社会がめまぐるしく変化するなか、受験勉強の仕方も変わっているのだろうか? 多くの受験生を見守ってきた河合塾の河崎力さんは、「2020年度からの入試改革などが注目されるが、受験生にとって本当に大切なことは変わらない」という。志望校の現役合格を勝ち取るために必要なことや学習アドバイス、塾を上手に活用する方法などを聞いた。
Q 大学入試が変わると聞きました。
勉強内容も変わるのでしょうか。

入試での問われ方が変わるだけで土台となる教科ごとの基礎知識は変わりません。
2020年度から「大学入学共通テスト(仮)」という新たなテストが始まる予定です。これまでの知識偏重を改め、より思考力・判断力・表現力を問うテストへ、という方向性が示されていることから、「知識はあまり重要でなくなるのですか?」といった誤解をしている人もいます。しかし、筋道の通った思考や正しい判断は、基礎的な知識とそれを扱う技能があって初めて成り立つもの。決して知識の重要性が薄れるわけではありません。
既に国公立大学の2次試験などでは、培った知識をベースに論述をさせたり、解答に至るまでの思考のプロセスを見たりする問題が多く出題されています。今後も受験生に必要なことは、表面的な浅い理解ではなく、深く理解するための地道な学習であって、入試の仕組みや問題が変わるからといって慌てて何か新しいことを始める必要はないと思います。
Q 高校1・2年生の時期を有意義に過ごす学習法は。
先取り学習よりも1・2年生のうちに学ぶべき内容をしっかり身につけましょう。
時々、生徒から「うちの学校は他校と比較して学習進度が遅いけど受験に間に合いますか?」といった相談を受けることがあります。しかし1年生は1年生のうちに、2年生は2年生のうちに学ぶべき内容をしっかり身につけていくことが何より重要で、先取りをすれば良いというものではありません。現役合格に失敗した生徒に話を聞くと、1・2年生のうちに身につけるべき内容の理解が不足したまま入試本番を迎えてしまったというケースが多くあります。「わかる」と「できる」は違うので、「わかったつもり」で安心しているのが一番危険です。
国公立大学をはじめとした難関校の現役合格をめざすなら、1・2年生の過ごし方で差がつきます。学校生活を大切にしながら、限られた時間のなかで「毎日やるべきことをやる」という学習の習慣を身につけた生徒は、しっかりと志望校合格をつかみ取ることが多いですね。
Q 模試の判定が良くありません。志望校を見直すべきですか。
模試の結果はあくまで参考に。大切なことは自分の意志と学習を続ける姿勢です。
3年生になっても志望校合格可能性判定で良い結果が出なければ、自信をなくすこともあるでしょう。しかし大切なのは、結果よりも間違った問題がなぜ間違いだったのか、これから何をしなくてはならないのかという、次に向けた視点の切り替えです。最終的にどこを受験するかは本人の判断ですが、早い段階で志望校を変えたいといってくるような生徒には、「簡単にあきらめちゃダメ! 頑張れよ!」と励ますこともあります。たくさんの生徒たちと接してきた私たちの目から見ると「この生徒なら本番には絶対間に合う」といったことも感覚的にわかるので、コーチングをしたりするのです。
生徒本人が「力がついてきた」と実感するのは、高3の12月か1月になってようやくかもしれません。ずいぶん遅いと思われるかもしれませんが、入試で発揮できる応用力を磨くためには、「筋トレ」のような地道な努力が不可欠で、どうしても時間がかかるものなんです。
Q 難関校に合格したいならやっぱり塾に通うべきですか。

河合塾 札幌校 校舎長
河崎 力さん
かわさき・つとむ/1997年河合塾入塾。2012年自由が丘現役館館長を経て、16年から現職。
高校生・高卒生の指導歴は20年以上。高校生や保護者向けの進学講演を年間多数行っている。
自分の目標やスタイルに合わせて塾を上手に活用してみては。
学校の勉強だけで合格できる人はいますし、すべての生徒が塾に通うべきだとは思いません。しかし、先ほども述べたように「筋トレ」は誰にでも必要ですし、ひとりで計画的に学習を続けることの難しさは多くの人が知っているでしょう。
塾に通うメリットのひとつは、学習のペースメーカーができることです。1年生の夏のテーマはこれだ、2年生の1学期は絶対にこれをマスターしよう。そんな明確な指標を掲げ、そこに到達する方法を具体的に教えられることが私たちの強みです。
河合塾は長年にわたって蓄積されてきた入試データに加えて、生徒一人ひとりの能力や生活習慣、性格などに合わせて最適な学習プランを提案できる、その引き出しの多さには自信があります。今の勉強法で大丈夫だろうか、何をやれば良いのかと不安に思ったなら、河合塾のような経験豊かな指導者がいる塾に頼るのもひとつの方法だと思います。