朝日新聞
 広告特集 企画制作:朝日新聞社メディアビジネス局
 

2020年の実用化に向けて進む着るロボティックウェアcurara® 繊維学部 機械・ロボット学科バイオエンジニアリングコース 橋本 稔 教授2020年の実用化に向けて進む着るロボティックウェアcurara® 繊維学部 機械・ロボット学科バイオエンジニアリングコース 橋本 稔 教授

Your Dream × Shinshu University

今までになかった、人に優しいロボット

人に学んでロボットをつくる「バイオロボティクス」

はくだけで装着できるパンツタイプのcurara®

ロボット工学の基本的な考え方は、人の作業機能を機械で同じように実現するということです。掴んだり、動かしたりといった、比較的簡単な機能であればロボットで再現できます。たとえば「移動」という機能を考えると、人の場合は二足歩行で移動しますが、車輪で転がっても移動することは可能です。どんな方法でも移動という機能が実現できればいい、そういう方向でロボット工学は発展してきました。

けれども機能をより追求していくと、車輪よりも人間のように足で歩くことができれば、より小回りが利き、狭いところにも移動できます。人ができる機能のなかでもより複雑なものに着目すると、これまでのアプローチでは実現できないというのが課題になってきました。

そこで「人に学んで機械を作る」という考え方から生まれたのが、バイオに学ぶロボットの研究、すなわちバイオロボティクスです。近年はロボットが工場の製造ラインに限らず、人の生活環境の中でも使われるようになりました。そのため、人間に近い機能を再現したいという視点から、バイオロボティクスの研究が盛んになっています。

人に合わせてロボットが動く制御法

今後は、介助や介護に代表されるように、人間の生活環境の中でもロボットに活躍してもらいたいシーンは増えるでしょう。そこで10年ほど前から研究開発してきたのが“着る”生活動支援ロボティックウェア「curara®」です。体が思うように動かない高齢の方などが装着することで、歩行をサポートする生活支援ロボットです。

ウェアラブルロボットはたくさん開発されていますが、curaraの大きな特徴は「人に優しい」という点です。具体的には、人の動きに合わせる「同調制御法」という制御技術にあります。

この技術の誕生は、私が「顔ロボット」や「握手ロボット」といったコミュニケーションロボットを開発していた約15年前に遡ります。人と人が握手する際、お互いに動きを合わせて力を加減したり、動かしたりしますよね。この「相手の動きに合わせる」という人の機能をどうすれば再現できるのかを、私は研究していました。

この機能はどこから生まれているかというと、中枢パターンジェネレーターという脊髄にある神経回路網です。そこで信号が出され、信号に基づいて筋肉が動くことで、相手に合わせる動きが生まれていると言われています。その神経回路網を数式によってモデル化したものがあり、「神経振動子」と呼ばれています。神経振動子を使って制御すれば、ロボットも人に合わせた動きができるのではないかと考えました。その研究で生まれた制御技術が、curaraにつながっています。

curaraはモーターの先に力を検出するセンサーがついています。着用者が動こうとすると、その力をcuraraが検出して、数式に当てはめてリアルタイムで計算。着用者をサポートする動きを生成します。センサーで検出した情報に基づいて新たな動きを生成する速度は、人間よりロボットの方が格段に速い。ですから、ロボットが人の動きに遅れてしまうことはないんです。

curaraは着る人に合わせて臨機応変に動くことができるのです。

ロボットからモーターが消える? 人工筋肉を開発

大腿の動きをサポートする人工筋肉のデモ機

現在、人工筋肉の研究も進めています。これはポリ塩化ビニルという素材に電極を挟み込んで電圧をかけ、人の筋肉のような収縮運動を再現しようというものです。

もとは1980年代にモーターを使わず、人工筋肉で動く人に近いロボットをつくろうとしたのが出発点です。ただ、当時は技術的に難しくて断念しました。でも、10年ぐらい前にこの素材を見つけて、今はアシストウェアへの応用も視野に入れて研究しています。curaraを動かす動力を、重いモーターに頼らずに、軽く小さな人工筋肉で代用できるようになるかもしれません。

ロボット研究のきっかけは「鉄腕アトム」

繊維学部 機械・ロボット学科 バイオエンジニアリングコース
橋本 稔 教授 はしもと・みのる/1953年、東京都生まれ。82年、東京大学大学院工学系研究科金属材料学専攻博士課程中退。電気通信大学助手、鹿児島大学助教授を経て、99年より現職。研究分野はバイオロボティクス。

私は手塚治虫さんの『鉄腕アトム』の世代ですから、ロボットには小さなころから興味を持っていました。そもそも日本でロボット工学という学問領域が生まれたのは1980年代。日本ロボット学会も1983年にできました。それまでロボットは工学の対象ではなく、「大学でロボットの研究なんてとんでもない」と言われる時代だったんです。

ロボットが大学でも研究されるようになった当時は、ロボットという言葉ではなく、人工の手という呼び方をされていました。学問としての歴史は浅く、私たちの世代が研究を始めた最初の世代だと思います。90年代後半になってASIMOやAIBOが登場したことで、やっと一般の社会でもロボットが受け入れられるようになりました。

大切なのは、何か自分で目標を定めてあきらめずに力を注ぎ続けていくということ。私はアトムを見て「すばらしいな」と感激したのがきっかけで、いつかロボットの研究をして、人の役に立ちたいと考えるようになりました。そのような子どもの頃からの夢を大事にしてほしい。進路は目先のことだけではなくて、長期的な計画を考えて決めてほしいと思っています。

繊維学部は蚕の研究ばかりをしているように思われがちですが、我々のようなバイオロボティクス分野をはじめ、幅広い研究が行われています。繊維や衣服は人が身につけるものですから、人がどう感じるかという感性を研究している先生もたくさんいらっしゃいます。ですから、ロボットの研究も工学部だと「機能」の追求に重点が置かれますが、繊維学部だと「人が使うもの」という点が重視されます。現在はロボットが単に工場の中で動くだけではなく、人間の生活環境の中に入ってくる時代です。繊維学部だからこその、「人」という視点は非常に意味深いと思います。

特集記事