朝日新聞
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横浜国立大学 学部教育を変える 「新YNUプロジェクト」途上国の社会開発支援に関する「スタジオ科目」で活発に議論する学生たち横浜国立大学 学部教育を変える 「新YNUプロジェクト」

途上国の社会開発支援に関する「スタジオ科目」で活発に議論する学生たち

Your Dream × YOKOHAMA National University

「文理融合」の教育に取り組む

「新YNUプロジェクト」と銘打った教育改革が進行中の横浜国立大学。現行の4学部を改編、新たに「都市科学部」(仮称)を新設し、今まで以上に「文理融合」と高い付加価値をもった教育体制を築く。その詳細を大門正克理事に語ってもらった。

「このプロジェクトは、学部教育を大きく変えることを目的に進めています。本学は、理工学分野、教員養成分野、人文社会科学分野が一つのキャンパスにあるという立地条件を生かし、文系と理系が協力する『文理融合』の教育に取り組んできました。それをさらに進化させたのが今回のプロジェクトです。グローバルな現代社会では、それぞれの分野の専門家が自分たちの殻に閉じこもっていては、複雑な社会のさまざまな課題を解決できません。文系と理系の横断的な思考ができる必要があります。だからこそ、『文理融合』の教育が重要なのです。そうした人材を育成するために何が必要か考えたとき、私たちは三つの社会的背景を念頭に置きました。一つは、グローバル化、次にイノベーション、最後が大都市です。横浜は、グローバル企業が集積する大都市であり、そうした企業から多くのイノベーションが生まれています。本学は横浜、神奈川地域にフォーカスした教育を目指します」

今回の改編の象徴となるのが、2017年に新設予定の「都市科学部」だ。1967年の経営学部以来50年ぶりの新設となるこの学部では、具体的に何を学ぶのだろうか。

分野横断的な勉強ができる学部

横浜国立大学の教育改革について語る大門正克理事

都市科学とは、都市社会の構想と設計のための人文社会科学と都市をかたちづくる建築学や都市基盤施設の設計、運用、維持のための都市基盤学、これらを取り巻く自然環境、社会環境にまつわるリスクと利益のバランスをマネジメントする環境リスク共生学によって構成される学問分野です。都市科学部のなかには、これらの分野を四つに分けた都市社会共生学科、建築学科、都市基盤学科、環境リスク共生学科(それぞれ仮称)があります。まさに文理が融合した学部で、分野横断的な学習ができるわけです」

横浜国立大学は、改めて「横浜、神奈川地域にフォーカスした教育」を目指すと語る大門理事。その真意はどこにあるのか。

「横浜、神奈川地区は、開港以来のグローバルな土地ですが、同時にさまざまなローカルな問題も抱えています。箱根の火山の問題などはいい例です。昨年、箱根の観光産業は火山活動の活発化によって大きな打撃を受けました。そこで、この苦境を知った本学の教員が、火山の噴火リスクをどうマネジメントするかをテーマにした学内コンペを発案し、文系と理系の学生が混成する5チームが箱根町の関係者や観光の専門家に話を聞き、火山の噴火リスクとどう共生していくかを考えました。優勝したチームが提案したのが『火山デリバティブ』。これに加入していれば、火山活動によって事業停止や観光客の減少に見舞われた事業者に保険金が支払われるといった仕組みの保険型金融商品です。まさに環境リスク共生学の観点から出てきたアイデアです」

「スタジオ科目」という一風変わった科目があるのも横浜国立大学の特徴だ。

「これはもともと、理工学部の建築都市・環境系学科と、教育人間科学部の人間文化課程にあった科目で、スタジオに複数の教員と学生が集まって一つのテーマを決め、座学だけではできない地域への取材などのフィールドワークを通じて社会への発信を行う体験型の授業です。これは都市科学部に受け継がれます」

イノベーティブな思考が重要

今回の学部改編によって、横浜国立大学はどう変わっていくのか。今後の展望を聞いた。

「21世紀という激変の時代を生き抜くには、いい意味での批判的精神を持ち、自分の頭でイノベーティブに思考できなくてはなりません。そうした人材を育てることが本学のミッションだと思っています。その核となるのが、来年発足する新しい都市科学部なのです」

※都市科学部の設置については現在文部科学省に申請中であり、内容等は変更になる場合があります。

学長の声 President's voice

グローバル新時代に対応した人材育成

横浜国立大学 長谷部勇一学長

世界のグローバル化が叫ばれて久しいですが、近年ではBRICsや東南アジア地域などの新興国に経済成長の軸がシフトしてきています。横浜国立大学はこうした時代を「グローバル新時代」と名づけ、世界と日本の持続可能性にどう寄与できるかを追求します。そうした時代のなかでイノベーションを起こせる新しい人材の育成に力を入れていきます。来年度開設予定の都市科学部(仮称)は、グローバル新時代とイノベーション創造という二つの点で、本学の象徴的存在にしたいと考えています。

本学は、三層のイノベーション論をスローガンに掲げています。一層目としてまずは、理工系が担う科学技術そのもののイノベーション。二層目は、科学技術を社会に受け入れてもらうための制度や社会システムをつくるイノベーション。これは経済・経営学などが担います。三層目は、人が何を幸せに感じるか、あるいは社会の今後のあり方はどうあるべきかなどを考える哲学や心理学など、人文社会系のイノベーションです。この三層に含まれる自然科学・社会科学・人文科学を連携して勉強できる環境がワンキャンパスにそろっているのが本学の強みでもあります。

また、本学がある横浜は、グローバルな国際都市でありながら、少子高齢化や環境問題、格差の問題など、ローカルな課題も多く抱えています。地域の課題の多くは、実はグローバルな課題でもあります。大学院国際社会科学研究院の相馬直子准教授が取り組んでいる「ダブルケア」の問題などがいい例です。成熟した日本社会だからこそ先進的に取り組める課題であり、今後中国をはじめ新興国・途上国に発信する意義があると考えます。

文系と理系が融合した都市科学部を中心に、各学部や大学院においても基盤研究とともに文理融合的な研究を進め、それを生かした教育で国際社会へ貢献したい。それが私たちの使命です。

グローバル×ローカルから見えてきた東アジアの新しい課題育児と介護の両方を担う「ダブルケア」問題

ダブルケア問題について語る相馬直子准教授

「ダブルケア」とは、子育てと親の介護に同時に従事することを指す。横浜国立大学の相馬直子准教授と英ブリストル大学の山下順子上級講師の共同研究のなかで生まれた言葉だ。相馬准教授は、研究のきっかけを次のように語る。

「東アジアの少子化と高齢化が同時進行するなかで、育児のリスクと介護のリスクを同時に引き受ける人たちが増えていくのではないかという予測のもと、その実態把握のために韓国、香港、台湾の研究者と始めた共同研究です。今後、日本をはじめ、東アジアのグローバルな社会問題、政策課題になるのではないかとも考えています」

この共同研究は、ローカルなプロジェクトでもある。2012年当初、ダブルケアの政府統計がなかったため、横浜市政策局、子育て支援や介護支援現場、NPOなどから協力を得て実態調査が重ねられた。団塊ジュニア世代(育児と親の介護)とともに、団塊世代(介護と長期化する子育て責任や孫支援)のダブルケアが研究の焦点だ。

女性の晩婚化による晩産化、少子化、高齢化が進行し、きょうだい数の減少や親戚づきあいの希薄化など、家族関係のゆらぎによりダブルケアに直面している人は孤立しがちだという。子育て、介護、どちらかだけでも大変なのに、両方を同時にこなさなければならないとしたら、精神的、肉体的にどれだけ大変か。さらに、仕事もしていればなおさらだ。

「ダブルケアをするということは、ケアマネジメントをしながら、介護、子育てに関する決断を行い、家族の精神的なサポートもし、子育てと介護という異なるニーズを同時に満たすことが要求されるわけです」

横浜・静岡・京都・香川・福岡のダブルケア調査、ソニー生命保険と実施した全国調査、神奈川ワーカーズコレクティブ連合会合同調査からは、介護と育児だけではない、多様なケアの多重化の実態など切実な悩みが寄せられた。

では、ダブルケアにはどんな支援が必要なのだろうか。

「まずは、ダブルケア問題の社会的な認知が重要だと思います。妻が介護も育児もする男性稼ぎ主型ダブルケアのライフスタイルから、共働き型ダブルケアを前提にした子育て・介護支援政策が求められます。保育園設置反対運動など、世代間でケア問題は断絶してとらえられていますが、ダブルケアという言葉が、ケアをめぐる世代間の連帯を深めるキーワードになればと思います」

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