの学生は、堪能なはずの日本語での議論を続けることをもどかしく思い、先生に通訳を頼んでイタリア語でしゃべり始めた。初めて対等にやり合えた、とこちらの教室は大喜びでした。

それをきっかけにコツをつかんだようで、以後は欧米の学生とも遜色なく議論をたたかわせていますよ。これもグローバルな人材に求められる資質のひとつでしょう。

VC授業の副産物というのか、ゼミ生はみな情報機器を「文具」として使いこなせるようになります。単に技術を身につけるだけでなく、受け手の立場に立って、その使い方を考えられるようになるのです。実はSEになる卒業生が多いんですよ。日本文学文化学科出身のSEは珍しいと思いますが、わかりやすい取扱説明書を作るときなど、力を発揮するはずです。

正直なところ、私たちのゼミは、年間数回の発表に加え、ディベートその他スケジュールがぎっしりで、本当に忙しい。学生は悲鳴をあげています。でも、それだけのものを充分に得てもらえると確信しています。

板坂則子教授板坂 則子(いたさか のりこ)
東京都出身。東京大学大学院人文科学研究科博士課程終了。東京大学博士(文学)。群馬大学教育学部講師・助教授を経て1992年より専修大学文学部教授。日本近世文学会常任委員、国際浮世絵学会常任理事。 江戸時代の文学文化、特に戯作(江戸時代後期小説)、曲亭馬琴を研究。つるバラの愛好家。主な著書に『曲亭馬琴の世界 戯作とその周縁』(笠間書院・2010年)、『東京大学所蔵・草雙紙目録 一~五編、補編』(共著、日本書誌学大系67、青裳堂・1993~2006年)、『馬琴草双紙集』(叢書江戸文学33、国書刊行会、1994年)など。

板坂ゼミナールの情報はこちら

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