教員養成に140年を越える歴史

栗林澄夫学長は「教育に携わる使命感を持ってほしい」と話す
大阪教育大学の歴史をたどると、1874年設立の教員伝習所にさかのぼる。以来、同大学は、教員養成を目的とした教育によって高い評価を得てきた。その結果、2015年度の教員就職者数が全国の大学でトップになる(※)など、教育界に強い影響力を持っている。同大学で、来年度から行われるという大幅な組織改革について、栗林澄夫学長に聞いた。
「本学はこれまで、広い教養を背景とする高度な専門知識の修得と、教育現場を中心に幅広い職業分野での実践力の養成に力を注いできました。教育界での人材育成を通して、地域と世界の人々の福祉に寄与したいと考えるからです。そのため従来は、個別教科の専門性を重視してきました。しかし現在の学校現場が抱える問題は、複雑化しています。現場での実践力を高めるため、来年度からのスタートに向けて新たな組織作りに取り組んでいます」
※小学校・中学校・高校の合計。朝日新聞出版発行「大学ランキング2017」より
目指すのは社会と協働できる人材育成

大阪教育大学附属平野小学校で行われた教育実習
同大学は、来年度以降、現在の教員養成課程を、初等教育教員養成課程(仮称、設置申請中)、学校教育教員養成課程、養護教諭養成課程に再編する。さらに、教養学科を教育協働学科(仮称、設置申請中)に改める予定だ。
「初等教育教員養成課程、および学校教育教員養成課程では、学校種間の接続対応を重点課題とします」
初等教育教員養成課程では、幼稚園から小学校への移行がスムーズに進むことを念頭にカリキュラムが組まれる。同課程の学生は、教養課程を柏原キャンパスで受講した後、天王寺キャンパスで学ぶことになる。
「学校教育教員養成課程では、小学校と中学校の学習上の接続に対応する小中教育、中学・高校の接続に対応する中等教育、さらに特別支援教育を盛り込みます」
今回の組織改革の狙いは、学校現場での実践力を養うことだ。
「教科に関する専門的知識を修得しつつ、学校種ごと特有の課題を、実習やインターンシップなどの活動を通して体験し、その解決を図ることで現場対応力を高めます」
また、来年度からの設置を目指すのが、教育協働学科である。同学科では従来の8専攻を、教育心理科学、健康安全科学、理数情報、グローバル教育、芸術表現、スポーツ科学の6専攻に集約する予定となっている。
「新しい学科で育成を目指すのは、学校や社会と協働できる人材です。いわゆる『チーム学校』の中心メンバーとなり、学校現場や社会で持続的に発生する教育課題を解決できる、専門性と教育マインドを兼ね備えた人材を育成します」
世の中が変わっても変わらない仕事

外国語学習支援ルームでのレッスンの様子
社会はいま、急速に不確実性を増している。イギリスのEU離脱などはその典型であり、国内に目を向けても、先行きの不透明感はより一層強まってきている。将来的には、AI(人工知能)の進化により、多くの職業が失われるとの予測もある。
「たとえ、どのように世の中が変わるとしても、絶対に変わらない仕事、変えてはいけない仕事があります。それが教育です。人が生まれ、育ち、社会的役割を果たす。そのサイクルのなかで学校教育の必要性がなくなることはありません」と栗林学長は断言する。
「教員や教育に関わる仕事を目指す人には、社会を構成するために最も基本的で必要とされている仕事に携わっていく自覚と意欲、そして使命感を持ってほしい。他者を支え、導く仕事は、容易なものではありません。だからこそ、充実感と達成感があると私は考えています。教育という仕事のやりがいを、ぜひ、本学で見つけてください」