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都留文科大学 「子ども理解」を柱に 教員を育てて60年北永麻実さん(右)。クラス全員と話すように心がけている都留文科大学 「子ども理解」を柱に 教員を育てて60年

北永麻実さん(右)。クラス全員と話すように心がけている

Your Dream × Tsuru University

アシスタントとして学生が教育現場に

東桂小学校の4年1組の児童と北永麻実さん。担任の北浦貴之先生(奥)は都留文科大学のOB

「これから5校時の国語の授業を始めます」と、日直の女子児童が声を掛けると、教室中に「はーい」「お願いします」と、元気な声が響いた。

山梨県都留(つる)市にある市立東桂小学校。4年1組の授業での一コマだ。子どもたちは漢字練習帳を開くと、書き取り練習を始めた。その手もとを、担任の北浦貴之先生と一緒に、やや緊張した面持ちで北永麻実さん(初等教育学科3年生)が見て回っていた。手の止まっている子どもには、「ここの書き順はこっちが先だよ」とさりげなく助け舟を出す。

北永さんは今年4月から週に1回、学生アシスタント・ティーチャー(SAT)として4年1組の授業に参加している。SATとは、小・中・高校の教員志望者を対象に実施されている学校版インターンのこと。学生が教育現場を経験できる機会を増やそうと、都留文科大学では2005年度から始まった。

学校インターンの制度そのものは珍しくはないが、教職を志望するほぼすべての学生が参加するという規模感は都留文科大学の特色だ。毎年、市内の小中学校11校に、約300人の学生が通っている。

教職支援センターで学生を手厚くサポート

毎回、最後に日誌をつけて活動内容の振り返りを行う

SATには、2年後期から参加でき、単位としても認められている。内容も複数から選べ、放課後に学習支援をする「Αコース」、授業に参加してサポートをする「Bコース」、学力不振や障がいなどに悩む子どもに関わる「Cコース」の三つが用意されている。

そもそも各大学で学校インターンが実施されるようになったのは、教員免許を取っても採用試験を受けない学生や、採用されても数年で辞めてしまう新人教師が増えたという背景がある。そこで学生時代に教育現場を体験できる機会を増やし、教員という仕事のイメージや心構えを持ってから、卒業を迎えるようにした。

教員養成で実績を持つ都留文科大学では、SATに加えて、14年には「教職支援センター」も開設した。SAT専門の教員2人が常駐し、派遣先の学校に学生の様子を見に行ったり、相談を聞いたり、手厚くサポートする。

センター長を務める田中昌弥教授は、「学生が教育現場と長く関わることで、学校や教職に対する理解が深まり、意欲の向上につながっている」と話す。

学生はSATの活動のなかで、思うようにいかず、いくつもの壁にぶつかる。冒頭の北永さんも「教室で突然ケンカが始まり、どうしてよいかわからずオロオロしてしまった」という経験をしたばかり。授業中に鉛筆すら持ってくれない子、イライラしている子……、現場ではさまざまな子どもと出会う。

田中教授は、真面目に勉強してきた学生ほど、うまく接することができない子どもに対して「『がんばれ、がんばれ』と、逆に抑えつけようとしてしまう」と、指摘する。

「子どもたちをよく見て、なぜ勉強を嫌がるのか理由を探ったり、気分を変えてみようとしたり、発想の転換ができるかが肝心です。もちろん大学の授業で理論や考え方は伝えていますが、やはり学生自身が多くの子どもと直に接し、経験を積みながら学ぶ必要があります」

ますます重要になる「子ども理解」の姿勢

教職支援センター長・田中昌弥教授(初等教育学科)。専門は教育学的認識論と臨床教育学をベースにした教育哲学

都留文科大学では、教員養成の柱として「子ども理解」を重視している。田中教授は「これまでの学校教育は、子どもを学校のやり方に合わせてきたが、今後は通用しない」と訴える。

「家庭環境や居住地域など、子どもたちの生活条件が多様になっています。子ども一人ひとりにストーリーがあり、教員はそれを理解して接していくことが大切です」

18年にはカリキュラムが大幅に改定される予定で、SATは1年生から4年生までレベルに応じた内容になり、より充実したものになる。さらに理論と実践の往復を徹底し、児童や生徒から信頼される教員を社会に送り出すことに力を注ぐ。

学長の声 President's voice

教員の養成を土台としたグローバル人材

都留文科大学 福田誠治学長

富士山麓にある本学は、地域社会に支えられ、教員の養成を中心とした単科大学として60年以上の歴史を持ちます。この伝統の上に、グローバリズムを重ねて教育の質を上げる―。これが本学の目指すところです。来年4月には、バイリンガル授業を行い、デンマークなどの北欧を中心に学生全員が留学する国際教育学科を新設する予定です。今秋の訪問審査に通過すると、国際的な教育プログラム「国際バカロレア」に対応した教員養成機関としても学部としては日本で初めて認定されるうちの一校となります。

また、既存の5学科も順次拡充します。初等教育学科は、小中一貫教育を担う教員養成に改編して、理系の中学校免許も取得できるように構想しています。社会学科は、現在の2専攻を地域経営、公共政策、環境社会、教育文化の4コースへ改編することを構想しており、地域で事業を興せる人材育成をより重視します。教養としての英語を学ぶ英文学科と、ツールとしての英語を学ぶ比較文化学科は、アプローチの仕方こそ異なりますが、日本やアジアの文化を英語で表現する力が重要な課題となるでしょう。このことは、日本文化の伝統を究めようとする国文学科の学生にとっても同様です。

現在、本学卒業生の半数以上は企業に就職しています。教員には実践力が必須なので、本学の教員養成に向けた質の高い授業と幅広い教育は、企業人になっても有効でしょう。さまざまな運動施設が授業とクラブ活動を支え、ほとんどが大学周辺に下宿して地域に暮らす学生たちは勉強に集中でき、交換留学、留学生のチューター、ボランティア、インターンシップなどを体験してグローバルな視点で学びを広げていくことも可能です。

今、世界の先進国における学びは探究する学びに変わりつつあり、転職が多い時代には学び続ける力が大切になっていますが、大学町・都留という濃い人間関係がそれを支えています。

特別なニーズのある子どもたちの地域の居場所をつくる 「クロボ(クロスボーダー・プロジェクト)」

色つきのシャボン玉を吹き付けて描くアート

知的障がいや発達障がいのある子どもが週末に集うことができる居場所をつくることを目的に始まったのが「クロボ(クロスボーダー・プロジェクト)」だ。初等教育学科の堤英俊講師と、ゼミ生たちが2014年11月に立ち上げた。

きっかけは、山梨県の富士・東部地域の障がいのある子どもの親の会からの一通の手紙。相談を受けた障がいのある子どもや親のほとんどは、学校卒業後も住み慣れた地域で暮らすことを希望していた。そこで、特別支援学校での教師経験を持ち、障がいのある子どもの教育やインクルーシブ教育(障がいの有無によらず、子どもたちが共に学ぶ教育)について研究してきた堤講師が、子どもたちの居場所づくりと同時に、学生や地域住民を巻き込みながらインクルーシブな地域づくりにも寄与しようとクロボを企画した。

現在は月1回のペースで開催。午前中はスポーツで汗を流し、お昼はみんなでお弁当を食べる。午後は小さなグループに分かれて、アート活動や言語活動、キャリア学習をする。ただ自由に遊ぶのではなく、競技のルールを確認したり、道具の使い方を練習したり、学びの要素が加えられた内容になっている。

フェルト製パックを使うフロアホッケー

教員を志望する学生にとって、クロボは教育実習やSATとはまた違った表情の子どもと触れ合える貴重な機会だ。

「学生は、『障がいのある人=助けが必要な人』という先入観を持ちがちです。その意味で、クロボで障がいを持つ子どもたちと直に出会い、小さな関係性を築くことを通して、ステレオタイプの見方から脱却してほしいと思っています。子どもたちを障がい名や特性のみで判断するのではなく、彼ら一人ひとりの内面の世界を理解しようとする姿勢が大切です」と堤講師は言う。

スタート当初は、堤ゼミのメンバーだけの小さな活動だったが、今では図工・美術を担当する鳥原正敏教授や竹下勝雄教授と、そのゼミ生たちも参加。学内での交流の輪も大きくなっている。また、現職教員の卒業生や地域住民のボランティア参加も増え、スペシャルオリンピックス日本・山梨や八ヶ岳名水会などの地域団体との協働も進展している。

「クロボを、これまで声が拾われなかった人たちの文化を育む場にもしたいと考えています」(堤講師)

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